FRBに対する不信感が日に日に増えてきている

米国経済は一時の楽観論が嘘のように悲観的な空気に満ちてきた感じがします。落ち着いてきたと思われたインフレがいまだ健在なのではないかと思われるような経済指標が相次いでいます。そのため、多く専門家はFRBが行っている金融政策に対して疑問を持つようになってきました。FRB関係者もより強力な金融政策の実行を望む声を上げるようになってきており、マーケットとの信頼関係はやや微妙な感じになってきています。

市場はFRBに対して不信感を持ち始めた

モハメド・エラリアン氏はテレビのインタビューにおいて、FRBの金融政策に対して改めて疑問を呈しています。

ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでグラマシー・ファンズの会長を務めるモハメド・エラリアン氏は、金融市場は米金融当局がインフレ率を目標の2%に戻せるか疑い始めつつあると述べた。

  エラリアン氏はブルームバーグテレビジョンに対し、物価関連の統計はまずい方向に向かっており、投資家の間で金融引き締めが消費者物価の上昇を抑制するのにどのくらいかかるかを巡り懸念が高まっていると指摘。24日午前に発表された1月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、総合指数が前年同月比5.4%上昇と予想を上回る伸びとなり、こうした懸念を裏付ける形となっている。

  「実際の統計および調査統計ともにまずい方向に向かっている。従って、市場および、より重要なことには一般の人たちも金融当局が2%を達成できるか疑問視し始めつつあると思う」と語った。

  「金融当局がインフレは一過性のものと見誤ったり、利上げ開始を昨年3月まで先送りしたり、利上げ幅を0.25ポイントに早急に縮小したりしていなければ、痛みはより小さかっただろう。残念ながら、当局が2%を達成するつもりなら、米経済に多大な痛みをもたらすことになるだろう」とエラリアン氏は指摘した。

引用:bloombergより

このようにエラリアン氏はFRBの金融政策に対して非常に厳しい見方をしています。エラリアン氏は当初からFRBの金融政策に対して批判的であり、事あるごとに問題提起をしてきました。そういう意味では今更FRBの金融政策に疑問を持ち始めたというのはなにをいっているんだ?といってしまいそうになります。しかし、述べていること自体は非常にまっとうであり、FRBがインフレをうまくコントロールできていない可能性について非常に危惧しているというところでしょう。実際、過去のFRBはインフレを過小評価し、そのため現在の非常に厳しい状況を作ってしまったという事実があります。そういう意味でも市場の信頼はますます低下しているといっていいのかもしれません。市場の信頼を失ってしまえばあらゆる金融政策の効果というものも限定的となってしまうでしょう。そうなれば経済は確実に悪化しそれこそスタグフレーションへ一直線ということにもなりかねず、非常に危険な状態といっていいような気がします。

ますます不安定感が増してきている

エラリアン氏はいつもFRBに対しては否定的なことを述べているので今回のような厳しい言い回しというもの自体はあまり珍しくもないと思います。いつもの調子で批判しているといった感じです。問題はエラリアン氏以外の専門家も同じような意見を述べる人が多くなってきていることだと思います。現在の経済状況は非常に危うい状態であるといわざるを得ません。これまで何度も失敗してきたFRBがまた間違ったのかとマーケットはかなり疑いの目を向け始めているといっていいでしょう。もし、これが大きくなっていけばFRBはマーケットの信頼を失い、思ったような金融政策をとれなくなる可能性が出てきます。何をやったところでうまくいかないと思われれば、FRBのやることなど誰も気にしなくなるでしょう。そうなってしまえばさらに経済は悪化し、スタグフレーションまっしぐらとなるかもしれません。そういう意味では何とかして市場の信頼を取り戻すべく行動を起こしてほしいものです。いずれにせよ、非常に困難な状況が変わることはないだろうと思います。あまり経済を傷つけずにインフレを抑制するという目標はかなり厳しいといわざるを得ないのでしょう。

まとめ

今日はモハメド・エラリアン氏の意見についてみてきました。いつも厳しい論評をする同氏ですが、厳しい見方をする人は日に日に増えている印象です。市場は本当にFRBがインフレを抑制できるのかということに疑問を持ち始めています。そういう意味ではFRBが今後もインフレが高止まりしないように少し厳しく引き締める必要性を考えるかもしれません。しかし、そうなれば経済急減速のリスクも出てきて非常に難しいかじ取りを求められることになるでしょう。そういう意味でもいまだ不安定な状態は継続中であり、最悪な事態も想定しておかなければならないということだと思います。