FRB高官が相次いで利下げ時期の後退を予測する

4日は多くのFRB高官が各地で講演等を行いました。そのためその発言には多くの注目を集めたところです。内容としては概ね利下げには慎重であり、その決断にはまだまだ証拠が必要というものでした。そういう意味では利下げの時期というのはまだまだ遠く、そうすぐには起こるものではないのだろうというのが率直な感想です。

相次ぐ利下げ後退論

昨日は多くのFRB高官が現在の金融政策について発言をしていました。

米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、インフレ鈍化の進展が滞る場合、年内の利下げは必要なくなる可能性があると指摘。特に、経済が堅調を維持する場合はなおさらだとの考えを示した。

  カシュカリ氏は4日、リンクトインとのバーチャルイベントで、「私は3月時点では、インフレが当局の2%目標に向かって下がり続ける場合、年内に2回の利下げがあると予想していた」と発言。「インフレの横ばい推移が続くようであれば、そうした利下げを実施する必要があるのかどうか疑問が生じるだろう」と述べた。

  1月と2月のインフレの数字は「やや気掛かりだ」と同氏は指摘。インフレが当局の2%目標に向かっているとの確信を得るためには、利下げサイクルを開始する前に物価に関してさらなる進展を確認する必要があると話した。

米シカゴ連銀のグールズビー総裁は、年初に予想を上回るインフレ指標が示されたものの、物価の伸びが鈍化しているという全体像が変わることはないだろうと述べた。4日は多くの米金融当局者が講演などで発言する。

  グールズビー総裁は、イリノイ州オークブルックでのイベントで発言。1月と2月にインフレ面での進展が減速したとみられることについて、総裁は特に深刻視しない姿勢を示した。

  事前に配布された原稿でグールズビー総裁は、「それら2カ月のデータによりわれわれが目標へと戻る道から外れることはないだろう、というのが私の全般的な評価だ」とし、現在の経済活動は従来の需要過熱とは全く異なると付け加えた。

  総裁は、インフレ鈍化における財の価格低下の役割を指摘。新型コロナウイルス禍からの回復過程においてサプライチェーンが改善したことが背景にある。また総裁は、労働供給量の増加によりサービス価格の伸びは一段と鈍化する可能性が高いとの見解を示した。その上で、当面は住宅分野でのインフレが最も重要な指標になると述べた。

  「新規契約の家賃に関する市場のデータから見ると、これまでより速いペースで下がると予想している」としつつ、「もし下がらない場合は、全体のインフレ率を目標の2%に戻すのが非常に難しくなるだろう」と語った。

  リッチモンド連銀のバーキン総裁は、利下げをする前にインフレ軌道に関して一段の明瞭さを得るべく時間をかけることが、米金融当局にとって「賢明」だと述べた。

  リッチモンドのホーム・ビルディング・アソシエーションでの講演で、総裁は「誰もインフレ再燃を望んでいない」と発言。「労働市場の強さを踏まえると、金利引き下げプロセスを開始する前に雲が吹き払われるのを待つ時間はある」と述べた。発言内容は事前原稿に基づく。

  「金利をいくらか景気抑制的に維持することで、インフレを当局の目標に戻すことができると私は楽観している」とも語った。

  フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は同日、経済は底堅く雇用の伸びはなお力強いが、インフレは依然として高過ぎるとの見解を示した。

  ハーカー氏はペンシルベニア大学ウォートン校で行われた討論会で「現在の状況はあるべき姿ではない。インフレはなお高過ぎる。保有資産が限定され、所得も抑制されたALICEと呼ばれる世帯にとっては特にそうだ」と述べた。

引用:bloombergより

このように昨日は今後の金融政策について多くのヒントを得られる機会がありました。これらの発言は概ね金融緩和に対して慎重な姿勢と捉えて良いと思われ、市場が期待するような緩和政策へと力強く進む決意は聞かれなかったのかなという感じです。実際、インフレは予想以上に強く、今なお米国経済を苦しめています。そういう意味ではまだまだ利下げなど金融緩和を行う状況ではないことは明確でしょう。しかも、米国経済はそこまで悪くはなく、むしろ予想外に堅調であると言っていいような状態です。そういうことからも、利下げを急ぐ根拠というのは非常に乏しいと言っていいのだろうと思います。このような状況ではより確実なインフレ鈍化の証拠を得られてから利下げを行っても十分に間に合うだろうと判断するのは当然なような気がします。そういう意味ではまだまだ現状維持が続くと見ていいのでしょう。

今後もこの流れは続く

今回の講演でのFRB高官の発言というのは概ね予想の範囲内であったという印象です。インフレは依然として強く、引き締めを継続することを正当化するのに十分です。そして経済もそこまで悪化していることもなく、労働市場も堅調であり、雇用も安定しています。そういう意味ではこちらの観点からも金融政策を緩める理由にはならないでしょう。そういう意味ではより確実にインフレを抑制するべく金利は高く維持し続けるのが最良であるとの結論なのだと思います。これは当初より個人的に予想していた展開であり、今後も多かれ少なかれ予測は後ろへと修正されるのかなという印象です。それだけ今回のインフレは粘着性が高く、しつこく米国経済を苦しめることになるでしょう。そういう意味ではしばらくこの状態は継続されるのだと思います。

まとめ

今日はFRB高官の発言について見てきました。利下げはまだまだ先の話となりそうです。これまで何度も述べてきましたが、今回のインフレは非常に粘着性が高く、そう簡単には落ち着くことはないでしょう。おそらくは今後もより終着点が後方へと修正され続けていくものと思われます。そういう意味ではまだまだインフレとの戦いは続きそうな感じがします。