7月の生産者物価は予想外に強いものとなる

インフレとの戦いはそう簡単には収束しないようです。昨日発表された7月の生産者物価は予想外に強いものとなり、物価上昇圧力は依然として強さを維持していることが確認されました。このため市場が期待しているような緩和期待というのはやや後退すると見られ、引き締め圧力は継続される可能性が出てきたように思います。

生産者物価は予想外に強い

昨日発表された7月の生産者物価は予想以上に強いものであり、インフレが依然としてしぶとく居座っていることが確認されました。

米国では7月に生産者物価指数(PPI)の上昇が加速した。特定のサービスカテゴリーの強さが主な原因となった。前月の数値は下方修正された。

  世界のサプライチェーン正常化や国外の需要低迷、消費者の需要が財からサービスへと幅広くシフトしていることが、この1年において生産者レベルでのインフレ圧力緩和に総じて寄与してきた。しかし原油価格が上昇しており、また向かい風が吹き始めている。

  サービスコストはほぼ1年ぶりの大幅上昇。ポートフォリオ管理や外来医療、旅客輸送などの価格上昇を反映した。

  ヘルスケアなどPPI統計のカテゴリーのいくつかは、今月発表される個人消費支出(PCE)物価指数の算出に使われる。連邦準備制度理事会(FRB)はPCE物価指数をインフレ指標として重視している。

  オックスフォード・エコノミクスのマシュー・マーティン、オレン・クラチキン両氏は「底流のトレンドからは、PPIインフレがコロナ禍前の上昇率に戻りつつある状況がうかがわれるが、その進展はゆっくりとしたものになりそうだ」とリポートで分析。

  「こうしたデータに連邦準備制度理事会(FRB)当局者らは安心しつつも、タカ派的なトーンは維持し、7月のサービス価格急伸がその後数カ月続くのかどうか目を光らせるだろう」と述べた。

  ヘルスケアの中でも外来医療と介護施設のインフレが加速。医師による医療コストはほぼ変わらなかった。同じくPCE物価指数の算出に使われる証券仲介および投資顧問のコストは、7月に大きく上昇した。

  財の価格は小幅に上昇。昨年11月以来の大幅上昇となった食品価格が押し上げた。食品とエネルギーを除いた財のコア価格指数は前月と変わらず。6月は低下していた。ここ数カ月の財価格低下は消費者物価の下落という形で波及しており、進行すればデフレーションの状態になりかねない。

  食品とエネルギー、貿易サービスを除いたPPIは前月比0.2%上昇。前年同月比では2.7%上昇した。

  生産過程における比較的早い段階での物価を反映する中間財のコストは続落。食品とエネルギーを除いた中間財コストは、昨年10月以来の大幅低下となった。

引用:bloombergより

このように生産者物価は引き続き強さを維持しています。消費者物価が落ち着きを見せる中で、上流ではまた価格上昇の動きが見られてきたことになります。しかし、今回の結果のみでどうこう言えるものではないでしょう。実際、中身を見てみると全体が上昇しているというよりも一部の分野が大きく上昇し、全体を牽引しているような形です。食品やエネルギーなど変動の大きなものを除けばそこまでの上昇ではなく、直ちに危機感を募らせるようなものではないでしょう。しかし、FRBの警戒感が高まることは事実であり、今後の動向次第では引き続き金融政策が引き締められる可能性も十分にあるでしょう。

インフレとの戦いはそう簡単には終わらない

やはりインフレとの戦いは簡単には終わりそうもありません。当初から今回のインフレは粘着性が高く、そう簡単には落ち着かないだろうと予想はされていました。そのことを裏付けるような結果であり、まだまだ戦いは継続されるということです。そういう意味では市場に溢れる楽観論というのは行き過ぎたものだったのだろうと思います。9月のFOMCでは利上げが行われるかはまだわかりませんが、少なくとも今回の結果が緩和方向へと金融政策を進ませるものにはならないでしょう。

まとめ

今日は7月の生産者物価について見てきました。インフレはまだまだ健在です。このインフレが収束するには相当の時間が必要であることは間違いなく、時々出てくる楽観論というのは非常に危険なものであることは頭に入れておいたほうがいいでしょう。