3月の雇用統計も非常に堅調な結果。利下げはさらに遠ざかる。

米国の労働市場は引き続き堅調です。昨日発表された3月の雇用統計の結果は大幅な増加となり、労働市場は依然として力強さを見せていることが確認されました。雇用がこれだけ力強いということで物価圧力がまだまだ続いていく可能性が十分に考えられ、金融政策を緩める根拠とはとてもではありませんがならないような状態です。

労働市場は引き続き堅調

昨日発表された3月の雇用統計は市場予想を大きく上回り、大幅な上昇となりました。

3月の米雇用者数はほぼ1年ぶりの大幅増となり、失業率は低下した。力強い労働市場が景気を押し上げていることを示した。

  非農業部門雇用者数は過去2カ月分が合わせて2万2000人上方修正された。3月の増加数はブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の全予想を上回った。

  3月の雇用増は、ヘルスケアや娯楽・ホスピタリティー、建設業がけん引した。雇用が増えた業種と減少した業種との比率を示す雇用DIは上昇した。

  BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「米国の労働市場は、減速するどころか強さを増しているようで、金融緩和を遅らせるリスクがある」とリポートで指摘した。

  労働市場は高い物価と借り入れコストに直面する消費者に支出を続ける余力を与え、米経済の支えとなってきた。この日の雇用統計は、どの程度実際に雇用市場が緩和しているのか疑問を投げ掛ける可能性がある。

  来週には消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の発表があり、4月30日-5月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合の前には3月の個人消費支出(PCE)価格指数の発表もある。 

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、スチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー、エステル・オウの3氏は「3月の雇用統計は総じてポジティブなサプライズとなった。雇用者数や労働参加率、平均週給などは全て予想を上回った。これは金融当局がインフレ対策に忍耐強く取り組み、最初の利下げをさらに遅らせる可能性を高めている」と指摘した。

  雇用統計は2つの調査で構成されている。1つは従業員数と賃金のデータを作成するための企業を対象とした事業所調査で、もう1つは失業率データの基になる家計調査。規模は後者の方が小さい。

  家計調査の就業者数は50万人近く増加した。2月までは3カ月連続で減少していた。新規失業保険申請件数や個人消費支出など他の経済指標がなお強い内容となっていため、多くのエコノミストは家計調査に基づく就業者数の最近の弱さを重要視していない。

  労働参加率は昨年11月以降で初めて上昇し、62.7%になった。25-54歳の年齢層では83.4%に低下したが、なお20年ぶりの高水準近くにある。

  労働参加率の上昇は賃金圧力の緩和につながる可能性もある。事業所調査に基づく平均時給は前年同月比で4.1%増と、2021年半ば以来の低い伸びとなった。

  週労働時間は34.4時間と、前月の34.3時間からわずかに増えた。

  「U6」と呼ばれる不完全雇用率は前月と同じ7.3%。21年12月以来の高水準にとどまった。U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる。

  黒人の失業率は22年8月以来の高水準となった。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は依然として堅調です。労働市場はこれまでも市場予想を裏切る形で強さを見せ続けてきましたが、その強さは今も健在であることが改めて確認された形です。このため、金融政策も引き続き引き締めが継続することが予想され、金利の高止まりが続くことでしょう。そういう意味では利下げ予想というのはさらなる修正を求められるのかもしれません。

利下げ予想はさらなる修正を迫られる

予想通りといえば予想通りですが、改めてその事実を突き付けられると本当に感心するような事態です。米国の労働市場は非常に強固であり、おそらくはそう簡単には軟化しないのでしょう。ここまで厳しいインフレや金融引き締めにあっても強さを見せる労働市場は弱らせる方法というのはそう簡単にはないような気がします。このような現実を前に利下げ予想というのはおそらくは修正されていくのでしょう。これまでは6月には利下げがあるのではないかという予想が大半でしたが、その実現にはかなり厳しさが出てきたような気がします。6月まではあと2ヶ月しかありません。現状、これだけ強さを見せるインフレを前に2ヶ月で利下げを決断させるのにはよほどの経済的な失速などが今後の短期間で起こる必要があり、なかなか厳しい状況になってきたような気がしています。

まとめ

今日は3月の雇用統計について見てきました。労働市場は依然として堅調です。物価圧力も依然として健在であり、おそらくは多くの利下げ予想はさらなる修正を迫られるのでしょう。そういう意味では個人的には予想通りの展開ですが、マーケットとしてはあまり喜ばしくない状況になってきたのかもしれません。