FRBのコミュニケーション能力を疑問視する動きが出てくる

最近はマーケットが過度な楽観論による上昇や下落というのを繰り返しているように思えます。これは何も今に始まったことではなく、これまでも何度も起きていることです。なのでいまさらという感じもしますが、それでも人は学習しないのだなという印象はしてしまいます。そういう意味でも金融当局には投資家が冷静な行動をとれるようにきちんとしたコミュニケーションをとった方がいいのでしょう。そのような指摘が最近相次いでいます。非常に大切なことだと思うので今日はそのことについて考えます。

FRBのコミュニケーションを批判

最近の金融当局者の動きについて、独アリアンツの首席経済顧問モハメド・エラリアン氏はやや軽率な言動だったという旨の発言をしています。

独アリアンツの首席経済顧問モハメド・エラリアン氏は2日の米雇用統計発表後の株安など、最近の金融市場での荒い値動きについて、米金融当局者にとって一段の教訓になるとみている。

  エラリアン氏はブルームバーグテレビジョンで、「またもや米金融当局のコミュニケーションが市場での過度なボラティリティーを助長した」と指摘。「パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今週の講演でことさらバランスを取るよう務めた」ものの、「市場で既に進行していた著しい上昇を押し返すことは全くしなかった。インフレへの警告など他のことには言及したが、市場の振る舞いという側面を理解していなかった。そのため、こうした過剰反応が見られた」と述べた。

  同氏はグラマシー・ファンズの会長でブルームバーグ・オピニオンのコラムニストも務める。

  また、ブラックロック・ファイナンシャル・マネジメントのグローバル債券担当最高投資責任者リック・リーダー氏も同じくブルームバーグテレビジョンで、市場の動きは「やや行き過ぎだ」と指摘した。

引用:Bloombergより

このようにエラリアン氏は述べ、FRBはマーケットとの適切なコミュニケーションが欠けているとの指摘をしています。先日の雇用統計の発表では市場予想を大きく上回る結果であったために、マーケットは大きく動揺しました。そのために予想外に大きな痛手を負った人も多くいたのではないかと推測できます。そういう意味では今回の事態というのはきちんと検証しないといけないのかもしれません。では、なぜこのようなことが起こったのかといえば、消費者物価の鈍化を受けてインフレが収まったのではないかという観測が出てきたためであり、さらに当局者もそれを後押しするような発言をしていたためだと思います。そのために株価は上昇し、マーケットの期待は大きく膨らむことになりました。しかし、雇用統計の結果によってその期待は完全に吹き飛んだのです。これは結果論になりますが、もし弱い消費者物価を受けた後に、もう少し慎重な発言を当局者がしていたのであればマーケットはここまで大きく上昇はしなかったでしょうし、今回のような動揺は起こらなかったでしょう。そういう意味ではもう少しFRBは慎重な対応をした方がよかったのだろうと思いますし、エラリアン氏らもそのように感じているのでしょう。

いつもの光景

今回のことについてはエラリアン氏の言い分は全く持って正しいといっていいと思います。相次ぐインフレ鈍化の兆しを受けてパウエル議長をはじめとしてFRBからは多くの金融政策の変更の可能性を示唆されることになっていました。ただでさえ、先行きに対する期待が高まっていたところへこのような発言が重なれば、その期待はさらに高まることになるでしょう。そういう意味ではもう少し慎重に事を運んだ方がよかったのかもしれません。ただ、FRBにしてもインフレが終息したというようなことを断言したことはなく、あくまで可能性の話をしているだけなので、それを多少におわせただけで悪者扱うされるのは少々かわいそうな気がします。逆に、あまりに慎重になりすぎてインフレが終息しているのにもかかわらず、そのようなことをしなかったらそれはそれで批判を受けたはずです。そういう意味でもFRBにはもう少し慎重は行動をしてほしいものですが、責任のすべてを押し付けるというのは少々かわいそうな気がします。安易な楽観論に飛びついたマーケットにも大きな責任の一端はあると思います。

まとめ

今日は先日の雇用統計発表後のマーケットの動揺についてみてきました。今回のようなことは何度も言いますがいつも起こることです。マーケットは常に先走った行動をし、そして失敗します。なので今後もこのようなことは出てくるでしょうし、そのたびにFRBは批判されることでしょう。そういう意味ではFRBもかわいそうだなとは思いますが、それも仕事の一つです。何とか頑張ってもらうしかありません。懸命な投資家でありたいと思うのであれば周りに流されず、きちんと自分で考えて行動をすべきでしょう。そうでなければいつか大けがをすることになると思います。