インフレ圧力はいまだ健在であることが確認される

5月のFOMC開催が近くなってきましたが、それに合わせてインフレ圧力健在を思わせる経済指標の発表が相次いでいます。昨日発表された個人消費支出と雇用コストの指標は相変わらず強いものであり、FRBが金融引き締めを継続する良い理由となっています。そのため市場でもその様な見方をする向きが多くなってきているように思います。

雇用コストは伸びが加速

米国の労働市場は以前としたタイトな状況であることが確認されています。

米国の雇用コストは1-3月(第1四半期)に市場の予想以上に伸びが加速。米金融当局に追加利上げ路線を維持させる根強いインフレ圧力が浮き彫りになった。  雇用コスト指数は1%以上の伸びを示すのがこれで7四半期連続となり、1996年のデータ開始以来の最長記録を更新した。

  労働市場が持続的に逼迫(ひっぱく)する中、報酬が依然速いペースで増加していることを今回の統計は示した。ただ、求人件数は減少しつつあり、企業の人員削減も相次ぐ中、一段の給与増加は限られる可能性がある。

  米金融当局は物価上昇圧力との闘いで勝利を宣言する前に、持続的な減速の兆候を確認する必要がある。

  調査会社インフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ社長は「5月の利上げに関して揺れている米金融当局者がいるならば、この日の雇用コスト指数の基調的な強さは少なくともあと1回の利上げを支持するよう促す可能性が高い」とリポートで指摘した。

  1-3月は建設など財生産業界が雇用コストの上昇に大きく寄与。サービス業界の同コストは1.1%上昇と、5四半期ぶりの低い伸びとなった。

  雇用コスト指数は前年同期比では4.8%上昇と、前期の5.1%上昇から伸びが鈍化。インセンティブ(奨励給)が支給される職種を除いた雇用コストも減速した。米金融当局は同指標に注目している。

  非軍人労働者の賃金・給与は1-3月に1.2%上昇と、昨年10-12月と同率の伸び。諸手当は伸びが加速した。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は相変わらずタイトな状態が続いています。一時期のような勢いは流石に衰えては来ていると思いますが、まだまだインフレが継続的に鈍化していくほどの落ち着きは見せていません。そういう意味ではFRBが金利を引き上げる良い口実となることは確かでしょう。

個人消費支出はたかどまり

また、個人消費も依然として堅調であり、インフレ圧力はいまだ強く存在していることが確実となりました。

3月の米個人消費支出(PCE)統計で、基調的インフレの高止まりが明らかになった。米連邦公開市場委員会(FOMC)が来週の会合で追加利上げを実施する論拠が強まった格好だ。

  米金融当局は総合価格指数で2%を目標にしている一方、物価のトレンドを測る上ではコア指数の方が優れているとみている。

  今回のPCE価格指数と、別途発表された1-3月の米雇用コスト指数はいずれも、来週のFOMC会合で0.25ポイントの追加利上げが行われるとの見方を強める内容だ。PCE価格指数の前年比上昇率はピークこそ過ぎたが、2%に戻す道のりは平たんではない。

  3月のPCE価格指数で一つの明るい材料は、住宅・エネルギーサービスを除くサービス業の価格指数が、ブルームバーグの試算で0.2%上昇に減速したことだ。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がこの指標に注目している。ただ、前年同月比では4.5%上昇と、なお高い伸びが続いている。

  ブルームバーグ・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は「この日のデータは5月2、3両日に開かれるFOMC会合での0.25ポイント追加利上げに向け、強力な支えとなった。一部の当局者は、金利が十分に景気抑制的な水準になお達していないと思うかもしれない。われわれの基本シナリオは来週の会合で追加利上げを実施した後、長期にわたって休止するというものだが、さらなる措置が必要になるリスクが高まっている」と述べた。

  家計は堅調な労働市場と過剰貯蓄を背景に、支出に回せるだけの資金を保有してきたが、その勢いは失われ始めている。実質PCEは3月に前月比横ばいとなった。財とサービスへの支出がともに振るわなかった。2月は0.2%減少(速報値0.1%減)に下方修正された。

  インフレ調整後で財への支出は前月比0.4%減と、3カ月ぶりの大きな減少。自動車購入の落ち込みが特に目立った。サービス支出は0.1%増。

  個人所得は前月比0.3%増。市場予想は0.2%増だった。

  実質可処分所得は前月比0.3%増。賃金・給与はインフレ調整前で0.3%増と、2カ月続けて同じ伸びとなった。貯蓄率は5.1%で、2021年12月以来の高水準。

引用:bloombergより

このように米国の個人消費は金利がこれだけ引き上げられた現在でも非常に強いと言わざるを得ません。個人消費が堅調といえば聞こえはいいですが、インフレが非常に大きな問題となっている現在ではとても厄介なものとして捉えるべきでしょう。消費がこれだけ堅調であればインフレはさらに更新し、さらなる上昇へと進む可能性が出てきます。そうならないようにするためにも当局は引き締めを強める可能性はより高くなったと言わざるを得ないと言った状況です。

株価の上昇もまだまだ先

相変わらずのインフレ圧力であり、まだまだ健在であると言えるでしょう。このためFRBは今後も厳しいインフレ抑制のための政策を打ってくることはほぼ確実と言っていいでしょう。次回のFOMCでも引き続き政策金利の引き上げが実施されることはまず間違いなく、それ以降も更に上昇させる可能性も十分にあると言えます。それだけ今回のインフレは非常に粘着性が高く、落ち着くまでには相当の時間がかかるのだろうという印象です。そういう意味では株価の持ち直しというのも時間がかかるのかなと言った感じです。

まとめ

今日は相次ぐタイトな経済指標の発表について見てきました。インフレ抑制はそうかんたんには行かなそうな感じです。おそらくは想像している以上に落ち着くまでには時間がかかるということなのでしょう。そして米国のリセッション入りというのももはや時間の問題と言った感じになってきています。これだけ時間がかかるのであれば経済はとてもではないですが持ちこたえられるとは思えません。そのときにインフレ抑制に注力するFRBは経済立て直しのための政策を打つことはできないでしょう。なのでリセッション入りも時期がいつになるかはわかりませんが、避けられないものなのかなという印象です。