今後も引き続き引き締めが継続される見込み

先行きに不安が募る米国経済ですが、金融政策は引き続き厳しくなりそうです。先日発表された実質賃金はインフレ率を上回るものとなり、インフレ圧力を押し上げる懸念が出てきました。そしてFRB関係者からも引き続き厳しい金融政策をしていくべきとの発言が相次いでいます。今後の先行きについて楽観視する声もありますが、やはり厳しいと言わざるを得ないという感じがします。

ブラード総裁は金利の引き上げを求める

セントルイス連銀のブラード総裁は今後の金融政策について引き続き厳しい市制で望むべきとの見解を述べました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は、最近のデータでインフレがなお根強く続いていることが示されたとし、利上げを継続する必要があるとの見解を示した。ロイター通信が総裁とのインタビューを基に報じた。

  ロイターによればブラード総裁は、「ウォール街では今後6カ月程度で経済がリセッション(景気後退)に陥るとの見方が非常に強いが、そうした見方はこのような景気拡大を読む上であまり適切ではない」と述べた。

  また、市場は近い将来の利下げを予想しているかもしれないが、労働市場は力強いと指摘。「2023年下期にリセッションに陥ると予想する時期ではないように思われる」と続けた。

  3月のFOMC会合後に公表されたドット・プロット(金利予測分布図)では、政策金利が2023年末時点で5.1%になるとの予測(中央値)が示された。

  ロイター通信によると、ブラード氏は5.5-5.75%までの利上げを支持している。同氏は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持たない。

引用:bloombergより

このようにブラード総裁はインフレが依然として高い状態である現在、金融政策を引き続き厳しくしていく必要があるとの見解を示しています。

ボスティック総裁も同様の意見

そしてそのような見解をしているのはブラード総裁のみではありません。アトランタ連銀のボスティック総裁もブラード総裁のように金利はまだ引き上げる必要があるとの見解を示しています。

米アトランタ連銀のボスティック総裁は、政策金利をもう1回引き上げて5%超とし、高過ぎるインフレを抑えるためその水準でしばらく据え置くことを支持すると語った。

  ボスティック氏は18日、CNBCとのインタビューで、「まだ仕事が残っており、それをする用意がある」と発言。次の行動を取った後は、その水準で「相当の間」据え置くことに違和感はないと述べた。

  米経済は自身の「ベースライン」予測でリセッション(景気後退)を回避する見通しだとも話した。

  ボスティック氏の意向は、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の予測中央値とも一致する。予測中央値では年内にあと1回の0.25ポイント利上げが見込まれていた。市場は5月2ー3日に開かれるFOMC会合で最後の利上げが決まる可能性を織り込みつつある。

  ボスティック氏は今年のFOMCで投票権を持たないが、他の連邦準備制度当局者と同様に金利判断の議論には参加する。

引用:bloombergより

このように金利について引き続き引き締めていく必要性をボスティック総裁は述べています。今回の二人の意見のみが全てということではないでしょうが、やはりマーケット関係者やFRB関係者の発言を見る限り、まだ金融政策はやることがあると見ているようです。

賃金上昇がインフレ率を上回る

そしてそれを後押しするようなデータも出てきています。米労働者へ支払われる賃金の上昇率がインフレ率を上回ってきているということです。

米労働者に支払われる賃金の上昇率がインフレ率を上回り始めている。購買力は押し上げられ、米金融当局が5月に追加利上げを行う根拠の一つになり得る。

  米労働統計局が18日発表したデータによると、1-3月(第1四半期)のフルタイム労働者の週間賃金(中央値)は前年同期比で6.1%上昇した。一方で同期間中のインフレ率は5.8%だったと、同局は説明した。

  この2年間、賃金上昇率は大方、インフレ率を下回ってきた。物価圧力は若干緩和しているものの、企業は人手不足の中、人材獲得とつなぎ留めのため賃上げを進めている。

  こうした状況は個人消費にとっては良い兆しだが、物価圧力を抑え込むため需要抑制に取り組む米金融当局にとっては気掛かりな兆候であり、政策当局者は5月の追加利上げに傾く可能性がある。

  ただインフレ調整前の賃金上昇率は2022年7-9月(第3四半期)が2.1%、同10-12月(第4四半期)が1.3%、23年第1四半期が1%と鈍化している。

引用:bloombergより

このように賃金は1-3月期にはインフレ率を上回る上昇を見せており、インフレ圧力を助長する可能性が示唆されます。賃金の伸びがインフレ率を上回れば当然ながらインフレをさらに押し上げる可能性があり、金融政策への影響も十分に考えられるところです。

先行きは依然として不透明

今回の発言やデータを見る限り、やはり金融政策は引き続き厳しいものとなる可能性が高いと言わざるを得ません。今後、よほどのことがない限り、市場が期待するような経済を支援するような方向へと向かう可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。そういう意味では株式市場にとっては厳しい時間が継続すると見たほうが良さそうです。今後、OPECの減産などもあり、エネルギー価格も上昇する可能性もあります。そういう意味ではインフレ圧力は今後想像しているよりも厳しくなるかもしれません。なのでFRBはそのリスクを回避するためにも引き締めの手を緩めることはないのだろうと思います。

まとめ

今日は今後の金融政策の行方について考えてみました。今の所、次回のFOMCでの金利の引き上げはほぼ確実であり、状況によってはそれ以降も引き上げられる可能性は十分にあるのだろうという感じです。それだけ米国のインフレ圧力は健在であり、気を抜くとすぐにインフレはまた上昇していってしまうでしょう。そういう意味でもFRBは気を引き締めているといった感じがします。そのため株式市場にとっては厳しい時間はまだまだ続くということです。