急激な金利上昇はむしろインフレに悪影響があるのか

深刻なインフレに対処すべくFRBは強力な利上げを行っていますが、あまりに急激な利上げというのはむしろインフレを助長する可能性があるとのはなりがありました。一見相反するようなことですが、これを述べているのがノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授です。なのでわけのわからないこじつけということではないのでしょう。もしそうであれば現在の金融政策はむしろ経済を悪化させているという結論になるような気がしますが果たしてどうなのでしょうか。そういうわけで今日はノーベル経済学賞の受賞経験のあるスティグリッツ教授の話についてみていきたいと思います。

急激な金利上昇はインフレはむしろ悪化させるリスクがある

スティグリッツ教授はドイツのリンダウでインタビューに応じ、現在行われている金利を急激に引き上げる政策というのはむしろインフレを悪化させるリスクがあることを指摘しました。

供給主導のインフレを抑制するため借り入れコストを積極的に引き上げ過ぎる中央銀行は、物価上昇を悪化させるリスクがあると、ノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が指摘した。

  スティグリッツ氏はドイツのリンダウでインタビューに応じ、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)解除後に経済活動が再開される中、中国などの諸国では平常回復がなかなか進んでおらず、世界経済は「かつて経験したことがない」状況に見舞われていると述べた。

  「利上げは供給サイドの問題解決にはならない」と同氏は指摘。「問題を悪化させることすらあり得る。今やった方がいいのは供給サイドのボトルネックへの投資を増やすことだが、利上げはそうした投資を行うのを一段と難しくする」と話した。

  米国などでは企業が顧客を失うことなく価格転嫁できる「市場支配力」の明確な兆候が見られる中、利上げはさらなるインフレにつながり得ることを標準的な経済モデルは示唆していると、スティグリッツ氏は説明。

  米住宅市場を引き合いに出し、家主が金利コスト上昇分を家賃を通じて借り手に転嫁し、価格上昇をあおっている証左があると指摘した。

  同氏は「利上げがどのようにして、食品やエネルギーの増大につながるのだろうか。また半導体供給の問題を解決するのだろうか。それは一切ない」とし、「問題の根源には行き当たらない。状況を悪化させるというのが現実のリスクだ」と続けた。

引用:Bloombergより

スティグリッツ教授はこのように述べ、あまりに急激な金利上昇というのは物価を上昇させるリスクがあるとの指摘をしました。利上げをすれば景気は減速し、インフレは抑制されるものだと思っていましたが、そうではない可能性もあるようです。スティグリッツ教授は今回のインフレについて需要側ではなく、供給側に問題があるといっています。そのため供給側を改善するための投資を促進させるべきであり、金利上昇というのは投資のための借り入れコストを上昇させるため、供給側の改善が見込めなくなるというのでしょう。確かに金利が上昇すれば企業の投資意欲というのも減少するのは間違いないでしょう。そういう意味では金利の上昇というのはあまりいいとは思えません。供給側の問題を解決するという意味では利上げという手段は正しくないのでしょう。

インフレの要因はいろいろ

しかし、当然ながらインフレは供給側の問題だけではなく、需要側の問題も存在します。特に今回は新型コロナウィルスパンデミックからの経済正常化の動きが重なり、非常に旺盛な需要が喚起されています。そのために急激な物価上昇となった側面は確実にあるはずです。であればある程度の利上げというのは仕方のないところでしょう。要はそのバランスが重要だろうということです。需要を抑制させるというのであれば金利を50bpや75bpなどといわずもっと上昇させれば確実に減少させることができるでしょう。しかし当然ながらそれでは社会全体に与える影響というのはマイナスの側面の方が大きくなってしまいます。そういう意味ではそのバランスをどこにとるのかというのが問題で、スティグリッツ教授はあまりに強力に金利を上昇させようとしている今の状況というのはリスクがあるとみているのでしょう。

結局のところよくわからない

正直私のような素人ではそのベストな金融政策がどのようなものなのかというのはわかりません。なのでただ流れに身を任せるというしかないというのが正直なところです。特に経済の話となると専門家と呼ばれる人たちが全く違った見解を述べるので本当によくわかりません。数学や物理の世界では天才が問題を解いても子供が問題を解いても答えは一緒になります。天才だから1+1が2ではなく3や4になるなんてことはありません。しかし経済の話となると天才が二人いれば二通りの答えが存在し、10人いれば10通りの答えが返ってきます。本当によくわからないといった感想をいつも持ちます。そういう意味ではとりあえずは何が起きてもいいように準備しておくというくらいしかないのだろうと思います。