パウエル議長の講演が行われたので、改めて今後の金融政策について考える

為替市場では円安が進み、景気の先行きについて不透明感が出てきていますが、金融政策については変更の可能性は非常に低いといっていいのかなと思います。先日、FRBのパウエル議長が講演し、インフレを抑制するための強い意志を示しました。やはり今は成長よりもインフレ抑制を第一に考えているということは間違いなさそうです。というわけで今日は先日行われたパウエル議長の講演についてみていきます。

パウエル議長が講演で発言

8日にワシントンで行われた講演でFRBのパウエル議長が講演し、インフレ抑制のために今後も金融政策を緩めるべきではないという強い意志を示しました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレ抑制の「任務が完了するまで」金融当局が尻込みすることはないと言明した。今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で3会合連続となる大幅利上げを決定するとの見方が一段と強まりそうだ。

  ケイトー研究所が8日にワシントンで開いた金融政策関連会議で、パウエル議長は「われわれはこれまでと同様、直ちに、真っすぐに、力強く行動する必要がある」と指摘。「同僚と私は、このプロジェクトに強くコミットしており、根気強く続けていく」と述べた。

  13日には重要なインフレ指標である8月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の中央値では、前年同月比で8.1%の上昇が見込まれている。7月は8.5%上昇だった。

  パウエル議長は「金融当局には物価安定という責務があり、それを引き受けている」と説明。歴史は時期尚早な政策緩和を戒めていると指摘し、8月26日にジャクソン・ホール会合で述べた警告を繰り返した。

  複数の金融当局者によるタカ派発言を背景に、市場ではFOMCが再び大幅利上げに動くとの見方が強まっていた。欧州中央銀行(ECB)が8日に75bp利上げを決定した後も、米国の大幅利上げ観測は継続。金利先物市場では、9月会合での75bp利上げがほぼ完全に織り込まれたことが示されている。

  パウエル氏は「労働市場において需要は依然極めて強い。雇用者数は高い水準での伸びがなお続いており、賃金は高止まりしている」と指摘。「われわれは政策介入により、経済成長が潜在成長率を下回る期間を得たいと考えている。それにより、労働市場はより良いバランスを取り戻し、賃金は2%のインフレ目標とより整合した水準へと下がっていく」と説明した。

  「インフレ期待を抑制し続けるのは非常に重要だ」と議長は強調。そうした状態の継続を確実にするという点で「時間は刻々となくなりつつある」と述べた。

  議長は「インフレが目標を大きく上回る期間が長引けばそれだけ、国民が経済的な意思決定にインフレ高進を自然と組み入れ始めるという懸念は大きくなる」とし、「われわれの任務は、それが起こらないようにすることだ」と語った。

引用:Bloombergより

パウエル議長はこのように述べ、今後もインフレ抑制のために厳しい金融政策を実施していく決意を改めて示しました。FRBの金融政策については一時、景気後退を示唆する経済指標が相次いだことから緩む可能性について期待する声が上がっていました。しかし、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言を受け、その観測は完全に消し飛んだ形となっています。そして今回の発言もそれと同様の内容であり、改めて強い姿勢でインフレに対峙していく決意を示したものとなっています。発言の中にもあるように、米国の労働市場は依然堅調を維持しています。各種経済指標は悪化してきていますが、雇用に関してみてみれば米国はまだまだ堅調といっていいでしょう。そういう意味ではFRBはそこまで金融緩和という方向には動かない可能性が高いと思われます。現在のインフレを抑制するにはある程度の痛みが伴う必要性もあり、そういう意味では労働市場が堅調ということを見ても金融政策を緩めるという判断にはならないといっていいでしょう。そういう意味では今後、企業業績が悪化したとしてもFRBの支援というのはかなり期待できないといっていいのかなと思います。そういう意味では株式市場も自分の力だけで動いていくしかなく、上昇する勢いというのはかなり弱くなるのだろうという印象です。

まとめ

今日は先日行われたパウエル議長の発言についてみてきました。今回の発言については特別新しいものはないといった印象です。ジャクソンホール会議以降、特別大きな動きもなかったので当然といえばそうかもしれませんが、改めてFRBの姿勢を確認する機会になったと思います。今後も高いインフレと厳しい金融政策が続いていくために米国経済もさすがに減速せざるを得ないのだろうという印象です。FRBは何とかソフトランディングをしようとしていますが、なかなか厳しいのではないかと思っています。そういう意味ではある程度の覚悟はしておいた方がよさそうです。