ジャクソンホール会議で早期の緩和を明確に否定する

市場が注目していたジャクソンホールで開かれたシンポジウムでパウエル議長は明確なメッセージを発信しました。それはインフレを抑制するためには断固たる決意を持って対処するというものだったのだろうと思います。過去の例を挙げ、早急な緩和というのは悪影響にしかならず、今は厳しい姿勢で臨むべきだという見解を示しました。一部に出ていた早期の緩和論はこれでかなり後退したのだろうという感じです。そういうわけで今日は先日行われたジャクソンホール会議におけるパウエル議長の発言についてみていきます。

パウエル議長は早期の緩和を明確に否定

26日、米国ワイオミング州のジャクソンホールで行われた経済シンポジウムでFRBのパウエル議長が講演をし、現在のインフレに対して強い姿勢で臨んでいく決意を表明しました。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は26日、成長鈍化などの「痛み」を伴ったとしても、インフレが抑制されるまで「当面」金融引き締めが必要という見解を示した。

パウエル議長は米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、「インフレを低下させるために、トレンドを下回る成長が一定期間持続する必要がある公算が大きい。労働市況も軟化する可能性が非常に高い。金利上昇や成長鈍化、労働市場の軟化はインフレを低下させるが、家計や企業に痛みをもたらすだろう」と述べた。

残念ながらインフレ抑制にはこうしたコストが伴うとしつつも、「物価安定の回復失敗はより大きな痛みを意味する」と強調。さらに、痛みが増大しても、FRBが早期に緩和にシフトすることを想定すべきではないとし、市場で台頭しつつある来年の利下げ予想をけん制した。

ターミナルレート(利上げの最終地点)への言及は避け、金利は必要に応じ上昇するという認識を示すにとどめた。その上で「目標を達成するまで続けなければならない」とし、歴史は時期尚早な政策緩和に警鐘を鳴らしていると指摘した。

9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅については、「入手されるデータ全体と見通しの動向次第」と述べ、明確な手掛かりは示さなかった。

最近の米インフレ指標が鈍化していることについては、「単月の改善はインフレが低下していると確信するにはほど遠い」とし、他の指標は労働市場における「堅調な基調的な勢い」を示しているほか、求人数が失業者数をはるかに上回っており、雇用市場の「バランスは明らかに崩れている」という認識を示した。

引用:ロイターより

今回の発言で一番注目されるのは早期の緩和について明確に否定したところでしょう。市場では最近の弱い経済指標を受けて、FRBが利上げ完了後に早期に利下げを行い、景気を下支えするのではないかという観測が一部で出ていました。しかし、今回の会議でパウエル議長は早期の緩和について明確にするべきではないと発言しています。これは最近のFRB関係者の発言とも一致しており、FRB内ではすでに合意が得られていることなのでしょう。つまり、今後利上げが完了した後もしばらくは高い金利の状態を維持し、確実にインフレが抑制するまで厳しい引き締めを行っていくという決意を示しています。よって今後はFRBはタカ派のまま金融政策を続けていくということがほぼ確定したといっていいのだろうと思います。

市場の楽観論を消し飛ばした

そのため株式市場はパウエル議長の発言のあと大きく値を下げる展開となりました。NYダウは1000ドル以上の下げを記録し、株式市場の淡い期待は見事に打ち砕かれた形となります。最近の株価上昇というのはやや楽観的過ぎる動きだという識者の意見も多くありました。個人的にも同じ感想を持っており、正直パウエル議長の発言を聞かなくともFRB関係者の発言等から予想できたのではないかと思っています。そういう意味ではなぜここまで楽観できていたのだろうと思ってはいましたが、特別何か確証があったわけでもなかったようです。そういう意味ではしばらくは株式市場は軟調な展開が続くでしょう。早期の利下げが期待できなくなり、金融当局の後押しもない中、株式市場は自分の力だけで支えていかなければなりません。選挙も近いため、そちらからの支援はあるかもしれませんが、やはりFRBの後押しがないとなると何が来ようとも中途半端なものとなりそうです。

まとめ

今日はジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言についてみてきました。個人的には想定内といった感じですし、多くのタカ派の識者にとっては当たり前の感想だったのではないかと思います。しかし、一部の楽観的に見ていた人たちにとっては大きなサプライズとなったことでしょう。株式市場の大幅下落からもそれは見て取れます。そして今後はより軟調な展開が予想されます。日本のように30年も停滞するということはないでしょうが、それなりに回復には時間がかかることは間違いないと思います。投資家としてはつらい展開が続くかもしれませんが、見方を変えればこれはチャンスともいえます。優良銘柄を安く買う絶好の機会が訪れるかもしれません。なのであまり悲観的にはならず、きちんと目を光らせておいた方がいいと思います。