米国経済の先行きは厳しい予測が増えてくる

米国経済の先行きについて一時期よりも悲観的なものが多くなってきました。先月あたりはインフレ鈍化を予感させる経済指標が相次いだために、予想よりも米国経済は深刻な状態ではないのではないかという空気もありましたが、今月に入りインフレが期待したほど落ち着いていないことが確認されると先行きに対する予測が一変してきています。あまりこのような予測に一喜一憂するのはあまりよくはないと思いますが、その理屈を知っておくことは損になることはないでしょう。

FRBの金融政策はあまりうまくいっていない?

サマーズ元財務長官は先日メディアにて今後の金融政策に対して警戒するべきという見解を述べました。

サマーズ元米財務長官は17日、米国での物価圧力の広がりはこれまでの金融引き締めの影響が限られていることを示しているとし、政策当局が従来の想定以上の行動を強いられる危険性が高まりつつあるとの考えを示した。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンで、「米金融当局は景気にブレーキをかけようとしているが、ブレーキはあまり利いていないようだ」と発言。「ブレーキを非常に強く踏むことになるというリスクがある」と述べた。  一方で、同氏は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げペースを0.5ポイントに再加速するのを提唱するのは時期尚早だと指摘。企業が在庫の積み上がりや人員数を憂慮し始め、消費者が貯蓄を使い果たすと、景気が突然停止してしまう可能性がまだあると警告した。

  「米金融当局は極めて謙虚に状況を判断しなければならない」とサマーズ氏は語り、「強い表明で身動きが取れなくなる事態は避けるべきだ」と続けた。同氏はハーバード大学の教授でブルームバーグテレビジョンの寄稿者でもある。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は現在の金融政策に対してやや悲観的に見ています。現状、インフレ抑制があまり効いておらず、インフレが目標とする2%へと収束しづらい可能性を指摘しています。その結果、FRBがインフレを抑制するために急激に金融を引き締めだし、経済を悪化させる危険性を気にしているようです。確かに現状、インフレはまだまだ健在です。これまでのような急激な上昇はなくなりましたが、期待するほど落ち着いてくる様子は見られません。なのでFRBがなかなか落着きを見せないインフレに対して強力な政策で対抗してくる可能性というのもない話ではないでしょう。そしてそのタイミングで企業業績の悪化や雇用の悪化が重なれば大きく経済が後退するリスクというのも十分にあり得る話です。

FRBは目標の変更が必要だが行われないだろう

サマーズ氏と同様に、モハメド・エラリアン氏も米国経済の先行きに対して警戒を示しています。

グラマシー・ファンズの会長を務めるエコノミストのモハメド・エラリアン氏は、米金融当局が「景気を押し下げる」ことなくインフレ率を2%の目標に抑制することはできないだろうと述べた。だが当局がこの目標水準を正式に変更する可能性は低いとの見方を示した。

  ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏はブルームバーグテレビジョンで、「より高い安定したインフレ率が必要だ。3-4%だろう」と発言。「米景気を押し下げることなく消費者物価指数(CPI)を2%に持っていけるとは思わない。2%が適切な目標水準ではないからだ」と語った。

  また米金融当局は「データに依存し過ぎている」とし、エネルギー移行や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時のサプライチェーン変化、逼迫(ひっぱく)した労働市場、地政学的問題の変化など供給サイドの状況進展を受け、より高いインフレ目標が必要になっていると述べた。

  「データを考慮するのは正しいが、われわれがどこに向かおうとしているかという視点を持つ必要がある」と話した。

  足元の問題は米金融当局が達成しにくい2%の目標追求に行き詰まっていることだと指摘。「目標からこのように大きく外れている時にインフレ目標は変えられない」と述べた。同氏は以前、目標変更なら当局の信頼性に打撃を与えるだろうと警告している。

引用:bloombergより

このようにエラリアン氏はFRBが目標とする2%への物価見通しの達成は困難だとみているようです。現実的には3~4%程度が妥当だろうと考えているようですが、FRBはその政策変更は行わないとみています。それにもしFRBがそのような政策変更をすればFRBの信頼性を損なう結果となり、それこそ影響が大きいだろうということです。

また悲観的な空気が強くなってきている

今日は2名の専門家の意見を見てきました。いずれも非常に悲観的な話であり、大変心配になるところです。確かに現状ではインフレは落ち着く様相を見せず、今後に対する不安は尽きません。唯一の救いというのは労働市場が堅調であるということだと思いますが、それもいつまで続くのかわかりません。それに労働市場が堅調だからこそインフレが落ち着かないという側面もあり、非常に金融政策のかじ取りは難しいといわざるを得ないという状況です。そういう意味では今回のような悲観的な意見というのも十分あり得る話だろうという感じがします。

まとめ

今日は米国経済の先行きに対する悲観的な意見についてみてきました。この二人は常に米国経済に対して厳しい見方をする人なのでその分は差し引いてみた方がいいかもしれません、それでも十分考慮すべき視点だろうと思います。特に今後の経済について楽観的な空気が出てきてはいましたが、それが先走りすぎたものだったということはそうだろうという感じがします。やはりしばらく米国経済は厳しい状態が続いていくのでしょう。そういう意味ではしばらく辛抱が続く覚悟を持っておいた方がいいでしょう。