利下げどころか利上げの可能性すら指摘されるようになる

最近の強いインフレ指標の発表により、利下げ期待というのは大きく後退しました。そのため3月と見られていたり下げも5月や6月に予測を修正するという動きが多くなってきています。しかしながら、それでは不十分と利上げの可能性を指摘する声も出てきているのです。そういう意味では今後の金融政策の行方はますます不透明感が増しているような気がします。

利上げの可能性

先日、元財務長官のサマーズ氏はインタビューにて、今後の金融政策について以下のような発言をしています。

サマーズ元米財務長官は、最新のデータで明白に見られる根強いインフレ圧力は米金融当局の次の行動が利下げではなく、利上げになる可能性を示唆しているとの考えを示した。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「次の動きが金利の引き下げでなく、引き上げになる可能性はそれなりにある。恐らく15%程だ」と発言。「米金融当局は非常に慎重になる必要があるだろう」と述べた。

  今週発表された米国の1月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)はいずれも市場予想を上回る伸びを示し、市場では今後数カ月の利下げ観測が後退した。

  「単月の数字を過大に解釈するのは常に間違いで、季節性の計算が困難な1月は特にしかりだ」とサマーズ氏は指摘。「しかし、小さなパラダイムシフトの可能性を認識しなければならないと考える」と話した。ハーバード大学教授の同氏はブルームバーグテレビジョンに定期的に出演する。

  ここしばらくエコノミストの間では、住宅コストが全体的な物価指標の著しいデフレ要因になると予想されていたが、それはまだ実現していないと同氏は指摘。賃貸部門はさておき、持ち家のコストはデフレの様相を見せておらず、2024年を通じて価格圧力を持続させる可能性があるとの見方を示した。

  「気がかりな兆候はそれだけではない」ともサマーズ氏は発言。食品とエネルギー、住宅を除いたコアサービス価格が賃金上昇によって押し上げられていることがもうひとつの主な懸念だとし、「1月のスーパーコアが衝撃的だったように見えるのは確かだ」と同価格について語った。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は今後、利下げどころか利上げの可能性すらあるだろうと発言しています。その可能性は15%とはっきり言って大きな数字ではないと思いますが、そのような発言が出てくる事自体が大きなことだと言っていいでしょう。最近も強い経済指標の発表前にはこのようなことは誰も考えてはいなかったように思います。そういう意味ではここ数日で大きく金融政策を取り巻く環境は変わってきたような気がします。

不透明感がさらに増す

サマーズ氏の発言は非常に重要なものであろうと思います。現在の強い経済指標を考えればより確実にインフレを抑制するためにはさらなる引き締めが必要だろうと考える人が出ても何ら不思議ではないのかなと思います。もちろん、それが第一選択ということはありませんが、この状態が次回のFOMCまで継続されるようなことがあればそのような考えを巡らせるFRB関係者も出てきても不思議ではありません。実際、米国経済は予想していたよりも力強く、少々の引き締めにも十分耐えられるだろうと考える人もいるでしょう。そしてFRB関係者の多くは非常に慎重な物言いな人が多く、タカ派であろうとハト派であろうとインフレを抑制を第一に考えていることは間違いありません。そして何よりもデータを重視するという姿勢も一貫しています。そういう意味でも最近の強い経済指標が今後も継続するのであればその可能性も十分にあるのだろうと思います。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてきました。利下げどころか利上げの可能性すら考えられる状況になるという非常に不安定な状況となっていることは間違いないでしょう。しかし、今のところ一番考えられるものは現状維持です。おそらくは辛抱強く現在の金利水準を維持し、インフレが落ち着くまでじっくりと待つというのが最も考えられるシナリオであることは間違いないというところです。ただ、それ以外の可能性も十分あることであり、インフレをコントローするるということはそんなに簡単なことではないということは再認識する必要があるということです。