インフレが確実にコントロールできるまで金融政策を変更すべきではない

現在、市場ではすでに利上げ終了を織り込んでおり、い吊り下げが行われるのかに注目が集まっています。強い雇用統計の結果を受けて、その観測はやや後退していますが、利下げ予想自体は変わっていません。しかし、雇用統計の結果からもわかるように、インフレが完全に収束したと断言するのはやや早いような気はします。

インフレが確実に落ち着くまで政策変更はすべきではない

サマーズ元財務長官は先日、メディアにて現在の経済状況について以下のような見解を述べています。

サマーズ元米財務長官はインフレが制御下に戻ったか、あるいは経済が低迷しつつあるとの証拠が決定的に示されるまで、米金融当局は利下げ方向へのシフトをとどまるべきだと語った。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で「政策を転換する時、または転換するとの発表は大きな揺れを起こす」と発言。「そのため、当局はその地点に至ることについて極めて慎重かつ注意深くなる必要があるだろう」と述べた。

  「インフレが低水準で抑制されているという確かな証拠、あるいは景気が反転しているという本物の証拠を確認するまで」、米金融当局者らは待つ必要があるだろうと続けた。ハーバード大学教授のサマーズ氏はブルームバーグテレビジョンに定期的に出演する。

  11月の米雇用統計発表後のインタビューで、そのような証拠はまだ見られていないと同氏は指摘。同統計では雇用者数が市場予想を上回ったほか、平均時給は前月比0.4%増に加速、失業率は3.7%と予想外に低下した。

  「これらは良好な数字で、少なくとも11月時点で経済がまだかなり堅調な様子だったことを示している」とサマーズ氏は指摘。賃金の伸び加速は「インフレとの闘いで勝利宣言することには注意が必要だという私の考えを補強するものだ」と話した。

  その上で、リセッション(景気後退)を伴わずに物価が制御されるソフトランディングのシナリオが「より現実味を帯びてきた」としつつ、現時点では確信できる結末ではないとの見方を示した。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は金融政策について、まだ変更できる段階ではないと見ています。インフレが確実に制御できていると確定できるまでは緩和へと動くべきではないと警告を発しました。サマーズ氏はいぜんよりFRBの金融政策に対しては厳しい見方をしており、先行きについても悲観的に見ることが多かったように思います。しかし、最近はやや明るい兆しがあることについても認めており、ソフトランディングの可能性も高くなったと言及しています。そういういみでは常に慎重に物事を考え、可能な限りリスクを少なくするべきと思っているのかなという感じです。

FRBも慎重に市場を注視している

サマーズ氏のこの意見には個人的には同意できるという気がします。正直言って今の市場はやや楽観的すぎる気がしています。インフレが落ち着いてきたことは事実ですし、経済状況が悪化してきていることを考えれば金融政策にも変更が必要だというのは理解できます。しかし、今はインフレをコントロール下に置くことが最優先であり、それを確実にするまで油断するべきではないでしょう。経済についても悪化傾向にあるとはいえ、まだまだ個人消費も悲観的になるような状況ではなく、労働市場も強さを残していることが確認できたことを考えれば、金融緩和に移行するというのは考えづらいような気はします。FRBも市場の期待とは裏腹に、引き締めの可能性について全く否定していません。そういう意味では金融緩和期待というのはやや早すぎるのかなという感じがします。

まとめ

今日はサマーズ元財務長官の発言について見てきました。サマーズ氏は非常に慎重に状況を見ていますし、その考えについては同意できる部分が多いような気がします。今はインフレ抑制が最重要であり、そのために最善を尽くすべきでしょう。経済は悪くなってきたとはいえまだまだ支援が必要なほど悪化しているとは思えません。そのバランスというのは非常に難しいようには思いますが、インフレが長期に居座って経済を苦しめ続けるという事態だけは避けるべきでしょう。