バフェット氏はもう過去の人なのか

11月17日、日経新聞に「バフェット氏は指数に勝てたか SECへの報告書を分析」という記事が掲載された。ウォーレン・バフェットはご存じの通り、世界でもっとも著名な投資家の一人です。そのためその投資成果にはいつも注目されています。今回の記事も米証券取引委員会に提出された保有銘柄報告書をもとに記事が書かれていました。個人的にも最も尊敬している投資家の一人であり、非常に興味がある話なので、今日はこの記事についてみていきたいと思います。

記事の概要

まず報告書の内容をまとめると以下のようになります。

  • 現在の保有銘柄は41銘柄
  • 7~9月期のパフォーマンスは0.78%と冴えない
  • ポートフォリオに占める株式の割合は66.2%と高水準

現在は41銘柄を保有ということで、前回よりも1銘柄減少ということになりました。これを見るとあまりポートフォリオをいじっていないように見えますが、銘柄の入れ替えはそれなりに行われています。今回ポートフォリオから外れた銘柄は

  • メルク
  • リバティ・グローバル
  • オルガノン

の3銘柄です。オルガノンはメルクからスピンオフされた銘柄なので、実質的にはメルクとリバティ・グローバルの2銘柄という感じでしょうか。そして今回ポートフォリオに加えられたものは

  • フロア・アンド・デコア・ホールディングス
  • ロイヤルティ・ファーマ

の二つということです。これらについてなぜ外したり加えたりしたのかということはよくわかりません。もちろんそんなことは報告書に書く必要はないでしょうから本当のところはバフェット氏しかわからないでしょう。私もこの中ではメルクくらいしか知りませんでした。メルクは最近新型コロナウィルスの治療薬についてのニュースが発表されていたので、話題にもなった銘柄です。しかし、それを放出してしまうというのはあまりいいニュースとみていなかったのでしょうか。まあ、バフェット氏はそのような短期売買をする人ではないので、そういう短期的な話には興味はなかったのでしょう。

バフェット氏は長期投資家ではない?

しかし、長期保有のイメージがあるバフェット氏ですが、意外と短期間で株を売却してしまうことは有名な話です。2000年以降、確認できるだけで179銘柄もの株式を保有していたことがあります。しかし、多いときでも最大49銘柄しかもっていなかったということなので、結構頻繁に株式の売却はしているということになります。この辺はイメージとはかなり違う印象です。さらに20年以上も継続して保有しているのは、コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、ムーディーズ、プロクター・アンド・ギャンブル、ウェルズ・ファーゴの5銘柄だけですが、プロクター・アンド・ギャンブル、ウェルズ・ファーゴの2銘柄はすでに大半を売却したため、実質では3銘柄にすぎないのです。それだけ優れた投資をするということは難しいということなのかもしれません。

個人では絶対に真似しないほうがいい

現在41銘柄を保有しているとなっていますが、当然保有割合は均等ではありません。その88.%はわずか10銘柄だけで構成されており、さらに42.8%はアップルが占めるという非常に珍しい構成になっています。バフェット氏は以前から分散投資よりも数銘柄に集中して投資した方がよいといっていました。普通はリスクを分散させるためにもある程度の銘柄に分けた方がいいとは思いますが、バフェット氏は全くそんなことはしません。それだけ自分の投資について自信を持っているということなのでしょう。まあ、万人向けの投資方法でないことは確実です。我々のような個人投資家は企業活動に常に気を配っていることはできませんから、素直に分散投資をした方がいいと思います。実際バフェット氏も、個人投資家はS&P500のような指数に投資するだけでよいというようなことを言っていたような気がします。

評価は人それぞれ

今期のパフォーマンスは冴えないと最初に言いましたが、視点を変えれば違ったように見えてきます。以下の図はある過去の時点から現在までのパフォーマンスを比較したものです。

引用:日本経済新聞 バフェット氏は指数に勝てたか SECへの報告書を分析より

右に行けば行くほど長い期間のパフォーマンスということになります。最近はS&P500に近いパフォーマンスを出していますが、その前はかなり劣ったものとなっています。このあたりではバフェット氏に批判的な意見が出てきたりとしていましたが、これを見ればそれがよくわかります。しかし、20年程度の長い期間で見ればまだまだバフェット氏のほうがパフォーマンスが上回っています。このように、どこを起点とするかによって評価は大きく変わってくるのです。これをどう評価するかは人によって様々でしょう。特に最近はGAFAをはじめとしたグロース株が大きく伸びているので、バフェット氏のようなバリュー投資はあまりうまくいっていないのも仕方がないのかもしれません。

個人的な感想

私の投資スタイルも長期保有のバリュー投資なので、バフェット氏の投資方法はとても参考にしてます。しかし、流石にここまで偏ったポートフォリオは組む勇気はありません。資産のほぼ半分を一つの銘柄にすぼるなど、よほどの確信がなければできないでしょう。まさにプロのやり方と言った感じです。私はあくまで小さな個人投資家ですから、おとなしくこれからも分散投資をしていくつもりです。尊敬してるからと言って完全に真似るということはしません。バフェット氏の投資方法についていろいろ言われますが、基本的なことはやはり間違っていないと思います。「安いものを買って高いものを売る」これは投資に限らずどこの世界でも当たり前のことでしょう。一時期においてパフォーマンスが冴えないからと言って、その手法が終わったとか間違っているということは言えないと思います。今はグロース株が主流になっているのであまり評価されないかもしれませんが、のちにまたバリュー株投資が評価されるときが来るはずです。そのときになればまたバフェット氏の評価も変わるはずです。

まとめ

今回はバフェット氏に関する記事について個人的な感想を述べてみました。非常に特徴的なポートフォリオを組んでいるので正直参考にはなりませんが、投資の考え方自体はとても自然で当たり前のことをしているなということです。安いものを買って高いものを売る、基本ですね。今は市場にとてもお金が溢れていることもあり、グロース株が非常に好調です。しかし、この流れがいつまでも続くことはないでしょう。もしかしたら今後、強力な調整局面を迎えるかもしれません。そうなったときはグロース株投資よりもバリュー株投資のほうがいいパフォーマンスを出すのではないでしょうか。個人的にはその時期はもうすぐそこなのではないかと思っています。そのくらい最近は市場に資金が溢れているからです。FRBもそろそろ利上げをしそうですし、その可能性は十分にあると思います。それに備えて今から準備をしておくのが懸命でしょう。