1月のPCEも予想以上に強い。インフレは全く落ち着く様子がない。

一時期は落ち着くかとみられていたインフレですが、ここへ来ていまだ健在であることが確認されました。そのため各所より今後も厳しい金融政策が行われる可能性を指摘する声が出てきています。そして今日もそれを後押しするような結果が出てきました。

1月のPCEは予想以上に強いものとなる

昨日発表された1月のPCEは市場予想を大きく上回る結果となり、依然としてインフレリスクは健在であることが確認されました。

米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は1月、総合指数および食品とエネルギーを除くコア指数が共に予想を上回る伸びとなった。PCEも大幅に増加し、米金融当局に対する利上げ継続の圧力が増す格好となった。

  PCEは前月比1.8%増加。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は1.4%増だった。インフレ調整後の実質PCEは前月比1.1%増加。昨年11、12月の落ち込みから反転し、2021年3月以来の大きな伸びとなった。自動車や飲食サービス、宿泊など財とサービスに対する支出の増加を反映した。

  1月の各数字は、持続的な高インフレのリスクを浮き彫りにする。昨年12月のPCE価格指数は伸びが鈍化し、利上げペース減速の観測を強めていた。ただ12月統計の上方修正と1月の再加速で、そうした減速分はほぼ帳消しになった格好だ。さらに、個人消費の底堅さと労働市場の異例の強さが重なり、米金融当局のインフレ率2%目標の達成は一段と困難になるとみられる。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のアナ・ウォン、イライザ・ウィンガー両エコノミストらは「支出が勢いよく増加し、コアの財価格およびスーパーコアのサービス価格の両方が加速したことは、インフレにとって悪いニュースだ」と指摘。「サプライチェーンのボトルネックがほぼ解消されたことで、最近のインフレは需要主導型となっている。この傾向が続けば、米金融当局は5.25%を超える水準への利上げを余儀なくされるかもしれない」との見方を示した。

  1月の個人所得は前月比0.6%増。賃金の伸び加速に支えられた。

  失業率が半世紀ぶりの低水準にある中、限られた労働力の確保を巡る競争は激しくなっており、それが賃金上昇圧力として続いている。賃金上昇と過剰貯蓄が消費を下支えする構図となっており、物価が大きく上昇する中でも消費者はさまざまな財やサービスへの支出を継続できている。

  1月の貯蓄率は4.7%と前月の4.5%から上昇し、1年ぶりの高水準となった。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめ金融当局者らはインフレ見通しの観点で、住宅を除くコアサービスの価格の伸びを重視している。同カテゴリーには医療や理美容を含む広範なサービスを含み、その動向は賃金に大きく左右されるとみられている。

引用:bloombergより

このように米国の個人消費支出はいまだ健在です。物価がこれだけ上昇する中においても消費が全く衰えないというのは本当にすごいとしか言いようがありません。インフレ率を考えれば実質的な賃金はマイナスであることは間違いありません。実際、個人の資産は急激に減少してきており、借り入れ等も急激に増加してきています。そういう意味ではかなり無理をしているようにも思えます。なのでこの流れが永遠に続くということはないでしょう。労働市場が堅調であればこの流れはある程度継続するでしょうが、それも徐々に減速していき、最終的には大きく消費も落ち込むものとみられます。そうなればインフレは終息に向かうことになると思いますが、同時に経済の減速も深刻なものとなるはずです。経済の減速を極力抑え、インフレを抑制するべく政策を実行しているFRBですが、その可能性というのは非常に低いといわざるを得ないでしょう。その微妙な力加減はなかなか制御できるものではないような気がします。

ソフトランディングは本当に難しい

やはり労働市場が堅調であることがこの強い消費を支えている一番の原因のような気がします。今のところはインフレがどんなに高止まりしても企業業績が悪化しても雇用は堅調を維持しています。だからこそ消費はある程度維持できていますし、反面インフレも健在であるというわけです。そういう意味で子の相反する問題をうまく解決できるのかというのは非常に難しい問題です。一部、雇用の悪化や経済の減速無しではインフレの抑制は無理という意見もあります。確かに雇用が悪化し、経済が減速すればインフレは確実に落ち着いていくでしょう。しかし、可能であるならばなるべく景気減速は小さくさせたいというのはだれもが思うところです。なのでFRBはその可能性に欠けているのだとは思いますが、今のところあまりうまくいっていないような気はします。引き締めても一向にインフレは落ち着きませんし、だからといって締めすぎると一気に景気減速を起こし、急落するということも十分にあり得る話です。そういう意味では難しい状況というのは何も変わっていないのだろうという感じはします。

まとめ

今日は1月のPCEについてみてきました。相変わらず米国の消費は堅調です。一向に落ち着く気配がありません。そのためインフレも堅調ですし、引き締めも継続されるでしょう。そのバランスをうまく保ちながらソフトランディングさせるというのは日に日に難しさを増してきているように思います。締める手を緩めたままではインフレが高止まりするし、締めすぎると今度は経済が急落するという非常に危ういところを歩いている感じです。果たしてこの状況をFRBがうまくコントロールできるのか。してもらわなければ困りますがなかなか難しい仕事だと思います。