ベージュブックは米国経済の弱さを指摘するようなものだったような気がする

力強さを維持し続ける米国経済ですが、その実態はやや違うのかもしれません。昨日公開された米地区連銀経済報告、いわゆるベージュブックによると米国経済は最近の経済指標が表すほどに強くない可能性を示していることがわかりました。インフレは依然として強く、個人消費も引き続き旺盛ではありますが、その実態は非常に危うい現実なのかもしれません。

やや弱さを見せたベージュブック

昨日発表された米地区連銀経済報告によると、米国経済の現状は以下のようになっています。

米地区連銀経済報告(ベージュブック)は、米経済が2月下旬以降「わずかに拡大」したほか、企業のコスト転嫁がさらに難しくなったと指摘した。連邦準備制度理事会(FRB)が17日公表した。

  報告書では「個人消費は全般的に辛うじて増加したが、地区や支出項目によってかなりまちまちだった」と指摘。「消費者は依然として物価にかなり敏感で、裁量支出の弱さに言及した報告もいくつかあった」とした。

  「企業の価格転嫁能力がここ数カ月でかなり弱まったため、利益率が低下しているとのコメントも多く寄せられた」という。

  今回の報告は、12地区連銀が4月8日以前に収集した情報を基にボストン連銀がまとめた。

  報告書の内容は、米経済の力強さを示唆する最近の経済データとは幾分異なるものだった。 

  報告書は「物価上昇は平均して小幅だった」と記述。原材料コストはまちまちだったが、約半数の地区がエネルギー価格の上昇に言及した。保険料の上昇を指摘する声もあった。コスト上昇分を消費者や顧客に転嫁することが難しいため、利益率が圧迫された。

  「調査対象企業は総じて、インフレが今後も緩やかなペースで安定的に推移すると予想した。一方で、数地区では製造業を中心に、投入価格と産出価格の両方について短期的なインフレ上振れリスクを認識している」と指摘した。

  大半の地区では、労働力の供給増加と人材を維持する能力が改善したとの報告が寄せられた。雇用市場の減速と賃金による物価押し上げ圧力の緩和を示唆している。

  「複数の地区が年間賃金上昇率が最近、過去の平均に戻ったと指摘した」と報告書は記した。

引用:bloombergより

このようにベージュブックでは米国経済の現状についてやや弱さを指摘するような内容となっています。もちろん、最近の経済指標の強さが表すように、米国経済が弱体化しているということではないでしょう。予想外に強さを見せていることには違いありません。しかし、その実態は非常に危ういものであり、その姿というのはかんたんに崩れる可能性があることを示しているようなものでした。消費者は物価上昇についてはかなり敏感であり、拡大する消費ほどにはそれを許容しているようではないようです。企業もその上昇コストを添加することができず、利益を圧迫し続けているということで、その影響はそう遠くない将来に現れてくることでしょう。そういう意味では今の好調な経済というのはそう長くは持たないのかもしれません。

予想外の急変に注意

ベージュブックでは予想外に米国経済の弱さが際立ったもののように思います。最近の経済指標を見る限り、米国経済はインフレは高金利の影響もものともせず、力強さを見せていました。しかし、それはかなり無理をしているのが実態であり、その無理というのはそう長くは続かない可能性をベージュブックは示唆しているように思います。そういう意味では今後、急激に経済状態が悪化したり、思わぬ急変が起こることもあり得るでしょう。特に最近は株価が急激に上昇してきています。このようなときはなんかしらのきっかけで株価が急反転するということもよくある話です。そうなればさらに消費や企業活動にも悪影響が出てきて、更に株価が下がるという悪循環に突入するリスクもあるでしょう。今の所、そこまで考えるのは行き過ぎなような気もしますが、ベージュブックの内容を見る限り、その危険性というのも小さくはないのかなという感じです。

まとめ

今日はベージュブックの内容をもとに、今後の展開について考えてきました。米国経済は見た目以上に悪化している可能性があるのかもしれません。もちろん、それは可能性であり、どうなるかはわかりませんが、そのリスクがやや大きくなってきたというところかなと思います。そういう意味では今後の経済指標などの発表で、それらが意識されていく可能性についても考慮しておくべきなのかもしれません。