金融緩和の可能性はあるのか?

今年の世界経済は総じてあまりよいものではないという予想になっています。程度の差はありますが、ことし株式が飛躍的に伸びるという予想は皆無といっていいでしょう。そのため多くの投資家はあまり今年のパフォーマンスに対してあまり期待していないのではないかと思います。しかし、マーケットでは少し良いニュースが出るとすぐに緩和期待などで株価が上昇しており、甘い夢を見ている投資家がそれなりにいることは確かです。しかし、その夢はあまりよい結果をもたらさないのではないかと思いますし、そのような意見は今日も聞かれました。

金融緩和の可能性はかなり低い

かつてスイス国立銀行の総裁も務めた米ブラックロックのフィリップ・ヒルデブラント氏は現在の株式市場に広がる楽観論に対して警鐘を鳴らしました。

金融政策緩和を期待するトレーダーの見方に反し、中央銀行はインフレの低下傾向を確実にすべく今年も利上げを継続する。世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのフィリップ・ヒルデブラント副会長がこのような見方を示した。

  かつてスイス国立銀行(中央銀行)の総裁を務めたヒルデブラント氏は、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が開催されているダボスで行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「率直に言って、年内緩和の可能性は全くないと私は思う。これについての市場の見方は誤っているだろう」と述べた。

  ヒルデブラント氏はインフレ率が数十年ぶりの高水準から急低下すると予想するが、世界の中銀はインフレ率を2%へと抑え込み、物価上昇予想を決して再燃させないよう取り組むだろうとも語った。「見られるとしたらせいぜい、ある種の一時休止だろうが、今はそれもまだだ」と述べた。

  同氏は「かつての大いなる安定期には、インフレを抑制しても、それ以外は順調だった。今はインフレを制御することは、実体経済にダメージを与えなくてはならずリセッション(景気後退)を引き起こすことを意味する。これは回避できない」と説明。「物価安定を取り戻すことは本質的にリセッションを伴う」と指摘した。

引用:Bloombergより

ヒルデブラント氏はこのように述べ、金融緩和の可能性について完全に否定しました。現在のインフレは非常に高く、少々その勢いが落ちたからといって金融当局がその姿勢を改めることはあり得ないといっています。このような指摘は多くの識者から発信されており、サマーズ元財務長官やレイ・ダリオ氏ヲはじめとする大物投資家などがそういっています。そういう意味ではこの見方というのは軽視できるものではないのでしょう。もちろん過去がそうだったからといって未来も確実にそうなるという保証はどこにもありません。しかし、過去を無視して希望的観測を述べるということほど愚かなことはないでしょう。過去を否定するのであればその根拠をきちんと述べるべきでしょうし、そうでないのであればやはりこの意見を無視するわけにはいかないように思います。

楽観論は禁物

私には経済に対するその知識が全く持って足りないのでこれらの意見が正しいのかどうかはわかりません。しかし、少なくとも多くの識者がこのような発言をしていることは確かであり、日々その数は増えているように思います。最新のWEFの調査でも今年リセッションに陥ると考えているエコノミストの数は前回調査よりも2倍に増えていることがわかりました。そういう意味でもその可能性というのは確実に高まっているといっていいでしょう。やはり楽観論は禁物です。

まとめ

今日は今後の金融緩和の可能性について考えてきました。現在のFRBは非常にタカ派的であり、インフレ抑制に非常に積極的であることは確実だと思います。そういう意味でもヒルデブラント氏の意見とも一致していますし、やはり緩和というのはなかなか起こらないのではないかと思います。そういう意味ではあまり楽観的な意見に流されるというのは危険であるといっていいでしょう。今後も経済指標によっては株価は上昇することはあると思いますが、大きな流れとしてはやはり下向きなのかなという印象です。