8月の民間雇用者数は非常に低調なもの

米国の労働市場は確実に冷え込んできています。昨日発表された8月の民間雇用者数は非常に低調なものとなり、労働市場が以前ほど力を持っていないことが確認できました。求人数の減少も確認されていることから、米国の労働市場の減退はかなりの確率で起きているのであろうと思われます。

8月の雇用者数は大幅に減少

昨日発表された8月の民間雇用者数は大幅に減少しました。

米民間企業で8月に増加した雇用者の数は、この5カ月で最も少なかった。労働者需要が弱まりつつある兆候が新たに増えた格好だ。

  ADPリサーチ・インスティテュートがスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボとの協力でまとめた統計で30日、明らかになった。

  教育と医療サービスで特に雇用が増加。貿易・輸送でも大きく増えた。娯楽・ホスピタリティーの雇用は2022年3月以来の低い伸びだった。

  求人件数の減少と合わせ、今回の数字は徐々に下向いている労働市場を浮き彫りにした。雇用主の多くは解雇には消極的だが、一部では新規雇用の抑制や就労時間の短縮でコストを削減している。

  同じ職にとどまった労働者の8月賃金は、前年同月比で5.9%増加。2021年以来の低い伸びだった。転職した労働者の場合、年間報酬の増加率は中央値で9.5%だった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「景気回復に伴い2年に及んだ異例の雇用増を経て、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による影響が薄れており、賃金と雇用はより持続可能な伸びへとシフトしている」と説明した。

引用:bloombergより

このように企業は労働者の新たな獲得に消極的です。労働者を解雇することはありませんが、新たに獲得し、事業を拡大するという意欲は今の所あまり見受けられません。そういう意味ではこれまで続いてきた労働市場の拡大というのもそろそろ終わりに近づいてきたのだろうという感じがします。ただ、大きく後退しているということでもありませんし、現状ではそこまで懸念するようなことではないのかなという感じがします。問題は記事にもある通り、雇用が維持されつつ賃金が継続的に上昇できるのかというところが問題でしょう。それが可能であれば米国経済は再び成長軌道へと戻る可能性も十分にあると思われます。

これまでとは違う段階へといこう

これまではコロナウィルスの影響による社会的混乱からの回復という意味合いでも労働市場は比較的堅調に推移してきたということでしょう。それが一段落し、新たな段階へと移行する時期に来たのかもしれません。そういう意味では何があっても強かった労働市場というのも変化するのだろうという感じがします。インフレ抑制を目指すFRBにしても強すぎる労働市場というのはやや困った問題であることは間違いありませんし、ある程度の停滞は歓迎するところでしょうが、あまりに金融を引き締めすぎると今度は労働市場は一気に悪化する可能性もあるのかなと感じます。

まとめ

今日は8月の民間雇用者数について見てきました。労働市場は確実に変化してきています。これまでのように何があっても強い労働市場というのはもう終わりに近づいているのかもしれません。今後は経済状態によって大きく変化が起きる可能性というのも十分ありえるでしょう。そういう意味では難しくなってきたとも言えますが、ある意味正常に戻りつつあるのかなとも感じます。