労働市場がどこまで堅調を維持できるのかが今後のポイント

インフレの鈍化が日に日に明らかになっていく中、景気に対する期待は高まりそうなものですが、やはりそう簡単にはいかないだろうというのが大方の見方です。今年は米国経済はリセッションに入るという予想は依然として多く存在し、今後についてはとても楽観できるものではありません。インフレが落ち着いてきたということは非常に良いことですが、だからといって問題がすぐに解決するわけではないことは頭に入れておいた方がいいでしょう。

消費者マインドは改善

先日ミシガン大学の消費者マインド調査の結果が発表され、インフレ期待は低下をし、消費者毎度は改善傾向にあることがわかりました。

米国の短期のインフレ期待は1月下旬に低下し、これが再び消費者マインドを押し上げた。ミシガン大学の消費者マインド調査で明らかになった。

  この日発表された昨年12月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、総合指数および食品とエネルギーを除くコア指数がともに前年同月比ベースで一段と鈍化し、過去1年余りで最も低い伸びとなった。

  しかし、今後数カ月についてはセンチメントへの顕著な下振れリスクがあると、ミシガン大の消費者調査ディレクター、ジョアン・シュー氏は発表文で指摘。消費者の3分の2が今後1年内の景気下降を見込んでいると、同氏は説明した。「債務上限を巡る議論が前途に控えており、過去数カ月に見られたセンチメント上昇が反転する可能性もある。2011と13年当時の債務上限危機では、消費者の信頼感が急低下した」と記した。

  家計に関する現況指数は昨年5月以来の水準に上昇し、同期待指数は1年ぶり高水準となった。賃金上昇やインフレ鈍化の継続に支えられた。

  全体の現況指数は昨年4月以来の水準に上昇。期待指数は1年ぶり高水準となった。

引用:bloombergより

このように消費者のマインドは改善傾向にあります。しかし、債務上限問題等リスクも多く、今後も消費者マインドがこのまま上向く保証はどこにもありません。労働市場が堅調のため何とか保てていますが、あまり楽観的にならない方がいいのだろうという印象です。

インフレ鈍化でもリセッションは十分に考えられる

今後の展開についての楽観論の否定はイエレン財務長官からも出ています。

イエレン米財務長官は、最近のインフレと雇用に関するデータは心強いとしつつ、金利が高い水準にとどまる中で米経済がリセッション(景気後退)に陥るリスクがあることも認めた。

  長官は27日、訪問先のヨハネスブルク(南アフリカ共和国)でブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「これまで目にしたデータにはそこそこ満足している」としつつ、金融当局が「経済を減速させつつある」ことを踏まえ、「リセッションのリスクを最小化したくはない」と述べた。

  ブルームバーグが実施した最新の月次調査では、エコノミストらは米経済が4-6月(第2四半期)と7-9月(第3四半期)に縮小すると予想。向こう1年間にリセッションに陥るリスクを65%とみている。

  イエレン氏は「私が心強く感じているのは、インフレの鈍化を目にしているからだ」と説明。「レイオフの話は増えているが、根本的に労働市場はかなりタイトな状況が続いている」と述べた。

  経済が予期せぬショックを回避した場合、米金融当局がソフトランディング(軟着陸)を達成できるか否かは労働市場の状況次第だと、イエレン氏は指摘。ただそれは、失業率の上昇回避を意味する訳ではないと述べた。

  「インフレを鈍化させつつ力強い労働市場を維持するための道筋には、成長の減速が含まれる」とイエレン氏は述べた。

引用:bloombergより

イエレン財務長官はこのように述べ、最近のインフレ鈍化の兆候には素直に肯定的な反応を示しましたが、今後のリスクについてもきちんと言及しています。まだソフトランディングの可能性について十分可能と思っているようですが、そのリスクも十二分に理解しているということです。そしてそれが可能かどうかというのは労働市場次第と考えているようです。現在は弱い経済やインフレ下においても強い労働市場ですが、これが米国経済を支える唯一の光といっていいのかなという印象です。

なんといっても労働市場がポイント

やはりキーポイントは労働市場ということでしょう。これだけ強い労働市場というのは多くの人からすると予想外と思っているのではないかと思いますし、私自身、ここまで強いとは思っていませんでした。だからこそインフレが高止まりし、企業業績が悪化する中においても力強さを維持できているのだろうと思います。なのでこの強い労働市場が続く限りは厳しい金融政策も実行可能ということになり、インフレを抑制できるということなのでしょう。そういう意味では労働市場が今後どこまで堅調に推移できるのかということが注目されてくるのかなと思います。そういう意味ではもうすぐ1月の雇用統計が発表になりますが、その数値にはいつも以上に市場関係者の期待が集まるのではないかと思います。

まとめ

今日はインフレ期待と今後の米国経済について考えてみました。今後はとにかく労働市場が非常に注目されるということなのかなと思います。確かにここまでうまくインフレ退治を行えたというのは強い労働市場が存在したからというのは非常に大きな要因でしょう。雇用が安定しているというのであればFRBも思い切った政策をとれるはずですし、経済にとっても当然ながらプラスです。なので労働市場がどれだけ今後も堅調を維持できるのかというのが非常に注目されるのかなという印象です。