債権の価値がゼロになり、株式の価値が残るなんてことが起こってしまった。

SVB破綻から始まった金融不安は金融大手クレディスイスにまで波及しました。そしてクレディスイスはUSBに買収されるという結末になったようです。一連の動きというのは本当にあっという間に起こりました。これだけ大きな会社の買収が一気に進むということが事態の深刻さを非常によく表しているような気がします。その中でいろいろなことが起こりましたが不思議なことも起こっていたようです。

債権の価値がゼロになり、株式の価値が保護される?

今回の買収劇によって起こった出来事の中で大きなインパクトがあったことの一つに「AT債」と呼ばれる債権の価値がゼロとなったことです。そのため債権保有者からは大きな反発が起こっています。そしてそのことについてガンドラック氏は手ひどく批判しています。

米投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は、UBSグループによる買収で約160億スイス・フラン(約2兆2800億円)相当のクレディ・スイス・グループの債券が無価値になったことを受け、こうした債券の保有者が反発していることを非難した。

  ガンドラック氏は「愚かにもクレディ・スイスのベイルイン対応債券を保有し続けた」債券保有者に責任があるとし、「リスク管理方法を学びなさい!」とツイートした。

  スイスの連邦金融市場監督機構(FINMA)がウェブサイトに掲載した声明によると、買収合意を受け、中核的自己資本拡充のためクレディ・スイスの「その他ティア1債」(AT1債)の価値はゼロに切り下げられる。一方、クレディ・スイスの株主は計30億フラン相当のUBS株を受け取ることになっている。

    この決定を受け、クレディ・スイスのAT1債保有者の一部は激しく反発している。

引用:bloombergより 

このようにガンドラック氏はクレディスイスの債権保有者たちを批判しました。確かにこれだけ問題を抱えていた債権をいつまでも保有していたのだから批判されても仕方ないのかもしれません。しかし、面白いのは今回の事件では債権の価値がゼロになったのにも関わらず、株主の方にはUBS株が支払われ、価値が一定程度残ったということです。

通常起こり得ないことが起こる

通常株式と債権では債権のほうがその価値が保護されることが多いような気がします。なにか企業が倒産するようなことが起きれば株式はたちまち価値がゼロになり、株式投資をしている人は大きな損失を蒙ります。しかし、債権保有者は資産のすべてを保証されないにしても残った資産の一部を受け取ることができたり、価値がゼロになるということは少ないというのが一般的です。しかし、今回は債権保有者のほうが資産がゼロになり、株式保有者のほうがUBS株を受け取ることができており、立場が逆転してしまっています。そういう意味ではなかなか珍しいことが起きたのかなという印象です。

何が起きるかわからない

今回の事例での教訓というのは予想外の事態が起きたときというのは予想外の結果が訪れる可能性が非常に高いということです。通常であれば債権よりも株式のほうがその価値を保護されるということはないでしょう。しかし、今回そのようなまさかの事態が起きました。なぜそのようなことになったのかということは私は専門家ではないのでよくわかりませんが、おそらくはそれが一番現実的で、実行可能だったからということでしょう。つまりはルールや理想などは二の次ということです。結局、世の中ということは決まったとおりには動かないし、ルールなどもその時時の状況によっていくらでも飼えられるということです。そういう現実を見せられたような気がします。

まとめ

今日はクレディスイスの買収劇の一部から見えてきた現実について見てきました。債権よりも株式のほうが価値を保護されるということが起こるなんて思っても見なかったので非常に驚いたところです。しかし、これだけ大きな事件が起きればそのような予想外のことがいくらでも起きるという良い教訓でしょう。未来には絶対はないという言葉を思い出させてくれる良い出来事だったなと思います。