早期の利下げは現状難しいのではないかと思う

インフレの鈍化に伴い、金利の引き下げに対する期待は日に日に高まっていますが、実際にはそこまで早期には金利が下がらないのかなという印象があります。もちろんそうならない可能性もありますが、そのような慎重な意見も多くあるのも事実です。しかしながら、利下げを一刻も早く行うよう警告する声も多くあり、かなり複雑な状況となっています。

早期の利下げ期待

今後の金利の行方について、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同創業者であるビル・グロース氏は今後数ヶ月以内に利下げを行うように忠告しています。

パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同創業者であるビル・グロース氏は米金融当局について、米経済のリセッション(景気後退)入りを回避するため、もはやバランスシート圧縮を停止し、今後数カ月に利下げを開始すべきだとの考えを示した。

  グロース氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、自分が金融当局を率いているとすればどのように違った行動を取るかとの質問に対し、「私だったら量的引き締め(QT)をストップする」とし、「現時点で量的な引き締めを続けるのは正しい方向や政策ではない」と述べた。

  グロース氏はまた、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局が今後半年から1年にかけて金利を引き下げるべきだと語った。

  米金融当局が二十数年ぶりの高水準にある政策金利の引き下げを始める正確な時期がいつかを巡りウォール街は強く注視しており、デリバティブ(金融派生商品)トレーダーの一部は引き続き3月にも利下げが行われることを期待している。

  グロース氏は「実質金利は単純に高過ぎる」と話した。今年最初の連邦公開市場委員会(FOMC)会合は今月30、31両日に開催される。

  実質的な借り入れコストと見なされる米10年物インフレ連動債(TIPS)利回りは昨年10月に2.6%と15年ぶりの高水準に上昇。その後は低下し、現在は約1.8%となっている。グロース氏は「経済が深刻なリセッションに陥らない」ようにするため、1-1.5%程度への低下が望ましいと語った。

  広い範囲に及ぶインタビューでは、実質利回りの水準と比較して株価が高過ぎるといった、以前の発言も一部繰り返した。

  高値水準にあるテクノロジー株の代わりに、銀行株やたばこ会社株など一定の高配当銘柄のほか、企業の合併・買収(M&A)アービトラージ(裁定取引)といった、もっと控えめな投資戦略を選好するとしている。

  グロース氏はまた、イールドカーブ(利回り曲線)のスティープ化が続き、長短逆転の解消に向かうとの見通しも示した。米2年債利回りは現在約4.4%と、10年債利回りを29ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上回っているが、昨年7月時点に100bp余りあった格差からは縮小している。

  「われわれのように資本主義や金融をベースとする経済は、一段と少ないリスクで一層高めのリターンを得ることができる状況では、うまくいかない」とコメントした。

引用:bloombergより

このようにグロース氏は述べ、インフレ鈍化に伴い、金融緩和への移行を速やかに行うよう提言しています。引き締めをあまり長期間行うことへのリスクを述べ、それを回避するためにも金利の引き下げやバランスシートの圧縮を停止し、金融緩和政策へと移行することを述べています。多くの専門家の間でも今後の金融政策をどのようにするかについては非常に方向性が別れてきているように思います。利下げをそこまで急ぐ必要はないという意見もあれば、このように早めの利下げをすべきという意見もあり、非常に複雑な状況であると言っていいのかなという感じがします。今のところはFRBはそこまで急いで緩和へと移行するようには思えませんが、状況によってはそのようになる可能性もあるのかなという感じがします。

現状なかなか難しい

個人的にはおそらくはそこまで早く利下げは行われないのだろうと思いますが、そのような声も多くあるのは事実ですし、その可能性もないこともないでしょう。しかし、現実には消費も底堅く、雇用も安定していることを考えるとなかなかそこまで早期の緩和政策への以降というのは難しいのかなという感じがします。FRBとしてはより確実なインフレ抑制を考えていると思われますし、下手に緩和へと移行し、インフレがダラダラと長期間継続するという事態は最も懸念する状態の一つでしょう。そういう意味では経済や雇用の状態がよほど悪化しないのであれば、そこまで早期の利下げはないのかなという印象です。

まとめ

今日は今後の金融緩和期待について考えてきました。やはり個人的にはそこまで早くの利下げはなかなかないのかなという感じがします。消費や雇用が底堅いのであればなかなか早期の利下げは難しいのかなという印象です。今はより確実なインフレ抑制に主眼が置かれているのだろうと思いますし、そのためそこまで期待するほどのスピード感はないとは思います。