ADPの雇用者数は堅調な結果となった

米国経済は不確実性を増しては来ていますが、労働市場についてはいまだ堅調に推移しているようです。ADPリサーチ・インスティテュートが発表した9月の民間雇用者数ではいまだに雇用は安定していることが判明しました。物価も上昇し、金利の高止まりも予想され、景気も先行き不透明という中、雇用だけはまだまだ順調なようです。これがいいのか悪いのか何とも言えませんが、少なくとも現実はこうだということです。というわけで今日はADPリサーチ・インスティテュートによる9月の民間雇用者数についてみていきます。

ADPの雇用者数は堅調な結果となった

5日にADPリサーチ・インスティテュートが発表した9月の米国の民間雇用者数は市場予想を若干上回り、依然として雇用は堅調であることが確認されました。

ADPリサーチ・インスティテュートが発表した9月の米民間雇用者数は堅調なペースで伸びた。景気の不透明感にもかかわらず、労働需要は健全な状況が続いていることが示唆された。

  労働需要には幾らか鈍化の兆しも見られるが、ADPのデータは労働市場が依然として力強いことを浮き彫りにしており、失業の急増を引き起こすことなく数十年ぶり高インフレの抑制を目指す米金融当局の取り組みを複雑にしている。

  9月は民間雇用者数の伸びの4分の3近くを貿易・運輸・公益分野での雇用増加が占めた。一方、製造業や鉱業では減少した。金融業の雇用も減り、2020年12月以来の低水準となった。

  統計では賃金の伸びに関する新たな情報も示され、転職した人の給与は1年前から15.7%増加。職を変えなかった人の賃金の伸びは7.8%だが、増加率は少なくとも2年ぶりの大きさだった。職を変えなかった人の賃金増は大企業が中心だった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「着実な雇用の伸びが引き続き見られる」と発表文で指摘。「職を変えなかった人の賃金が増えた一方で、転職者の年間ベースでの賃金の伸びは9月、前月からは減速した」と続けた。

引用:Bloombergより

このように米国の労働市場は依然として健康のようです。最近の経済状況などを見るとそろそろ労働市場も減速をするのではないかと思っていましたが、まだその時ではないようです。

米国の労働市場は相変わらず堅調

労働市場は依然として堅調であることが確認されました。ただ、今週末に発表される雇用統計がどうなるかということは気になるところです。同じような指標ですが、その結果が必ずしも同じような結果となるということはありません。過去にも二つの結果があまりにもかけ離れていて市場が動揺したということは何度もあります。そういう意味では雇用統計の発表まではあまり安心はできないかもしれません。

FRBにとっては朗報だろう

今回の結果は市場にとっていいのか悪いのかということは何とも言えないところです。雇用が安定しているということは少なくとも悪いことではないはずです。しかし、それはFRBにとって金利を引き締める良い材料にもなりえるため、今後の先行きについて株式市場は悲観的になるかもしれません。事実、最近は景気後退の雰囲気が出てきているせいか、FRBの金融引き締めが緩まるのではないかという憶測から株式市場が上昇するというような現象も起きています。このように市場は未来を予想して動くために今回の安定した雇用というのがどのように作用するかというのは何とも言えないところです。

なぜここまで楽観的になれるのか不思議

それにしても少し経済の見通しが悪くなったからといってFRBの金融政策が緩むという憶測で株式市場が動くというのは何とも変な話という印象です。確かに少し景気の先行きに対して不安要素は大きくなって吐きていますが、それだけでFRBが金融政策を変更するということはないでしょう。ジャクソンホールではパウエル議長があれだけはっきりと引き締めを行うと発言し、そのあともFRB関係者からはインフレ抑制のための手を緩めるべきではないという発言が相次いでいます。そのことを考えるとこの程度で金融政策の変更というのはさすがに楽観的過ぎやしないかと思います。最近の株式市場はちょっと楽観的過ぎる気がします。あまりに自分たちに都合のいいように出来事をとらえすぎです。そんなに簡単にインフレは落ち着いていかないでしょうし、FRBもよほどのことがない限り引き締めの手を緩めることはないでしょう。そういう意味では今後も楽観的な株式市場が一時的に上昇しては暴落するということを続けながらゆっくりとリセッションへと突入していくのだろうと予想しています。

まとめ

今日はADPのリサーチをもとに今後の経済について考えてみました。雇用に関して言えば本当に米国は堅調であるという印象です。正直ここまで引き締めを行い、経済状況も悪化してくれば雇用にも影響が出てくると思っていたんですが、そうではありませんでした。これはインフレ抑制を目指すFRBにとっては朗報となるでしょう。雇用が安定しているのであればインフレ抑制に全力を注ぐことができるはずです。しかし、毎度のことながら市場の楽観思考には疑問符を付けざるを得ません。どう考えてもそんなに簡単に金融政策が変更されるとは思えませんが、なぜそこまで楽観的になれるのでしょうか?本当に不思議としか言えません。