バイデン政権は精油精製能力の増強ができるのか

先日、米国の石油精製能力についての記事を書きました。その中で石油大手のシェブロンのトップが今後は米国内での石油精製能力は増えていかないだろうという見解についてのべました。石油の精製能力が増えないのであればいくら石油を掘っても実際に使える石油製品の供給力は増えないので今後も供給制約は続いていくものと考えられます。しかし、バイデン政権は石油精製能力強化に動き出すかもしれません。そのようなニュースが飛び込んできたので今日はそれについてみていきたいと思います。

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石油精製能力の増強を検討しだした

バイデン政権は現在の石油精製能力についてきちんと問題を認識し、改善する意向があるようです。10日のニュースで以下のようなものがありました。

米大統領経済諮問委員会(CEA)のセシリア・ラウズ委員長は10日、バイデン大統領がエネルギー価格の抑制に向け、石油精製能力拡大など供給増加策を検討していることを明らかにした。CNNのインタビューに答えた。同委員長は、バイデン大統領が石油会社などど協力して課題に取り組み、行政面での支援策を模索していると述べた。11月の中間選挙を控え、バイデン大統領には特にガソリン価格の上昇圧力を緩和するよう強い圧力がかかっている。

引用:ロイターより

このように政権内では石油精製能力増強についての議論が交わされているようです。先日も述べましたが、現在、米国では石油精製能力が強化されるという動きは起きていません。これだけエネルギー価格が上昇しており、今後も高止まりが予想されるのですから、通常であれば供給能力を増やそうという動きが出てくるはずですが、昨今の環境規制の動きなどにより、民間企業ではリスクが大きすぎるとみられているのでしょう。そのため、いくら石油を掘ったとしても精製できるようには限界があり、市場に供給される石油製品の量がなかなか増えていかないという現実があります。

民間では現状石油精製能力の増強は困難

そのためバイデン政権は石油精製能力の強化に動き出したということです。実際にどうなるかということはまだわかりませんが、政府が動き出したとなれば現在のエネルギー価格にもそれなりの影響はあるのかもしれません。何度も言いますが、現状では民間企業が投資をするというのはなかなか期待できない状態です。石油精製施設への投資というのは10年以上の継続的な投資が必要なようであり、将来的に化石燃料を使用しないようにしようという今の動きの中では民間企業が投資するのはまず無理です。であれば国が積極的に動くしかなく、そういう意味では今回のバイデン政権の動きというのはエネルギー価格を抑制するという意味では非常に意味のあるものなのではないかと思います。

実際にどうなるのかはまだ未知数

しかし、まだ楽観はするべきではないと思います。そもそも民主党は環境政策に対して非常に積極的です。そういう意味では石油精製能力を向上させようというのはある意味矛盾した政策であるともいえます。それだけ現状が厳しい状況だともいえますが、何かきっかけがあればすぐに政策転換をする可能性は十分にあるでしょう。特に今は選挙前ということもあり、支持を得やすい政策を安易に売ってくる可能性は十分にあります。エネルギー価格高騰に不満を言う有権者のために耳触りの良いことを言って、選挙が終わればひっくり返すということもあるでしょう。そもそも民主党内でもこの話がうまくまとまるのかどうかもまだわかりません。そういう意味では個人的にはインフレ抑制のためにもよいニュースだとは思いますが、楽観はできないと思います。

まとめ

今日はバイデン政権が石油精製能力を向上させるかもしれないというニュースについてみてきました。個人的にはまだ楽観視はしていません。環境政策を重視する民主党が化石燃料の増強をするような政策をしてくるかどうかは非常に疑問があるところです。それだけ厳しい状況だともいえますが、すんなりと行くとは思えません。そして選挙が終わればどうなるかも未知数です。そういう意味ではなかなか判断しづらいというところでしょうか。基本的にはエネルギー関連株は買いだとは思いますが、以前話したような石油精製に特化した企業の方が良いパフォーマンスが得られるかどうかはまだわからないのかもしれません。