労働市場は底堅さを維持しながらも弱さものぞかせる

米国の労働市場は引き続き力強さを見せています。昨日発表された昨年12月の求人件数は市場予想に反して増加となっており、依然として労働市場はタイトであると言っていい状態です。しかしながら離職者の数は大きく減少しており、労働市場が流動的ではなくなっている可能性が出てきました。そのことにより労働市場を起因としたインフレ圧力の低下も起こる可能性があり、難しい状況となってきたような気がします。

労働市場は堅調ながらも弱さも見られた

昨日発表された昨年12月の求人件数は市場予想に反して力強いものとなっています。

昨年12月の米求人件数は市場予想に反して増加し、3カ月ぶりの高水準となった。一方で離職者数は減少し、労働需要が強さを維持しているにもかかわらず労働者の間で慎重姿勢が強まっていることが示唆された。

  求人件数が増えた一方、離職者数は340万人とほぼ3年ぶり低水準に減少。離職者数はここ数カ月減少傾向が続いており、これは現在の市場で他の仕事を見つける、あるいは賃金がより高い新たな職に就くことに対して、労働者の自信が低下していることを示唆している可能性がある。

  堅調な労働市場は経済がリセッション(景気後退)に陥るのを防いでおり、求人件数の増加はそれを浮き彫りにしている。だが一方で離職者数の減少は、現在の職に何とかとどまろうと考える労働者が増えていることを示している。

  採用とレイオフは増加。米金融当局はあからさまな雇用喪失ではなく、理想として求人の減少や採用ペース鈍化を通じた労働需要の軟化を目指している。

  ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール氏は「労働者は、より高い賃金の新しい仕事を見つけられると確信しておらず、それにより離職率はパンデミック前の水準を下回っている。全体的に見れば、労働市場に起因する賃金・インフレ圧力は低下し続ける可能性が高い」と指摘した。

  部門別で見ると、プロフェッショナル・ビジネスサービスが4カ月ぶりの大幅な伸び。このほか教育、医療サービス、製造業でも求人が増えた。

  レイオフは全体的な水準は落ち着いた状態が続いているが、運輸・倉庫では増加し、2020年6月以来の高水準となっている。

失業者1人に対する求人件数は1.4件で変わらずだった。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は非常に力強さを見せています。厳しいインフレや金融政策の中にあっても雇用は弱まることはなく、経済を支える原動力となっています。それ故にインフレ抑制という観点から見ればやや難しさを示すもの伴っており、なかなか複雑な状況かなという感じです。しかし、その中でも離職者が減少してきているというのは気になるところでしょう。求人がこれだけ増えているのにもかかわらず、離職者が増えていないということはそれだけ労働者がより良い職場を求めていないか、そのようなものを見つけられていないのかということなのかなと思います。もちろん他にも要因はあるとは思いますが、少なくとも離職者が少ないということはそれだけ賃金上昇圧力は低下するということになります。そうなればインフレ圧力は低下することになり、記事でも指摘されているように労働市場が起因となるインフレ低下が起こるのかもしれません。

確実なインフレ鈍化を確認するまで利下げはないだろう

相変わらず雇用は堅調のようですが、それでも労働市場は若干の弱さを見せ始めたのかなという感じです。離職者の減少は確実に賃金上昇圧力を低下させ、その結果インフレも緩和方向へと向かうことになるでしょう。そういう意味ではFRBとしては非常に喜ばしい状況なのかなという感じがします。しかし、依然として求人件数は高く、労働市場も力強く維持されていることを考えれば期待するほど緩和政策へと移行することはないような気もします。そういう意味で非常に判断が難しい状況になってきたのかなという感じです。個人的には現在の非常に慎重なFRBを考えるとこの程度ではまだ緩和へと舵を切ることはないような気はします。もう少しデータを得られてから利下げを実施するのではないでしょうか。

まとめ

今日は米国の求人件数について見てきました。非常に堅調に推移しながらも労働市場からもインフレ鈍化の兆候を感じ取れる内容となっており、順調にインフレ抑制は進んでいるような気はします。しかし、このデータを持って利下げが行われるかどうかは正直なんとも言えないのではないかという感じです。おそらくはもう少し自信を持って利下げが行われるまではその判断はされないのかなという印象です。