曖昧な雇用統計の結果がもたらすもの

今回の雇用統計の結果は強弱織り交ぜた内容だったように思います。しかし、それは私個人にとってであり、人によって捉え方は様々でしょう。そういう意味では今回の結果というのはかなり意見の乖離を生むような感じがします。実際、そのような指摘をする人も降り、ある意味危険性は高まっているのかなと思います。

人は思い込みで行動するもの

モハメド・エラリアン氏は先日、メディアのインタビューにて、以下のような発言をしています。

投資家は2月の米雇用統計を「良いニュース」と受け止めているが、雇用者数の数字は強弱まちまちで、金融政策当局者にとっては確固たるシグナルがほとんど得られなかったと、モハメド・エラリアン氏は指摘した。

  「要するに政策当局者や大半のエコノミストは、今回の統計をそれほど新しい情報を含んでいないとみるだろう」とエラリアン氏はブルームバーグテレビジョンで発言。一方、「良いニュースは良いニュースであり、悪いニュースも良いニュースだ」というのが現在の投資家の考え方だと述べた。

  今回の雇用統計では、雇用者数の伸びは健全さを維持したものの、失業率が2年ぶりの高水準に上昇した。労働市場はなお堅調だが、減速感も見られる。

  ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもある同氏は「これは曖昧な内容の統計だ」とし、「人々は自分が見たいものを見るだろう」と指摘。「状況の不確実性を伝えるエコノミストと、物事を全てポジティブと捉える市場の間の隔たりはさらに大きくなっている」と話した。

  今回の統計は相対的に強弱まちまちだったが、米国が他の主要国の大半をアウトパフォームしていることをなお示唆しているともエラリアン氏は指摘。ドイツと英国、日本は全て2四半期連続で経済が縮小するテクニカル・リセッション(景気後退)に陥ったほか、中国経済は苦戦していると説明した。

  その上で、「米経済の例外主義」というのがメッセージだと語り、「米国はまさに例外だ」と続けた。

引用:bloombergより

エラリアン氏はこのように述べ、今回の雇用統計の結果は非常に曖昧な内容であり、その捉え方には大きな乖離が生まれるだろうという指摘をしています。そのため、今後、投資家の間では大きな予測の乖離が起き、非常に不安定な状態になる可能性を指摘しています。たしかに今回の結果は非常に判断が難しい内容だったように思います。インフレが確実に落ち着いているという確証を得るには不十分ですし、かと言って労働市場が強いと言い切るにも不十分です。そういう意味では捉え方に大きなカイリが出てくる可能性は否定できないでしょう。そうなると今後の金融政策に対する予測についても大きなカイリが生まれてくることもあり得るでしょう。そうなると自分が思っても見ない動きを市場がする可能性が大きくなり、非常に難しい展開になることが予想されます。

原則を貫く

今回の結果については本当に判断が難しいと思います。その上で、エラリアン氏が述べていた「人々は自分が見たいものを見るだろう」という指摘は非常に重要なものだろうと感じています。人間は自分に都合の悪いものは見ようとしない修正がありますし、自分の都合のいいように物事を解釈しがちです。そういう意味で、今回の結果も真実がどうであれ、自分にとってはこうであってほしいというスタンスを投資家はそれぞれとっているのが現状でしょう。そしてその幅というのは思っているよりも広いのではないかという感じがします。それだけ今回の結果というのは非常に曖昧なものでした。そういう意味で現在のマーケットは非常に不安定な状態であろうと予測できます。なので今後は短期的に不安定な動きをする可能性も否定できないでしょう。他の経済指標にて、インフレの減速や加速などの確定的なものが出てくるまでは、非常に不安定な動きをするのかなという感じです。

まとめ

今日はモハメド・エラリアン氏の発言について見てきました。人間は自分に都合のいいように行動しがちです。頭ではわかっていても、眼の前に現実を見せつけられるとやはり正常な判断ができなくなるのはまさに人間である証拠であるのかもしれません。しかし、それで資産を失っては元も子もありません。そういう意味では何が起きようとも原理原則を守り、ブレずに淡々と投資をしていくのが最終的には良い結果をもたらすのだろうと思います。