パウエル議長が3月の利下げを否定する。これによりこの議論はほぼ終了となるでしょう。

最近の経済指標の結果により市場が期待していた利下げというのはやや後退したような感じがしますが、それをより確定的にするような発言をパウエル議長がしています。先日、パウエル議長はテレビ番組に出演し、3月の利下げの可能性について否定的な発言を述べています。

3月の利下げの可能性はほぼ消える

4日の夜に、パウエル議長はCBSのニュース番組に出演し、今後の金融政策について言及していました。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日夜(日本時間5日午前)に放送されたCBSニュースの番組「60ミニッツ」で、金融当局として3月以降まで利下げに踏み切るのを待つ公算が大きいと語った。当局が将来的に利下げする場合の論拠について、一般の米国民に説明するものだ。

  議長はその中で、インフレ率が2%の物価目標に持続的に鈍化する道筋にあることを確認するため、経済データをさらに目にしたい意向をあらためて表明した。パウエル議長のインタビューは1日に収録。CBSが発言録を公表した。

  パウエル議長はインフレ抑制に関し、「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値がインフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」と説明した。

  議長は「実際にそうなるとは考えていない」としつつも、「多少の時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」と話した。

  さらに、連邦公開市場委員会(FOMC)が3月19、20両日の次回会合までに、インフレの道筋について「そうしたレベルの確信に達する」可能性は小さいと述べた。議長は先月31日のFOMC会合後の記者会見でも同様の発言を行っていた。

  番組でパウエル議長にインタビューしたCBSのスコット・ペリー氏はナレーションで、議長が今年半ば前後に最初の利下げを行う可能性を示唆したと語ったが、テレビで放送されなかった部分も含めて、CBSが公表した発言録にはそれを示すものはなかった。

  債券投資家が急ピッチの利下げの可能性織り込み過ぎていた可能性がパウエル議長の同番組での発言で浮き彫りとなり、米国債相場はアジア時間早い段階の取引で下落。相場下落は各年限に及び、10年債利回りは香港時間午前8時4分(日本時間同9時4分)時点で4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.06%となった。

  議長はこのほか、金融当局者が2024年の金利見通しを「劇的に」変更するとは見込まれないともコメント。昨年12月に公表された当局者の四半期経済予測中央値では、主要政策金利のフェデラルファンド(FF)金利は24年末時点で4.6%と予想されていた。

  「FOMC参加者は2、3人以外は皆、年内利下げで景気抑制的なスタンスの巻き戻しを開始するのが適切だろうと確信している」と議長は述べるとともに、「そのようにするのが基本シナリオであるのは確かだ。全体的な文脈を踏まえ、正しいタイミングを捉えようと努めているところだ」と説明した。

引用:bloombergより

このようにパウエル議長は3月の利下げについては否定的なようです。これは他のFRB関係者も述べていることと一致しており、最近の経済指標の結果を受けて、利下げに対しては慎重になっているのだろうと思います。一時はパウエル議長のハト派よりな姿勢によって市場は一気に利下げの機運が高まっていましたが、その流れはこの発言によってほぼ完全になくなったと言っていいでしょう。そういう意味では3月の利下げというのはほぼないと言えるのではないかと思います。もちろん経済状況によっては柔軟に対応はしてくると思われますので、予想外に経済が急減速などをすればその可能性もないことはないでしょう。しかし、現状を見る限り、その可能性はあまり高くはないような気がするので、本筋ではないとは思います。

市場の楽観論はまたも敗北

今回のパウエル議長の発言を持って3月の利下げの可能性の議論はほぼ終了というところでしょう。これまでも経済指標の結果や各要人の発言によってその流れは出来上がってはいましたが、パウエル議長の発言を持ってとどめを刺されたという感じです。そういう意味で利下げはやや後退するということになります。この事自体は個人的には予想の範囲内ですし、むしろ本筋であるような気はします。多くの関係者はそこまで早期の利下げについての発言はしていませんでしたし、あるにしても年央から年後半にかけて行われるのではないかというのが一般的でした。しかし、何故かマーケットでは3月から利下げがかなりのペースで行われるのではないかという観測が一気に広がっていたわけであり、そういう意味では今回も勝手に思い込んで間違えたマーケットだったということでしょう。ただ、さすがのマーケットも今回のパウエル議長の発言を持ってその考えは捨てるのではないかと思います。ゴールドマン・サックスを始めとして、多くの予想が利下げ予想を後退させていますし、少しは現実的な観測に近づくのかなという感じです。

まとめ

今日はパウエル議長の発言について見てきました。今回の発言を持って3月の利下げの可能性はほぼなくなったと見ていいでしょう。マーケットはまたまた楽観論を修正することになったということです。いつものことですが、根拠なき楽観論には与しないほうがいいということを改めて感じたところです。そういうわけで米国の金融緩和政策はしばらく遠のきそうな感じです。