米国の経済指標は一段と悪化

インフレや金融不安など米国の先行きに対する不安感は一向に収まる気配がありません。昨日発表された経済指標はいずれもあまり良いものではなく、今後の先行きに対する不安というものが一層増しそうな感じがします。それでもなお金融政策は緩む気配はなく、経済の落ち込みというのは避けられそうもありません。

労働市場は一段と悪化

昨日発表された先週一週間の新規失業保険申請件数は大幅に増加し、労働市場の悪化傾向が顕著になってきました。

米国では先週、新規失業保険申請件数が増加した。失業保険の継続受給者数(8日終了週)は2021年11月以来の高水準となり、労働市場の若干の軟化が示唆された。

 この統計は週ごとの変動が大きくなり得るが、継続受給者数の増加は労働市場が勢いを失い始めているとの見方を強めるものだ。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「経済へのリスクが強まるのに伴い、レイオフが徐々に増加し、労働市場減速の兆しが明らかになることが見込まれる」と指摘した。

  より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は23万9750万件に減少した。継続受給者数の4週移動平均は昨年10月以降、毎週増加している。

  季節調整前ベースの申請件数も減少。州別ではカリフォルニア、ペンシルベニア、テキサスで減少が目立った一方、ニューヨークとジョージアでは増加した。

引用:bloombergより

このように労働市場は急激に悪化してきています。以前は何があっても労働市場だけは堅調ということも多かったように思いますが、ここへ来て流石に労働市場にも変化が出てきたようです。大手IT企業を中心に人員整理の動きが相次いでおり、このようなことはいづれ起こるだろうと予想はしていましたが、ようやくその時がきたということでしょう。

不動産市場もイマイチ

労働市場だけではなく、不動産市場も相変わらずの難聴です。3月の中古住宅販売件数は予想外に減少し、不動産市場でも冷え込みが続いているようです。

全米不動産業者協会(NAR)が発表した3月の中古住宅販売件数は、予想以上に減少した。2月は大幅増を記録していた。住宅市場は一部に安定化の兆しもあるが、依然として回復の足取りが不安定なことが浮き彫りになった。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は発表資料で、「住宅販売は回復の途上にあり、住宅ローン金利の変化にかなり反応しやすい」と指摘。「スターターホーム(初めて家を購入する世帯に適した価格の物件)に複数の問い合わせがあるケースが、かなり見られる。これは、需要を完全に満たすためには供給増加が必要なことを示唆する」と指摘した。

  中古住宅販売在庫は98万戸と、前月比で小幅に増加したが、なお在庫不足を示唆する水準。販売に対する在庫比率は2.6カ月。同比率は5カ月を下回ると在庫がタイトと見なされる。

  中古住宅価格(季節調整前、中央値)は前年同月比0.9%下落し、37万5700ドル(約5040万円)。ユン氏によれば、2012年1月以降で最大の下落となった。

  3月に売れた住宅の約3分の2は、市場に出てから1カ月未満で買い手が決まった。物件が市場に出ている平均期間は29日。前月は34日だった。

引用:bloombergより

このように不動産市場はいまだ強い回復への道のりは険しいと言わざるを得ないといった状態でしょう。金利が非常に高くなっている現在、住宅ローンも非常に組みにくくなっているのが現状です。そういう意味では不動産投資も急激に冷え込んでいるということでしょう。最近は回復傾向も見られましたが、やはりそうかんたんには行かないということです。

景気の先行きは暗い

この様な状態では経済が強く成長するはずもありません。今後の経済の先行きについても非常に悲観的な結果となっているようです。

民間調査機関のコンファレンスボードが発表した3月の米景気先行指標総合指数(LEI)は、前月比1.2%低下して108.4となった。市場予想の中央値は0.7%低下だった。2月は0.5%低下(速報値0.3%低下)に下方修正された。

引用:bloombergより

このように今後の先行きに対しても非常に悲観的になっているようです。特に雇用が悪化してきたということは景気に対する影響というのは非常に大きいと言わざるを得ないでしょう。雇用が不安定になればそれは当然消費にも影響してくるでしょう。米国のGDPの大部分を占める個人消費が冷え込むとなれば景気に対する影響は計り知れません。そういう意味でも今後の先行きに対して懸念が残ります。

これからが本番

まだまだ米国経済の回復は先になりそうです。雇用の悪化もようやく本格的になってきたという感じで、これからが本番でしょう。少なくとも金融引き締めは今後もしばらく続きます。そういう意味ではしばらくはこの傾向が続き、もう少し悪くなることはほぼ間違いないというところです。非常に楽観的なシナリオで言えばそこまで大きく雇用も経済も悪化せずにインフレを収束して景気が持ち直すというプロセスをたどるのだろうと思いますが、まあそんなにかんたんには行かないでしょう。それなりに景気後退局面に入るのはほぼ間違いないのかなという印象です。いずれにせよ景気の悪化はこれからが本番です。その事は頭に入れておいたほうがいいでしょう。

まとめ

今日は相次ぐ悪い経済指標について見てきました。米国の景気の悪化はこれからが本番です。うまくコントロールできる可能性もあるとは思いますが、そうなる確率は非常に低いでしょう。あまり期待はしないほうがいいと思います。