米国経済の悪化を示す指標が次々と出てくる現状

米国経済の現状は非常に悪いといわざるを得ません。おそらくは多くの人がそう感じているのではないかと思いますが、それを裏付けるような物が連日多く発表されています。FRBが75bpでの利上げを決定し、景気を急激に冷やす可能性も高くなってきたこともあり、株式市場もその影響は避けられないでしょう。そういうわけで今日は米国経済の現状についてみていきたいと思います。

米新規失業保険申請は予想よりも減少しなかった

16日に発表された米国の新規失業保険申請件数は市場予想よりも高い数字となりました。労働市場は依然強い状態を保ってはいますが、やや弱さを見せるようになってきました。

米労働省が16日発表した6月11日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比3000件減の22万9000件となった。労働市場は引き続き引き締まった状態にあるが、市場予想(21万5000件)ほど減少しなかったことで、一部冷え込み始めている可能性が示唆された。ハイフリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルベーラ・ファルーキ氏は「人材の需給ミスマッチを背景に、申請件数は当面は抑制される」と予想。ただ「連邦準備理事会(FRB)が緩和的な政策の解除を続けるに従い、申請件数は増加していく」との見方を示した。

引用:ロイターより

労働市場が強いということが高いインフレ下においても強い米国経済を支えていた一因ですが、それがやや収束に向かいだしたようです。今後も金融緩和政策がより縮小されていけば当然ながら失業率も上昇をしていくことでしょう。しかし、FRBもインフレ抑制のためにはある程度の景気後退も仕方ないというような見解であり、今後はより失業率は悪化していくものとみられます。

米5月住宅着工・建設許可件数とも急減、金利の大幅な上昇が影響

不動産市場も低調です。5月は住宅の着工も許可も急減し、金利の上昇による住宅ローンの負担増大や実質賃金の低下など不動産投資の環境も悪化傾向にあります。

 米商務省が16日に発表した5月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比14.4%減の154万9000戸と、2021年4月以来の低水準に落ち込んだ。住宅建設許可件数も前月比7.0%減の169万5000戸と急減。住宅ローン金利の急上昇で初めて住宅を購入する層の手が届きにくくなり、住宅市場の冷え込みが進んでいることを示している。ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ライアン・スウィート氏は「住宅市場は過熱しており、持続可能ではない」とし、「住宅ローン金利が6%台にあれば、市場は冷やされる。これは必ずしも悪いことではない」と述べた。

引用:ロイターより

このように不動産市場は確実に悪化してきています。金融緩和縮小の影響が確実に出てきていることだと思われます。しかし、ここでも述べられているように、米国経済全体を考えれば悪いことばかりではないでしょう。インフレ抑制ということを考えればこれは致し方ないことであり、長期的な成長を考えればこの悪化は必要なことなのかもしれません。ただ、そうはいっても短期的には投資家にとっては当然痛手であり、無視できるものではありません。

米6月フィラデルフィア連銀業況指数もマイナス圏へ

さらに悪いニュースは続きます。6月フィラデルフィア連銀業況指数も予想を大きく下回る結果となり、こちらも市場環境の悪化を裏付けることとなりました。

 米フィラデルフィア地区連銀が16日発表した6月の連銀業況指数はマイナス3.3と、前月のプラス2.6から低下した。低下は3カ月連続で、マイナス圏に陥るのは2020年5月以来初めて。新規受注が2年ぶり低水準に落ち込んだことなどで、ロイターがまとめたエコノミスト予想中央値のプラス5.5を大きく下回った。FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「米経済がハードランディングするリスクは急速に高まっている」と指摘。「FRBが突然、積極的に金融を引き締めたことでリセッション(景気後退)が引き起こされたと、近い将来に批判される可能性がある」と述べた。

引用:ロイターより

このように市場は米国経済がソフトランディングできない可能性についてかなり織り込ん見始めたのかなという印象です。実際ここまでインフレ率の悪化を見ればそれは容易ではないことはだれの目にも明らかでしょう。実際FRBの対応は後手後手に回っており、常に予想を下方修正し続けています。今回の75bpでの利上げについてもそうでしょう。このようなことを続けていけば最後はドカンと大きな爆弾を投げつけ、経済を急速に冷やしすぎるような気がしないでもありません。そうならないことを切に願いますが、その可能性を市場は考え始めたような気はします。

まとめ

今日は米国市場の現状について考えてみました。現状、確実に経済は悪化しているといわざるを得ません。おそらくは多くの人が予想している通り、今年後半から来年にかけては計後退局面に入ることでしょう。投資家としては非常に苦しい状況です。しかし、何度も言いますが、本業のある個人投資家にとっては短期的な下落というのは絶好の投資チャンスです。今まで高くて買えなかった優良株を安値で買うチャンスでもあるので、あまり悲観はせずに行きましょう。とりあえず、今後は大きな暴落の可能性も十分に出てきたのでそのシミュレーションはきちんとしておいて、何が起きてもあわてないようにしましょう。そうすれば10年、20年先の資産形成において非常に有益なものだったと後で思えるようになるはずです。