相変わらずのインフレと楽観論

依然として深刻なインフレに悩まされている米国ですが、それがいつ収束するかということは誰もが気になるところでしょう。その予測に関するレポートはいくつも存在しますが、どれが正解なのかは全くわからないといったところです。当然いつかは収束するはずですが、現状、その気配はありません。

企業活動は思っているほど悪くない

企業活動はインフレと金融不安により停滞するのではないかと思われていましたが、実際はそうでもないようです。

4月の米企業活動は予想外に活発化し、11カ月ぶりの高水準となった。サービス業と製造業の活動が上向いたためで、インフレ圧力が再燃する恐れが示された。

  S&Pグローバルが21日発表した米国の製造業・サービス業を合わせた4月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、前月から1.2ポイント上昇して53.5。同指数は50を上回ると活動拡大を示唆。これで3カ月連続で活動拡大を示した。昨年後半には活動縮小が続いていた。

  新規受注は11カ月ぶりの高水準。特にサービスセクターで顕著だった。企業はコスト上昇分を顧客に転嫁でき、産出価格は7カ月ぶりの高水準となった。

  S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「需要が上向くとともに、物価圧力も再燃した」と指摘。「消費者物価のコアインフレが依然として5.6%と高く、さらに上昇する、あるいは少なくとも高止まりする可能性を示している状況は、これで一部説明がつく」と述べた。

  物価上昇はまだ速過ぎるとはいえ、過去数カ月には鈍化方向に進展を見せていた。インフレ率の上昇傾向はこの流れを反転させる。米連邦公開市場委員会(FOMC)は5月の会合で追加利上げを決定するとみられているが、どこまで金利を引き上げるべきかについては当局者らも確信を持っていない。

  4月のサービス業PMIは1年ぶりの水準に上昇。製造業PMIは昨年10月以来の拡大を示した。両セクターとも雇用が増加し、昨年7月より後では最高となった一方、熟練労働者の採用や維持に苦慮しており、生産遅延は拡大している。

  先行きに対する企業の見方は良好で、1年後の業況に対する信頼感は昨年5月より後では2番目に高い水準となった。それでも金利上昇とインフレ圧力を理由に、楽観の度合いは平均を下回っている。

引用:bloombergより

このように4月の企業活動は予想に反して活況を呈していました。企業活動か活発に行われているということは良いことではありますが、インフレを助長する恐れがあり、インフレ抑制を目指すFRBにとっては頭の痛い問題かもしれません。また、この様な現状があるからこそまだまだ引き締めを継続するべきだという声が上がっているということなのでしょう。

楽観的な見通しを持っている人が意外と多い

しかし、インフレの先行きに対しては意外と楽観的に見ている向きも多いようです。

米国のインフレ率は従来の想定よりも速いペースで低下すると見込まれていることが、エコノミストを対象としたブルームバーグの最新調査で明らかになった。複数の銀行破綻をきっかけとした与信環境のタイト化が寄与するとみられている。

  月間ベースの同調査によると、エコノミストらは消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)価格指数について、2024年6月まで全四半期の予想を引き下げた。調査は4月14-19日に実施された。

  シリコンバレー銀行(SVB)など複数の銀行が先月に経営破綻したことを背景に、消費者や企業からは融資を受けるのがかなり難しくなったとの声が聞かれる。こうした状況は利上げと同様の影響を及ぼしており、米金融当局としては最終的にインフレ押し下げに向けてやるべき仕事が減る可能性もある。

  とはいえ、米金融当局がインフレ指標として重視するPCE価格指数は年末時点で前年比3.8%上昇と予想されており、伸び率は当局目標のほぼ2倍に相当する。物価上昇圧力は過去数カ月に和らいできたが、当局者らが望むほどのペースでは緩和していない。

  INGのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「銀行ストレスは、融資基準の大幅引き上げを意味する。借り入れコストが上昇し、企業景況感は弱く、住宅市場が急速に低迷しつつある環境において、経済のハードランディングが起こりそうだとの見方がますます強まる」と指摘。

  「こうした環境では、インフレはより一層減速の傾向を強め、年内利下げへの道を開くだろう」と続けた。

  今回の調査では、向こう12カ月におけるリセッション(景気後退)の確率は65%で変わらず。これは2020年半ば以来の高水準。

引用:bloombergより

このように、エコノミストの間では思ったほどインフレは長く続かないと見ていることがわかります。SVB破綻をきっかけに始まった金融不安がインフレに大きな影響を与えると考えており、思ったほど長く続かないと思っているようです。もちろんこれは予想の一つであり、そうならない可能性も十分にあるでしょう。しかし、この様な考えが多くエコノミストの間で存在しているということは確かなようです。

インフレ収束はそんなにかんたんにはなされない

やはりインフレはそうかんたんには収まらないというのが個人的な印象です。最近は上昇は一服し、これまでのような急激な伸びというのは収まったというのは確かでしょう。しかし、目標とする2%の物価目標へとすんなり行くとはとても思えません。おそらくはしばらく高位停滞してしまうのではないかと感じています。そしてFRBもその危険性を十分認識しているからこそ厳しい引き締めを継続すると言っているのだろうと思います。そういう意味ではまだまだ先の長い戦いになりそうです。しかし、相変わらず市場には楽観的な人が多いのだなと今回改めて感じました。これまでも何回もこの様な楽観論はかき消されているのに懲りない人もいるもんだなという印象です。もちろんその可能性がゼロと言うつもりはありませんが、個人的には全くその可能性を感じることはできないといったところです。

まとめ

今日は相変わらずくすぶるインフレと楽観論について見てきました。インフレはそんなにかんたんに収束しないでしょう。おそらく思っている以上に長引くのだろうという感想を持っています。そして相変わらず希望的観測を持ち続ける人も一定数おり、その数も少なくないということがよくわかったという印象です。