米国経済はまだまだ堅調。インフレ抑制には時間がまだかかる。

非常に厳しい米国経済ですが、現状はまだ力強さを見せているようです。昨日発表された経済指標はまだまだ経済が堅調であることを示しており、将来の経済減速を懸念される中でも、着実な成長をしているような感じがします。しかし、それは裏を返せば物価上昇圧力になることでもあり、インフレ抑制を目指すFRBにとっては非常に頭の痛い問題でしょう。

5月の小売売上高は非常に堅調

昨日発表された5月の小売売上高は非常に堅調なものであり、経済状態が非常に不透明な状況下においても消費が比較的堅調に推移していることがわかりました。

5月の米小売売上高は前月比で予想外に増加した。経済状況を巡る問題は増えているものの、消費需要の底堅さが示された。

  5月は13カテゴリーのうち10で増加。広く減少が予想されていた自動車への支出拡大などを反映した。

  唯一のサービス分野である飲食店は0.4%増加した。

  国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高は0.2%増加した。前月は0.6%増だった。個人消費はGDPの約3分の2を占める。

  ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏はコア売上高について「家計支出は増加を維持するものの、第2四半期に減速することを示唆している」とリポートで指摘した。

  小売売上高統計はインフレ調整されず、サービス分野のカテゴリーが1つしかないため、消費環境全般について確固たる結論を導き出すのは難しい。

引用:bloombergより

このように米国の消費は依然として堅調です。インフレと厳しい金融政策にも関わらず、米国の消費者はその手を緩めることはないようです。金融不安もあり、かなり将来的には厳しい予想もされているとは思いますが、それでもこれだけの消費が継続されるというのは本当にすごいなという印象です。通常であればめでたしめでたしというところですが、現状手放しで喜べるものではありません。消費が堅調ということはインフレ抑制にとっては非常にマイナスです。ただでさえ厳しい金融政策を継続するというタカ派姿勢を見せているFRBにさらなる引き締めを想起させるのに十分なものになります。そういう意味では正直あまり喜んでもいられないのかなという感じがします。

製造業も悪くはない

消費だけではなく、ものづくりの現場でも予想外に強い数字が出てきています。

6月のニューヨーク連銀製造業景況指数は市場の予想外に拡大圏に浮上した。上昇幅は過去3年で最大。新規受注と出荷の回復が寄与した。

  今回の統計では、インフレ圧力が引き続き緩和していることも示された。仕入れ価格指数と販売価格指数はともに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)直前と「実質的に変わらない」水準に下がった。

  仕入れ価格指数は約3年ぶりの低水準となり、販売価格指数は2020年4月以来の大幅な低下となった。

  新規受注の指数は31.1ポイント上昇してプラス3.1となり、出荷の指数もプラス22に急回復。景況指数の見通しは約1年ぶりの高水準に改善した。

引用:bloombergより

このように製造業の現場でも活動は活況のようです。インフレも落ち着きを見せてきており、金融政策が一時的とはいえ緩やかになった途端にこのような強い経済指標が出てくるというのはなんとも複雑な気がします。現状はいいですが、やはり将来的には厳しい金融政策により急激な引き締めや、それに伴う金融機関の破綻のリスクがやや上昇するような気がしてきます。

もう少し景気はマイルドな方が良い気がする

米国経済は弱くなっているように見えて力強さを残しているというのがよくわかるものだった気がします。正直なところ、もう少し経済が落ち着いてくれたほうが長期的に見てよいのではないかと個人的には感じています。あまり経済が強すぎると金融政策をより厳しくせざるを得なくなるでしょう。そうなれば今は落ち着いてきたように見える金融不安が再燃するリスクが上がると思われるからです。もうこの前のような連鎖的な破綻というのはないような気がしますが、さらなる金利の引き上げや高金利の長期化というのは一部の金融機関にとっては大きなリスクとなることは間違いありません。そういう意味ではやや気になる結果だったというところです。

まとめ

今日は相次ぐ力強い経済指標について見てきました。経済が強いということは歓迎すべきことですが、インフレが問題視されている現在では、もう少しマイルドな展開のほうが結果的には良いのだろうと感じています。そういう意味ではやや気になる結果だったと思います。実際この結果が経済にどの程度影響を与えるのかはわかりませんし、FRBがどのように評価しているのかもわからないのでなんとも言えませんが、安心はできないだろうと思います。