強い雇用統計を受けて引き締め政策は継続される

先週は強い雇用統計の結果を受けて、今後もFRBはタカ派の姿勢を貫くだろうと予想しましたが、そのような発言がFRB要人から出てきました。やはり予想通り、今後も金融引き締めの動きは緩むことはなく、一時期漂っていた楽観論は後退していくものとみられます。というわけで今日は最近のFRB要人の発言についてみていきます。

9月は75bpでの利上げになるか

FRBのボウマン理事は今後の金融政策について75bpでの利上げを支持し、引き続きインフレ抑制のため強い姿勢で臨むべきだという発言をしました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は、インフレ率が明白に低下するまでは先月決めた0.75ポイント利上げと同様の大幅な利上げを検討し続けるべきだとの考えを示した。

  ボウマン理事は5日、カンザス銀行協会が主催するイベントに向けて準備された講演で「インフレ率が一貫して明白に低下するのが見られるまで、同様の規模の利上げを検討する必要がある」と述べた。先月の0.75ポイント利上げを支持したと付け加えた。

  米連邦準備制度は6月と7月に0.75ポイント利上げを実施。5日発表の雇用統計によると、7月の雇用者数は52万8000人増と市場予想の2倍を超える伸びだった。

  ボウマン理事は次回の利上げの規模は最終的に経済指標によって決まるとも指摘。「現在進めているような利上げが適切だと予想しているが、データや状況がどのように展開するかについての不確実性を踏まえ、そうした情報を指針としてどの程度の利上げが必要かを判断する」と説明した。

  9月米連邦公開市場委員会(FOMC)会合までにもう1 回の雇用統計と2 回の消費者物価指数(CPI)が発表される。

  ボウマン理事は下期に経済成長が加速し2023年は「緩やかな成長」が見られると予想。利上げとFRBのバランスシート圧縮の中でも労働市場は引き続き堅調に推移するとの見通しを示す一方、雇用の伸び鈍化や雇用減につながる可能性もあると指摘した。

引用:Bloombergより

ボウマン理事はこのように述べ、今後もインフレ率に明確な減速の兆候が見られるまでは強い引き締めを行うべきだと発言しました。これはパウエル議長をはじめとするFRB要人の発言とも一致し、インフレ抑制を第一に考えるということだと思われます。もちろん今の段階で9月の利上げの程度が決定しているというわけではなく、きちんと柔軟性も見せています。今後の経済指標によってはおそらく引き締めペースを緩める可能性もゼロではないのでしょう。しかし、現状ではとてもそのような状態ではなく、これまで通りの政策を実行していくべきだということです。

楽観論は後退

強い雇用統計を受けてFRBは引き締めの姿勢を緩めるのではないかという観測はかなり後退したと思っています。そしてそれをさらに裏付けるような発言がFRB要人から出てきたことで、その確率はさらに高まったとみています。やはり今のインフレというのは異常です。物価が9%も上昇していくというのはとても容認できるものではないでしょう。実際、米国の消費者もそろそろ消費をし続けるのが困難になってきたようなニュースも出てきています。不動産市場が低調になってきたり、貯蓄が急激に減少してきており、おそらくは今後は景気も減速していくのでしょう。そういう意味でも一刻も早くインフレを抑制するべきだというFRBの考えは正しいと思います。ただ、問題はそれが行き過ぎてしまうのではないかという懸念が出てきているということです。インフレ抑制にあまり力を入れすぎたために経済を急減速させすぎてしまうということです。個人的にはその確率はかなり高いのかなとは思います。このようなインフレを経済の失速もなくコントロールできた例というのは過去になかったように思います。そういう意味でも現在FRBが対峙している事態というのは非常に困難なものであり、とても楽観できるものではないのです。そういう意味では今後についてはあまり期待はしない方がいいのではないかと思います。

まとめ

今日は強い雇用統計を受けてのFRB要人の発言についてみてきました。現状では強い引き締めを継続するというのは正しい選択でしょう。ただ、正しい選択をしたとしても経済を何の損害を与えずに軟着陸できるかどうかは別問題です。個人的にはもう何をやってもある程度の景気後退は仕方ないのかなと思っていますし、そのように考えている専門家も多いのではないかと思います。もちろんこれはあくまで私個人の意見ですし、こうなるという保証をするものではありません。しかし、楽観はするべきではないと思います。うまくいったらラッキーくらいに構えておく方がいいでしょう。