今後の金融政策は時間との勝負?

FRBによる金利引き上げはこれからも続くと思われますが、この先どのような展開になるのか非常に気になるところです。そんな中、FRB関係者から相次いで今後の金融政策についての発言がありました。それを見ると、今後も金利の引き上げは続くと思われますが、その期間というのはそこまで長くはないのかなという印象です。そういうわけで今日は今後の金融政策について考えていきます。

ブレイナード副議長はやや慎重な言い回しをしたような気がする

FRBのブレイナード副議長は先日行われた講演で、金融政策についてやや慎重な発言をしました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長は、高インフレ抑制に向けて積極的な利上げを続ける上で慎重な姿勢で臨むことが重要だと指摘した。世界経済や金融環境の不透明感が強い時期において、これまでに実施した利上げはまだ経済に効果を及ぼす過程にあると説明した。

  副議長は10日、シカゴで全米企業エコノミスト協会(NABE)向けに講演。事前に配布された原稿によれば、「慎重にデータ次第の姿勢で前進することで、経済活動と雇用、そしてインフレがこれまでの利上げにどう順応しているかを知ることができ、それが政策金利の道筋に関するわれわれの判断を伝えることにつながる」と説明。「インフレ率が時とともに目標に戻ることを確実にするため、金融政策はしばらく抑制的なものになる」と述べた。

  ブレイナード副議長は、世界の中央銀行が同時に引き締めに動いており、米国外での需要減退が米国に跳ね返ってくる恐れがあるとの認識を示した。

  金融政策の効果を巡っては、「一部の分野で効果が見られ始めているが、これまでの引き締めによる累積効果が経済全体に伝わり、インフレが鈍化するまでにはしばらく時間がかかる」とし、「不透明感はなお強い。私は世界的なリスクだけでなく、見通しがどう変化するかにも細心の注意を払っている」と述べた。

引用:Bloombergより

このようにブレイナード副議長は述べ、金融政策は今後はやや抑制的なものになると述べました。これだけインフレが高止まりし、雇用も安定しているという状況からある程度引き締めを重視していくと思われましたが、やや慎重な言い回しが目立った印象です。もちろんインフレに対して毅然とした対応をすることは間違いないでしょうし、データを慎重に分析すると述べていることから状況次第で柔軟な対応をするという意味だと思います。なのでこの発言をもってタカ派だとかハト派だとは言えないのではないかと思います。何度も言いますが今後のデータ次第で柔軟に対応していくということです。しかし、これまでは比較的タカ派な意見が多く聞かれた中ではやや慎重な言い回しのような気はしました。もしかしたら最近の経済状況を見て金融政策に柔軟性を持たせようとしているのかもしれません。

エバンス総裁も利上げのリスクに言及

このほかにもシカゴ連銀のエバンス総裁が行き過ぎる利上げのリスクについて言及しました。

米シカゴ連銀のエバンス総裁は、利上げが行き過ぎるリスクを低減するため、金融当局は安心して休止できる水準まで政策金利を早急に引き上げる必要があるとの認識を示した。

  エバンス総裁は10日のシカゴでの講演で、「中立金利を大幅に下回っていたことを考えると、利上げの前倒しは良い政策だった。しかし、オーバーシュートも犠牲が大きく、経済への抑制的な政策が実際にどの程度になるべきかを巡り不透明感が強い」と発言。「このため、政策をどこで休止し、データと情勢を判断すべきかに関する戦略が重要視される」と語った。

  連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による最新の金利予測分布図(ドット・プロット)によれば、政策金利は2023年中に4.6%に上昇すると見込まれている。現行水準は3-3.25%。

  エバンス総裁は「名目フェデラルファンド(FF)金利は来年の早い段階に4.5%をわずかに上回る水準まで上昇し、当面その水準にとどまるとみている。その間に金融政策の調整がどの程度、経済に影響しているかを判断する」と話した。

  7日に発表された9月の雇用統計では、雇用者数が増加する中で失業率は3.5%に低下した。エバンス総裁は金融当局が失業率を押し上げ、「リセッション(景気回復)を回避しながら、インフレを比較的迅速に抑制する」ことは可能だとの認識を示した。

  同総裁は失業とインフレの関係を示すフィリップス曲線に言及。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に陥る前は何年にもわたり、その関係性が弱かったが、サプライチェーンの問題で強まっている可能性があると指摘した。

  「失業率が2019年に現在と同じ低水準にあった時、サプライチェーンの障害は問題ではなかった。そのため、当時はタイトな労働市場からのインフレへの影響はそれほどでもなかった」と発言。「この通常よりもスティープ化したフィリップス曲線が現在の高インフレの大部分を生み出しているのであれば、曲線のスティープ化が失業をわずかに押し上げるだけで、インフレ率を比較的早急に押し下げるのに役立つとも予想すべきだ」と語った。

引用:Bloombergより

エバンス総裁はこのように述べ、金利を可能な限り早急に上げて、その後柔軟に金融政策を実行できるようにすべきだという考えを述べました。金利の上昇スピードを上げろということは今のペースでは目標とする金利水準まで上げる前に景気が大きく後退してしまうということを懸念しているのでしょう。景気が後退したのであれば金融政策としては引き締めをしづらくなります。かといって緩めてしまえばインフレを抑えることはできません。そのようなジレンマを将来抱えないように早期に利上げを完了させるべきだということでしょう。

柔軟な金融政策を実行できるようになるのか

二人の発言を見て感じたことは意外と引き締め一辺倒ということもないのかなという印象です。これまでは早期の利上げの必要性が目立っていたような気がしますが、もう少し柔軟な対応をしなければならないというような発言はなかったような気がします。もちろん何度も言いますが、パウエル議長をはじめ、すべての発言について何か決めつけるようなことをした人はいません。なので間違っていたとかいきなり修正したということはないと思います。ただ、ここまではっきりと景気後退について配慮した発言というのはあまりなかったように思います。そういう意味ではFRBも最近の株価下落や景気の先行きについて懸念を持っているということでしょう。そういう意味では今後は利上げ一辺倒ということはないのかもしれません。ただ、そうなるとインフレを抑制することができなくなる可能性が出てきます。いつまでもこの高いインフレが残り続けるというのはFRBも看過できないでしょう。であればエバンス総裁の言う通り、早急に利上げを行い柔軟な金融政策を実行できるような環境を作るというのも一つの手段なのかもしれません。だとすると今後も75bp以上の利上げというのが続いていくのかもしれません。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてみました。個人的には意外とFRBは利上げ一辺倒ということではないのかなという印象を持ちました。もう少し経済を悪化させてもインフレを抑制しようと思っているものと感じていたので。しかし、当然ですが景気のこともきちんと頭に入れていたということでしょう。今もソフトランディングを目指しているというのはうそではなかったということです。そういう意味ではやや安心できるような気がするけど、本当に大丈夫かなという感じはします。そんなにうまくいくのかなということです。ただ、私が心配してもしょうがないことなので、そうなることを願うしかありません。今回の発言を見る限り次回の利上げも大きなものとなる可能性が高いということです。そして何とか景気が大きく落ち込む前に利上げを終了させ、柔軟な金融政策が実行できるようにするということでしょう。その時間的猶予が本当にあるのかが今後注目されるところです。