予想通りFRBはFF金利を0.5%上昇。今後は景気よりもインフレに焦点を当てていくと思われる。

5月の3日から4日にかけて、市場が注目していたFOMCが開催されました。結果としてはFF金利の誘導目標を0.5%引き上げるという結果となり、特別大きなサプライズはないものでした。また、保有する資産圧縮にも6月から着手すると発表しており、よりインフレに対して厳しい姿勢で臨んでいくことが確認されました。そういうわけで今日は先日行われたFOMCについてみていきたいと思います。

一段と難しい対応を要求されるFRB

現在の米国経済は一部弱い動きもみられますが、引き続き堅調であるとの見解が示されました。

 全体的な経済活動は第1・四半期にやや落ち込んだが、家計支出と企業の設備投資は引き続き堅調だった。雇用の伸びはここ数カ月間堅固で、失業率は著しく低下した。インフレ率はパンデミックに関連する需給の不均衡、エネルギー価格の上昇、より広範な価格圧力を反映し、引き続き高止まりしている。

引用:ロイターより

労働環境は引き続き堅調を維持しています。しかし、需要に対して供給が追い付いていない状態は相変わらずであり、企業にとっては賃金コストの上昇は頭の痛い問題でしょう。特に中小企業ではそのコストを転嫁できなかったりという事態が起きる可能性も否定できません。今のところ大きな動きはありませんが、今後インフレが続いていくようであればこの問題も無視できなくなると思われます。ロシアによるウクライナ侵攻もインフレに大きな影響を与えていることも間違いありません。いずれ事態は収束するとは思いますが、ロシアを国際社会から排除するという動きはなくなるとは思えず、そうなるとエネルギーなどの資源価格は高止まりする可能性も十分にあります。このようにインフレが高止まりする可能性が高い中にあっても将来に対する不透明要素も非常に多く、大変難しいかじ取りがFRBには要求されていると思います。

予想通りの結果だが、よりタカ派へとシフトした姿勢が鮮明となる

そのような中でFRBは0.5%の利上げを決定しました。これほど大幅な利上げというのは22年ぶりのことであり、それだけ異常な事態が起きているということがよくわかります。資産圧縮についても6月より始めるとの発表があり、本格的なインフレ退治の動きが始まったとみていいでしょう。

委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。金融政策姿勢の適切な引き締めにより、委員会はインフレ率が2%の目標に戻り、労働市場が引き続き堅調であると予想する。これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.75─1.00%に引き上げることを決定し、目標誘導レンジの継続的な引き上げが適切になると予想する。さらに、この声明と併せて公表された「連邦準備制度のバランスシート規模縮小計画」で説明している通り、委員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担保証券の削減を6月1日に始めることを決めた。

引用:ロイターより

この結果については大きなサプライズはなかったのではないかと思います。事前に0.5%の利上げの可能性についてはパウエル議長も述べていたし市場関係者の多くも口にしていました。資産圧縮についても同様です。なので予定通り進んでいくのだなという印象を与えたのではないかと思います。ただ、今回の声明文の中に「米連邦公開市場委員会(FOMC)はインフレリスクに非常に注意を払っている(the committee is highly attentive to inflation risks)」という一文が追加されたことが、やや注目されています。この一文が追加されたことにより、よりFRBがインフレに対して強い姿勢で臨んでいくという決意を示したように思えます。これが市場関係者の思惑と一致しない可能性があります。おそらくはFRBは少々の景気後退は仕方ないと思っているのでしょう。それほどインフレがきびしいということもありますが、この一文の追加によってその姿勢を市場に示したといっていいような気がします。そのため、今後年後半から来年にかけて、景気後退局面に入るリスクは高まったのではないかと思います。仮にそうなったとしてもおそらくFRBはよほどのことがない限りそれに対処しないでしょう。それよりもインフレ抑制に動くはずです。そういう意味では今後はやはり株価はやや軟調な推移が予想されると思います。

まとめ

今日は先日行われたFOMCについてみてきました。結果としてはおおむね予想通りですが、ややFRBの姿勢がインフレ退治に積極的に触れたように思います。まあ、わかっていたことといえばそれまでですが、それが文章として示されたことでFRBの強い意志が感じられるものとなっています。そういう意味でも株式市場としてはこれから厳しい状況を迎えることになるでしょう。仮に株価が下落してももうFRBは助けてくれなくなったということです。なので今後はあまり株式市場の強い動きというのはなかなか期待できないのではないかと思います。