米国の景気後退が鮮明になり、金融政策が若干緩やかになる可能性も出てきたか?

米国経済の減速が日に日に確実となってきています。先日発表された7月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、50ポイントを割り、2年ぶりに活動縮小を示すものとなりました。インフレ抑制という面ではよい傾向かとは思いますが、やはり経済停滞の心配は残ります。経済をあまり冷やすことなくインフレを抑制することができるのか、今後も非常に注目されるでしょう。そういうわけで今日は先日発表された7月の総合購買担当者指数(PMI)速報値についてみていきます。

景気の減速が鮮明になってきた

22日にS&Pグローバルが発表した7月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、非常に低水準なものでした。

S&Pグローバルが22日発表した米国の製造業・サービス業合わせた7月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、約2年ぶりに活動縮小を示した。需要が振るわずにリセッション(景気後退)懸念が増している状況が浮き彫りになった。総合PMI指数は前月から4.8ポイント下げて47.5。2020年5月以来の低い水準となった。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた数カ月を除けば、09年のデータ開始後で最も低い水準だ。同指数は50が活動拡大と縮小の境目。前月に縮小を示していた新規受注の指数は、7月は小幅な拡大を示唆した。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は発表文で「7月のPMI速報値は懸念すべき経済の悪化を示した」と指摘。「製造業は失速し、サービス業もコロナ禍からの回復路線が反転している。繰り越し需要という追い風は、生活費と金利の上昇、景気の先行きに対して募る不安に押し戻された格好だ」と説明した。サービス業PMIは47と、2020年5月以来の低水準。コロナ禍の時期を除けば、09年までさかのぼるデータ上で最悪の数値となる。ただ雇用は着実なペースで伸びていることが示された。製造業PMIは52.3と、2年ぶりの低水準。新規受注は2カ月連続で縮小し、雇用の伸びは減速したことが示された。輸出受注も縮小。ドル高が影響したほか、世界的な景況感悪化が国外需要を圧迫した。

引用:Bloombergより

このように企業活動は急速に冷え込んできているといっていいでしょう。現状はそこまで景気は悪くはないとは思いますが、金利の急上昇など先行きに関しては多くの企業が懸念を持っているということがよくわかります。先日も多くの企業で採用活動を停止させたり、人員削減を行ったりと景気後退に向けてあらゆる準備を企業側が行っているというニュースが報じられました。そういう意味でも個人も企業も今後の米国経済について非常に悲観的になってきているといっていいのではないかと思います。

今後の金融政策はやや緩やかになる可能性が高くなったのか

景気の悪化というのは個人や企業にとっては非常に悩ましい問題かもしれませんが、FRBにとっては朗報といっていいのかもしれません。最近の相次ぐ悪い経済指標の発表を受けて、今後の利上げについては若干ハト派的な意見がが多くなってきたような気がします。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局は26、27両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で2会合連続の0.75ポイント利上げを決めた後、金利引き上げのペースを落とす公算が大きい。ブルームバーグがエコノミスト44人を対象に15-20日に実施した最新調査で、このような予想が示された。それによれば、FOMCは9月20、21両日の会合では利上げ幅を0.5ポイントとし、11月1、2両日および12月13、14両日の年内残りの2会合はいずれも0.25ポイントずつ利上げすると見込まれている。その場合、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ(現行1.5-1.75%)の上限は年末までに3.5%と、2008年初め以来の高水準に引き上げられることになる。

引用:Bloombergより

以前は100bpでの利上げとか9月以降も急速な引き締めが行われるのではないかという意見が多くありましたが、このように最近はややその勢いが落ち着いてきているように思います。実際、これだけ経済状況の悪化を示すニュースが続いているようだとFRBとしても急激な利上げというのはなかなかやりづらいというところでしょう。そういう意味では7月は75bpでの利上げが行われ、9月以降はやや緩やかな利上げとなる可能性が大きくなってきたのかもしれません。もちろん9月まではまだまだ時間があります。なのでこの予想は十分変わる可能性があることは頭に入れておくべきでしょう。

まとめ

今日は先日発表された7月のPMIから今後の米国経済について考えてみました。景気が落ち着いて来たように見えることを考えると、利上げのペースはこれまで言われていたよりも緩やかになる可能性は十分にあると思われます。そうなれば株式市場にとっては追い風となるでしょう。ただ、引き締めが十分に行われないとすればインフレが高止まりする可能性もあるため、長期的にはあまりよくないかもしれません。ただ、少なくとも短期的には利上げのペースは緩やかになり、株式市場の急落という可能性は低くなったのかなと思います。もちろん何があってもいいように準備しておくということは必要です。