パウエル議長は講演にて利上げの選択肢も排除していないことを述べる。

今後の金融政策について早期の緩和期待や慎重論など様々な意見が飛び交っています。それだけ転換点に近くなっていることだとは思いますが、非常に不安定な状況だと言えるでしょう。そしてその答えを考える上で重要なパウエル議長の講演が昨日は行われました。

パウエル議長の講演

昨日、FRBのパウエル議長はアトランタでの講演で以下のような発言をしました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1日、22年ぶり高水準にある借り入れコストに関して連邦公開市場委員会(FOMC)は慎重に行動するが、追加利上げの選択肢も維持すると述べた。米金融市場で広がる2024年前半の利下げ観測を押し返した格好だ。

  パウエル氏はアトランタで講演。「十分に景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論づける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ」と述べ、「追加の金融引き締めが適切になる場合は、そうする用意がある」と話した。

  FOMCは12月12-13日の会合で金利を据え置き、景気を評価する時間を得る見通しであることをパウエル氏は示唆した。2022年3月にゼロ付近だった政策金利を、FOMCは今年7月に5%を超える水準まで積極的に引き上げてきた。米経済の減速やインフレ率の低下を背景に、市場では早ければ3月にも利下げが開始されるとの観測が広がっている。

  「かなり急ピッチでここまで来たあと、FOMCは慎重に前進している。引き締め不足と引き締め過ぎのリスクは一段とバランスがとれてきている」と同氏は語った。

  パウエル議長の発言を受けて米国債利回りは低下し、ドルは下落、S&P500種株価指数は上昇した。政策は今「かなり景気抑制的な領域に入っている」との発言など、これまでよりもハト派的と示唆される内容が注目された。

ドル下落、円は146円台に上昇-米2年債利回り10bp超える低下

  「FOMCはインフレ率を時間とともに2%に引き下げること、またインフレが同目標への軌道上にあると確信するまで景気抑制的な政策を維持することに強くコミットしている」とパウエル氏は言明。

  同氏は最近の進展を挙げ、10月まで6カ月間の食品とエネルギーを除いたコアインフレ率が年率2.5%だったと指摘した。

  「金融政策が経済状況に影響を及ぼすには遅れが伴うと考えられている。引き締めの完全な影響はまだ実感されていない可能性が高い」と続けた。

引用:bloombergより

パウエルはこのように述べ、今後の金融政策について金利の引き上げの選択肢を排除しないことを明言しています。市場ではすでに利上げ終了とともに利下げ観測も出てきていますが、それを牽制する動きとなっています。実際、FRB内部からも利上げの効果に満足する声も出てきてはいますが、利下げとなると話は別です。流石にそこまで言及する声はまだないと思われます。そして、何れの意見もすべてデータ次第であり、あらゆる選択肢を排除しないということは共通しているように思います。そういう意味では今回のパウエル議長の発言もそれらを踏襲するものであり、何も変わったものではないと言えるのかもしれません。そして行き過ぎた楽観論をやや牽制したというところでしょう。

何も変わらない

今回の発言についても特別新しいものはないという感じです。これまでの原則論を淡々と述べたという感じにも見えます。今後については選択肢を排除せず、これまでの成果を強調したという感じです。そういう意味ではFRBは何も変わらず淡々と仕事をしているという印象を受けます。そういう意味ではいつもの通り、市場が勝手に一喜一憂しているというところでしょう。今後についてはまだ確定的なことはありません。状況によっては一段の引き締めもあるでしょうし、市場が期待する緩和ということもあるでしょう。何も決まったことはありません。

まとめ

今日はパウエル議長の発言について見てきました。これまでどおりの発言であり、何も変わったことはないのかなという印象です。全てはデータ次第であり、あらゆる選択肢がテーブルに乗っているということは忘れないようにしたいところです。