大統領選挙が金融政策に与える影響を懸念するパウエル議長

今年は大統領選挙が行われる年であり、現在も共和党、民主党共に熾烈な候補者争いをしています。その結果がどうなるかはわかりませんが、その結果が金融政策に与える影響は少なくないでしょう。そしてそれを見越した動きというのが水面下では起こってきているのかもしれません。

大統領選挙が金融政策に与える影響

最近ではパウエル議長が大統領選挙についての発言をすることがありますが、それは今後の金融政策に対して大きな影響を懸念をしてのことであろうという話が出てきています。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が大統領選の熾烈(しれつ)な争いに巻き込まれたくないと考えているのは間違いないが、それは不可能に近いかもしれない。

  パウエル議長は4日に放映されたCBSとのインタビューで、インフレ率低下に伴う利下げ時期の決定において、金融当局が政治を考慮に入れることはないと言明。「それは考えもしないことだ」と述べた。

  しかしトランプ前大統領はパウエル議長がまさにそのようなことをしていると批判した。

  共和党の大統領候補と目されるトランプ氏は「議長は政治的だと思う」と、同じく4日にフォックス・ビジネスで放映されたインタビューで発言。「利下げを実施すれば、恐らく民主党を助けることになるだろう」と話した。

  パウエル議長はFRBに政治色はないと強調しながらも、移民問題など選挙戦の争点になりそうな話題についてもインタビューでコメントした。ただ、具体的な政策提言には至らなかった。

  KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「FRBにとって選挙の年がいかに危険であるかを浮き彫りにしている」と指摘。「最善の経済政策を実施しようとしても、誤って政治的な地雷を踏まないようにするのは難しい」と述べた。

  トランプ氏は2018年2月に当時のパウエルFRB理事を議長に昇格させた。それから2019年にかけて、金利を高過ぎる水準に維持しているとして議長への批判を続けた。トランプ氏は18年8月のツイートで「唯一の問題はジェイ・パウエル氏とFRBだ」と批判。「パットのセンスがないゴルファーのようだ。大幅利下げという正しいことをすれば、米国は大きく成長するが、それは期待できない」と投稿した。

  トランプ氏は一時期、パウエル議長を解任する可能性さえ探っていた。4日のインタビューでは、11月の大統領選で当選してもパウエル議長を再任することはないと話した。

  バイデン大統領は2022年にパウエル議長を再任指名したが、FRBに対して公に意見を言うことは避けている。

  ただ、民主党の一部はそれほど遠慮はしていない。上院銀行委員会のブラウン委員長や元大統領候補のウォーレン上院議員は先月、パウエル議長に利下げを促す書簡をそれぞれ送付している。

  パウエル氏はCBSの60ミニッツに出演した際、インフレが急速に鈍化しているにもかかわらず、金融緩和への早期転換を求める圧力を押し返した。

  「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」と説明した。

  FRBウオッチャーにとってこの発言は意外ではなかった。4会合連続で政策金利を据え置いた1月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後、議長は記者会見で利下げを急がない姿勢を示していたためだ。

  一部のアナリストを驚かせたのは、パウエル議長が金融政策とは直接関係がなく、物議を醸す可能性のある政治的な問題について積極的にコメントしたことだ。

  パウエル氏は世界的な民主主義を支持する米国の利点と、それを支える経済および安全保障の枠組みを称賛。連邦債務が長期的には持続不可能であるとし、議会にこの問題に取り組むよう促した。移民政策はFRBの責務ではないとしながらも、移民は長期にわたって米経済に恩恵をもたらしてきたと主張した。ただ、大まかな原則を述べるにとどめ、具体的な政策提言は避けた。

  ブルッキングズ研究所のサラ・バインダー上級研究員はソーシャルメディアのX(旧ツイッター)への投稿で、「FRBは責務に集中すると強く主張しながらも、パウエル議長があのような強い発言をするのは初めてだ」と述べた。

  FRBが選挙の年に政治的な熱気にさらされるのは今に始まったことではない。2016年、当時の共和党大統領候補のトランプ氏は、イエレン前FRB議長が民主党のヒラリー・クリントン候補を勝たせるために低金利を維持していると繰り返し批判した。

  しかし今度の選挙戦はいくつかの点で異なる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後に起きたインフレ高進と、それを抑制するための大幅な利上げによって、有権者はパウエル議長とFRBをより意識するようになった。そして有権者は現状を好ましいとは考えていない。

  ギャラップが昨年12月に実施した世論調査では、パウエル議長に好ましい評価を下した米国民は43%に過ぎず、2021年に実施した前回調査の53%から低下している。

  米国は経済とFRBにとって特に微妙な時期に選挙を迎えようとしている。パウエル議長は先週記者団に対し、2つの相反するリスクを回避しようとしていると語った。利下げが早過ぎれば、インフレ率が目標の2%を大幅に上回る水準で根付く危険性がある。利下げを遅らせ過ぎると、米国をリセッション(景気後退)に追い込むことになりかねない。

  ポトマック・リバー・キャピタルのマーク・スピンデル最高投資責任者(CIO)は「パウエル議長は自身とFRBがターゲットにされる大統領選に対し、先手を打とうとした」と解説した。

引用:bloombergより

このように大統領選挙は今後の金融政策に大きな影響を与える可能性があるということでパウエル議長はかなり懸念をしているのかもしれません。一応建前上はFRBは独立して政策を行うということにはなっていますが、実際のところ、国民から選挙によって選ばれた大統領に圧力をかけられればそこまで無下にはできないというのが実際のところなのでしょう。それは何も米国だけではなく、日本や諸外国でも程度の違いはあれどあるのだろうとは思います。いずれにせよ今年の金融政策は大統領選挙の行方を無視して進むことはおそらくないのだろうという感じです。

政治の介入は十分に考えられるところ

このあたりは非常に難しい話だとは思いますが、実際のところ避けては通れないところなのでしょう。どんなに綺麗事を行ったところでこのあたりは変わらないというのが現実というところです。そういう意味で今後の金融政策はある程度大統領選挙を始めとした政治の影響というのがいつもよりも大きく出てくるのかもしれません。特にトランプ氏が再び大統領に返り咲いたときには大きな影響が出てくるのかもしれません。実際にどのようになるかはわかりませんが、今年の特に後半には予想外に政治の影響が金融政策を始め、マーケットに出てくる可能性も考えておいたほうがいいでしょう。

まとめ

今日は大統領選挙が金融政策に大きな影響を与える可能性について考えてきました。どの国もそうですが、中央銀行は独立しているという建前ですが、政治を無視した政策というのはなかなか考えられないところです。そういう意味では今年大統領選挙が行われる米国では特にその影響が強く出る可能性も考えておく必要があるのでしょう。