再び当局による市場介入が行われた可能性。しかし、その流れが変わることはない。

為替市場は一段とドル高に進んでいます。1ドルは一時152円近くまで下落する場面もありましたが、その段階になると当局の介入とみられる動きがあり、一気に1ドル146円台にまで急反発しました。過度な動きには毅然とした対応をとるといってきた日本政府の発言どおり、今回も大規模な市場介入を行ったとみられます。これにより大きく円高に振れましたが、この流れはしばらく変わることはないとみられます。為替市場を読み解くことは株式投資においても非常に重要なことです。そういうわけで今日は今後の為替市場について考えていきます。

ドル円は152円に迫る

21日のニューヨーク市場ではドル円は一時152円付近まで円安が進みました。最近は日米の金利差などの影響からどんどん円安が進んでいく傾向がありましたが、この水準で再び当局による市場介入と思われる大規模な円買いの動きがありました。

21日のニューヨーク外国為替市場で、円は1ドル=152円に接近するまで下落した後に切り返し、146円台前半まで急反発した。日本経済新聞の電子版は関係者の話として、政府・日銀が円を押し上げるため再び介入したと報道した。

  円の上昇率は2%を超え、一時146円23銭近辺。反転前に円はドルに対し一時1%余り下落し、32年ぶりの安値となる151円94銭を付けていた。複数のトレーダーによると、ロンドンフィキシングの時間帯に反転が始まり、100億ドル(約1兆4700億円)余りが売買された。

  この反転でドルを売った中には東京を拠点とする機関が複数あったと、トレーダーらは語った。

  財務省幹部は「介入したかどうかコメントしない」と述べた。

  米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対応で大幅利上げを継続するとの見方から、21日のアジア時間の取引で米10年債利回りは一段と上昇した。だが、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が利上げ減速の見通しを報道し、利回りは低下に転じた。

  政府・日銀はこれまで、一方的な動きには介入すると繰り返し警告してきた。ただ、世界の中央銀行が利上げを進める一方で日銀が超緩和的な政策を維持する限り、介入があるとしても効果は限定的だろうと一部のアナリストは指摘する。

  ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は、介入が公式に確認されてはいないが、「市場では介入のうわさで持ちきりだ」と述べた。その上で「現在の環境では、介入は短期的な一時しのぎに過ぎない」との見方を示した。

  政府は9月、円が対ドルで145円90銭まで下げた後で1998年以来となる円買い・ドル売りの為替介入を実施。円安に歯止めをかけようと、財務省は同月に約2兆8000億円を費やした。

  鈴木俊一財務相は21日、150円台まで進んだ円安について「今、私どもは市場を介して、投機筋と厳しく対峙(たいじ)している状況にある」との認識を示していた。「投機による過度な変動は容認できない」とした上で「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、過度な変動に対しては適切な対応を取りたい」とも述べた。

引用:Bloombergより

このように当局による大規模な市場介入が再び起きた背景には急激な為替相場の変動があったものとみられます。一時は前回の介入の効果もあり、膠着していた時もありましたが、最近ではじりじりと円が安くなる傾向が続いていました。その勢いというのは急激な変化といっていいほどに短期間で大幅な変化をもたらすものであったと思います。これまでも政府は過度な市場の変化には断固たる措置をとると発言してきました。今回もその発言を受けたものだったといっていいと思います。

大きな流れは変わらない

今回の介入を受けても為替市場の大きな流れというのは変わることはないでしょう。今回も日本単独での介入であったと思われます。そうであればその効果というのは非常に限定的です。本当に為替市場の動きを変えようと思うのであれば世界全体が協調しての介入が必要です。かつて行われたプラザ合意がまさにそのいい例です。当時のように世界中が協調して介入を行えばその流れを大きく変えることも可能でしょう。しかし、今回の介入には米国をはじめ世界の国は協調をしていません。なのであくまで一時的な変化でしかなく、その大きな流れを変えることはないでしょう。つまり、今後も円安ドル高の流れは変わらないということです。

方向を変えるというよりも勢いを抑えるのが狙いだろう

当然ながら日銀もそのことは十分に理解していたはずです。さすがに単独介入で円安が止まるとは思っていないでしょう。今回の措置はあくまで急激な動きを緩和させるという意味合いが強いのだと思います。円安に動くにしてもそのペースを落とすという意味です。急激な為替相場の変動というのはだれにとってもマイナスでしかありません。儲かるのはごく一部の投機筋の人だけです。そういう意味では急激な変化を抑えるというのは金融当局の行動としては正しいでしょう。あくまで変化をマイルドにするというだけです。なので大きな為替の動きを変化させるという効果はないと考えていいと思います。

いつまでもドル高が続くわけはない

では今後はどうなるかといえばおそらくはこの円安ドル高というのは長くは続かないと私は考えています。為替というのは様々な要因によって決まってきます。それぞれの国力や経済力、今後の見通しなど様々です。そして今回の円安ドル高の大きな流れを作っているのはFRBの金融政策です。現在FRBはインフレ抑制のために急激に金利を引き上げています。それがしばらく継続するという憶測からドルが買われているのです。なのでこの金融政策が終わるという観測が出てくれば今のドル高の流れは変わるのではないかというわけです。当然ですが、FRBが永遠に金利を引き上げ続けるということはありません。いつか必ず終了します。そして来年には利上げを終了し、そのまま金利を維持するという見通しが多く出ているのです。つまり、もうそれ以上は日米の金利差は広がらないということになり、もう金利差でドルを買うという理由にはならなくなるのです。そういう状況になれば今度は行き過ぎたドル高を修正する動きとなり、急激に為替は円高に振れる可能性もあるのではないかと思います。

まとめ

今日は今後の為替相場について考えてきました。当局の介入というのは今後もあるかもしれませんが、ドル高の動きを変えることはまずできないでしょう。しかし、この流れがいつまでも続くということはないと思います。おそらく来年にはFRBの利上げが終了し、ドル円をはじめ世界中の通貨において行き過ぎたドル高というのが修正されるのではないかと思います。もちろん未来のことなのでどうなるかはわかりません。しかし、その可能性は十分にあるのではないかと思っています。