ついに労働市場に変化の兆しが出てきたか?

強いインフレを支える要因の一つとなっている堅調な労働市場ですが、ここへ来て少し変化の兆しが出てきたのかもしれません。先週一週間での新規失業保険申請件数は市場予想を上回る結果となり、タイトだった雇用はやや緩んできた可能性が出てきました。たった一週間のデータだけで判断するというのはさすがに無理があるとは思いますが、これまで強い発表が続いていただけに、その変化には注目が集まるところでしょう。

新規失業保険申請件数は市場予想を上回る結果となる

昨日発表された先週一週間に申請された新規失業保険申請件数は市場予想を上回る結果となり、労働市場がやや緩んできた可能性を示唆させました。

先週の米新規失業保険申請件数は市場予想を上回る伸びとなり、昨年12月以来の高水準となった。特にニューヨーク、カリフォルニア両州で申請件数が急激に増えた。労働市場は依然として逼迫(ひっぱく)しているが、ある程度の軟化が示唆された。

  変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は19万7000件に増加し、1月以来の高水準。

  季節調整前ベースの申請件数は3万5000件余り増えて23万7513件。増加分の4分の3をカリフォルニアとニューヨークが占めた。中西部とカリフォルニアを襲った悪天候が影響した可能性がある。

  サンタンデールUSキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は、ニューヨーク市の学校職員(バス運転手や清掃員)が学校の休み期間は失業手当を申請できるよう交渉し、それが労働契約に盛り込まれたことも申請件数の増加につながった可能性があると指摘した。

  スタンレー氏は「今週発表分はニューヨーク市の学校の休みによって押し上げられた」とリポートで指摘した。

引用:bloombergより

このように先週は失業保険を申請した人はやや多かったようです。強い労働市場というのは労働者にとって非常に良いことのように思えますが、大きなインフレ圧力の一つでもあります。インフレ抑制が一番の問題となっている現在、強い労働市場というのは非常に頭に痛い問題でした。これまで一貫して何が起きても緩むことのなかった労働市場ですが、ようやく変化の兆しを見せたようです。もしこれが労働市場の緩和のきっかけとなっているのであればインフレ抑制という観点から見れば非常に良いことだといっていいのではないかと思います。もちろん今回一回の結果を持って結論を出すということはできないでしょう。移動平均で見ればまだ増加傾向であることには変わりありませんし、中身を見るとやや一時的な要因ではないのかなという印象も十分に感じることができます。そういう意味ではまだ確定的なことを言うのには早いといっていいのだろうという感じです。

いい傾向だがまだ確定的なことは言えない

ようやく労働市場も緩んできたのかなという感じですが、まだまだ油断はできないでしょう。先ほども言いましたが、緩んできたとはいえまだ上昇傾向にあることには変わりありません。それに中身を見る限り一部の限定的な要因でこのような結果となった可能性は十分にあるでしょう。そういう意味では楽観的にはなれませんが、もしこれが本当に労働市場の緩和のきっかけであるのならば非常に良いことだと思います。そういう意味では今晩発表される2月の雇用統計の値には非常に注目が集まるところです。先日のADPによる2月の雇用者数は強いものでしたが、雇用統計の結果はもしかしたら違ったものになるのかもしれません。そうなればややタカ派的だったFRBの金融政策の姿勢にも変化が出てくる可能性があり、ますます今後の先行きが不透明になるような気がします。おそらくは少々労働市場が緩んでも金融政策が緩むことはないとは思いますが、市場ではそのような空気は出てくることになるでしょう。なのでまた若干の混乱はあるのかなという感じです。

まとめ

今日は先週の新規失業保険申請件数についてみてきました。ようやく労働市場も落ち着いてきたのかなという感じですが、まだ一つのデータのみでは何とも言えないという感じです。そういう意味では今日発表される雇用統計や今後発表される消費者物価の値がどうなるかということが非常に気になるところです。とりあえずよい結果というものを期待したいところですが、あまりその期待を大きくしすぎないようにしたいところです。何がどうなろうと非常に厳しい道筋であることには変わりありません。一時的に良い結果が出たとしても長い目で見ればまだまだ正常化には程遠いということをしっかり認識しておいた方がいいでしょう。