11月の雇用統計は市場予想を上回る強さを見せる

市場の緩和期待は大きく後退することになりました。昨日発表された11月の雇用統計は予想を大きく上回る結果となり、労働市場が弱さを見せる中にあっても強さを失っていないことが確認されました。このことにより労働市場の悪化を理由とした緩和観測は大きくしぼんだ形となっています。

11月の雇用統計は強さを見せる

昨日発表された11月の雇用統計は市場予想を大きく上回るものとなりました。

11月の米雇用統計では雇用者数と賃金の伸びが市場予想を上回り、労働市場の力強さが示された。米金融当局が来年早期に利下げに動くとの市場の期待をしぼませる内容だ。

  11月の雇用者数では、ストライキを実施していた自動車メーカー従業員の職場復帰が3万人の押し上げにつながった。労働参加率も小幅に上昇。

  全米自動車労組(UAW)のスト終結に伴い製造業分野の雇用が上向いたことに加え、医療や娯楽・ホスピタリティー、政府部門が全体の伸びをけん引。他の分野では伸びが小幅にとどまるか、小売りのように減少するかだった。

  今回の統計で示された労働市場の力強さは、インフレ率を確実に目標水準に下げるため高水準の借り入れコストを維持するという金融当局の方針を裏付けている。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は来週開く会合で政策金利を据え置くと、市場では広く予想されている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はこれまで、市場で強まる早期利下げ期待を繰り返し押し返している。

  LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「1-3月(第1四半期)を皮切りに来年数多くの利下げが行われるとの期待は後退しそうだ」とし、「金融当局はこの機会を捉え、辛抱強さとより長期にわたる金利据え置きを呼び掛けるだろう」と分析した。

  雇用統計が堅調な内容となったことを受け、市場の注目はインフレ指標に移る。物価上昇ペースの一段の鈍化が示されれば、労働市場がより持続的な再加速を見せない限り、FOMCを利下げ姿勢に傾かせる可能性が高くなる。

  BNPパリバの米国担当シニアエコノミスト、エレーナ・シュルヤティエバ氏は「今回のデータの全体像を見れば、FOMCはインフレ率を確実に目標に戻すため辛抱強い姿勢を維持できるだろう」と述べた。

  平均時給は前月比0.4%増と、今年最大の伸び率に並んだ。前年同月比では4%増。

  労働参加率は62.8%に上昇。男性の参加率上昇が全体を押し上げた。25歳から54歳までの労働参加率は変わらずだった。労働力の供給がさらに増えれば、賃金の伸び緩和につながる可能性がある。

引用:bloombergより

このように11月の雇用統計は予想外に強いものとなっています。最近は弱い労働市場を示す経済指標の発表が相次いでおり、市場では労働市場の軟化による緩和期待というものが先行していました。しかし、今回の雇用統計の結果はそれらを打ち砕くものとなっています。米国の労働市場は以前ほどの強さがないのは間違いありませんが、思っているほどには弱くはないようです。そういう意味ではインフレはまだまだ強さを残していく可能性が高いと言っていいでしょう。この結果を受け、次回のFOMCでは金利の現状維持が見込まれています。そして現状認識も厳しいままである可能性が高くなっています。市場では早期の緩和期待というのが強くなっていましたが、その期待は裏切られる形となりました。

またもや市場の楽観論は裏切られる

今回の結果はやや意外な感じはします。最近は総じて労働市場を示す経済指標は悪化を示すものが多かっただけに、雇用統計がここまで強いというのは予想外と言えるでしょう。しかし、複数の指標が違ったデータを示すということは何も珍しいことではなく、こういうこともあるということです。何れにせよ労働市場の力強さはまだまだ残していることは事実です。今回の結果を持って緩和観測は大きく後退したことも確実でしょう。そういう意味では株式市場にとってはやや厳しい内容なのかなと思います。ただ、個人的には市場はやや楽観的すぎると思っていましたし、インフレの粘着性の高さを考えればそうかんたんには落ち着かないことは十分予想できたとは思います。そういう意味では今回も市場の楽観論が行き過ぎていたということでしょう。

まとめ

今日は11月の雇用統計の結果について見てきました。労働市場はまだまだ強さを残しています。よってインフレとの戦いはまだまだ続きますし、厳しい金融政策もしばらく続くことでしょう。今回のインフレは非常にしぶといです。そういう意味ではそうかんたんにはインフレは収束はしないと思っていたほうがいいと思います。そして市場は最近は常に楽観的に動いています。そして勝手に失望するという動きを繰り返していることは覚えておいたほうがいいでしょう。