米国経済の先行きはかなり厳しくなりそうな雰囲気が出てくる

ここ最近は調子の良い米国株ですが、先行きについてはやや不安が残るところです。発表される企業業績もあまり芳しくなく、そのため専門家の予想も厳しいものとなってきています。そういう意味ではあまり現在のパフォーマンスが良いからと言ってあまり楽観的になるの早めておいたほうがいいのかもしれません。

ウィルソン氏の悲観論氏の悲観論氏の悲観論

米国株について悲観的な論評で知られるモルガンスタンレーのマイケル・ウィルソン氏は現在、そして今後の米国株について以下のような見解を述べています。

モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、S&P500種株価指数が約1年ぶりの好パフォーマンスを記録した先週の上昇について、ベアマーケットラリー(弱気相場の中での上昇局面)に過ぎないとの見方を示した。

  同氏は6日のリポートで、テクニカルとファンダメンタルのサポートが欠けていると指摘。暗い業績見通し、弱めのマクロデータ、アナリストの見方の悪化などを挙げ、「年末ラリーにこれ以上期待するのは難しい」と付け加えた。この上昇は「持続的な上昇の始まりというよりは、弱気相場の中の上昇のように見える」とした。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が先週、引き締めサイクル終了の可能性を示唆したことで、市場のセンチメントが好転。経済のソフトランディングに対する投資家の期待から、S&P500種とナスダック100指数は週間ベースで約6%上昇し、米10年債利回りは低下した。

  それでも、より高くより長くの金融政策が需要に与える影響についての懸念は残っており、企業は今回の決算シーズンに、景気減速の脅威が迫っていることへの懸念を示している。

  「米国債利回りの低下は、金融当局が来年のより早い時期に利下げに踏み切るという(株式にとって)強気な解釈ではなく、予想よりも低い発行ガイダンスおよび弱い経済データとの関連性が強かった」とウィルソン氏は指摘した。

引用:bloombergより

このようにウィルソン氏は述べ、現在の好調さは一時的なものであり、長くは続かないだろうという見方をしています。ウィルソン氏はここでも何度も取り上げていますが、非常に悲観的な論者として有名です。いつなんどきも悲観的なことしか言わないので、正直どうなのかと思うこともありますが、無視できるものではないでしょう。実際、企業業績はあまり良くはないようで、第3四半期の決算も期待した程よいものではなくなってきています。そのことについて述べた記事が以下になります。

7-9月(第3四半期)の米企業決算シーズンでは、売上高の失速が鮮明となっている。消費者需要の弱含みにより、企業はさらなる値上げが難しくなっていることがうかがわれる。

  これまでS&P500種株価指数構成企業の80%余りが決算を発表した段階で、7-9月売上高が市場予想を上回ったのは半数に満たず、2019年7-9月以来の低水準となった。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)がデータをまとめた。ドイツ銀行のストラテジストは、売上高の伸びは世界的に「コロナ禍前のレンジ下限」まで減速していると指摘した。

  そのため、今回の決算シーズンでは、予想外のプラスとなっている利益よりも、企業から相次ぐ売上高に関する弱気な発言に注目が集まっている。アップルは先週、年末商戦に当たる10-12月売上高が前年並みになるとの見方を示し、成長の回復を期待していた投資家の失望を誘った。大手化粧品メーカーのエスティローダーもさえない売上高見通しが嫌気され、株価が急落。欧州でも、酒類の仏レミー・コアントローといった有力企業による売上高見通しの引き下げが目立つ。

  ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマルチアセット担当シニアストラテジスト、マリヤ・ベイトメーン氏は、今回の決算では、経営陣からガイダンスに関する慎重な発言が相次いでおり、同社では価格設定力の低下に伴う売上高の弱含み、利益率縮小について注目していると指摘。「今のところ、消費者と企業はまだ信用にアクセスできる状況にあるが、一段と難しくなっており、かつコストも増大している。これが枯渇すれば、さらに痛みが増す」と述べた。

  ブルームバーグが決算会見の記録を分析したところ、欧米ともに「弱い需要」がキーワードのトレンド上位に入った。2000年以降のデータによると、まだ約2割の企業による決算発表を残した段階で、需要低迷への言及回数はすでに2番目の高さとなっている。

引用:bloombergより

このように企業業績はあまり良くはないようです。強い労働市場が維持されてきたため、消費はそこまで落ち込んでいませんでしたが、雇用統計ではやや弱さを見せるような数字が出てきました。そして決算内容もあまり良くはないということで段々と経済にも悪影響が出てきたということでしょう。長らくインフレに苦しんできた米国経済をなんとか支えていた労働市場に限界が見え始め、その影響が消費に影響し、企業業績も悪化してきたということなのかなという感じです。

米国経済の先行きはかなり怪しい

ウィルソン氏の発言というのはいつものことだとは思いますが、それを無視できないというくらいには米国経済はあまり良くはないと言っていいのかなという感じです。先日の雇用統計の結果がいよいよ労働市場になんかを示唆するようになり、実際の企業業績も悪化してきたとなれば景気後退の可能性も十分に出てきたのだろうと思います。ここまでの材料が揃えばおそらくは次回の消費者物価の値などはかなりの低いものになるのかもしれませんし、そうでなくともそれなりの弱さを見せることにはなるでしょう。ここまでは意外なほど強い米国経済を見せられてきましたが、ついに労働市場に限界が訪れ、その影響が経済全体にも影響し始めたのかなという感じがします。

まとめ

今日は今後の米国経済の行方について考えてきました。正直、今後の米国経済はそこまで明るいとは言えないでしょう。もちろん長期的に見れば米国は成長を続けるとは思いますが、短期的にはやはり労働市場の悪化の影響は経済に大きな影響を与えることになるでしょう。そういう意味では今後しばらくはあまり良い展開が望めないのかなという印象です。