相次ぐ米小売り大手の悪い決算は何を意味しているのか

米国市場では17日から株価が急激に下落し、大きな混乱が起こりました。小売り大手の企業の決算が予想よりも悪く、市場の失望を招いたためと思われます。これまで好調な個人消費を背景に、インフレ下においても米国経済は堅調だという空気がありましたが、それが一変した形です。そういうこともあり、米国株式市場には悲観的な論調が一気にあふれてきた感じがあります。もしかしたら今がピークとなって大きな景気後退局面に入るのかもしれません。そういうわけで今日は今秋に起こった株式市場の暴落についてみていきたいと思います。

米小売り大手の相次ぐ弱気決算

今週の17日から米国株式市場は大きな下落を始めました。要因としてはいろいろあるとは思いますが、原因として言われているのが米小売り大手の予想外に悪い決算です。17日にはディスカウント大手のターゲット、18日には日本にも進出していたウォルマートの決算発表がありましたが、いずれも市場予想を大きく下回るものでした。

米小売り大手は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期の強気相場を通じて好調だったが、ついにつまずいた。18日の米株式市場でディスカウントチェーン大手ターゲットの株価は25%安と、1987年のブラックマンデー以来の下落率を記録した。その前日にはウォルマートが類似の状況に陥った。インフレ加速が米消費者にとって痛手となり、企業の利益率が損なわれている兆しだ。S&P500種株価指数の業種別指数で小売りは7%余り下落。S&P500種全体も4%下げ、弱気相場入りに近づいた。

引用:Bloombergより

このように予想外の決算により株価は大きく下げることとなりました。これまでは高いインフレ下においても個人消費等需要が堅調であり、それに伴い企業業績も好調を維持してきたためにそれほど大きく株価が下がることはありませんでした。しかし、現在のインフレの影響がついに個人消費にも及び、企業業績を圧迫し始めたということでしょう。これが今回発表した一部の企業のみであればまだいいのかもしれませんが、おそらくはその他業種にもそれなりの影響は出ているでしょうし、仮に今は大丈夫だとしても今後について大きな不安を投資家に与えるには十分だったと思います。そういう意味でも投資家は市場から資金を急遽引き上げることとなり、株価は暴落したのだと思います。

今回のことが大きな転換点となるのか

今回の事態はついに好調だった米国経済がピークを打ったのではないかという観測も出ています。実際そうなるのかはわかりませんが、今のインフレ状況や金融政策を考えればその可能性は非常に高く、仮にそうでなくともそう遠くない時期にピークを打つであろうことは容易に想像できるところです。その後どのようになるのか。暴落を起こしかつての大恐慌のようなことになるのか、もしくは徐々に下落しながら再び上昇を始めるのかはわかりません。いづれにせよ、今回のことが大きな転換点となる可能性については十分にあるのです。

何も悪いことばかりではない

しかし、今回の事態は金融当局にとっては悪いことばかりではないようです。個人消費の向かう先が物品などから娯楽などの体験等に向かえば、物品等に係るインフレ圧力が少なからず緩和されるとの見方があるためです。

エコノミストの間では何カ月も前から、新型コロナ感染への懸念が後退して米国民が休暇や娯楽などの体験に支出するようになれば、物品需要は減少すると予想されていた。物品への支出が減ればサプライチェーンへの圧力は改善され、数十年ぶりの高インフレ率の押し下げに役立つと見込まれていた。

引用:Bloombergより

このように以前からインフレ抑制には消費の傾向の変化を期待する動きがあったようです。そして今回、それを裏付けるような小売りの消費鈍化のニュースが発表されたのです。そういう意味ではインフレ抑制という観点で見れば必ずしも悪いことばかりではないかもしれません。さらに今年の夏に向けては各航空会社は旅行需要の積み上がりにより好調な業績予想を出しています。そういう意味では米国の個人消費の傾向は明らかに変化してきており、その変化というのがインフレ抑制に役立つ可能性もあるのです。

まとめ

今回は先日起きた米小売り業者の弱い決算に起因した株価下落についてみてきました。この下落というのはインフレの影響がついに企業業績に影響してきたとみることができ、今後について非常に不安要素となることは間違いないでしょう。そういう意味ではそろそろ米国株式市場の弱気相場入りが近いのかもしれません。しかし、個人消費についてはその動向の変化の兆候が表れており、それがもし経済やインフレ抑制にとってプラスとなるのであればそこまで大きく下落することなく景気後退局面を乗り切れるのかもしれません。しかし、その可能性があるのだとしてもそううまくはいかないでしょう。FRBも可能な限り景気後退を起こさないように努力はするでしょうが、なかなか難しいということには変わりないと思います。いずれにせよ、未来のことなど誰にもわかりません。個人投資家としては株式に淡々と投資を続けるというのがベターでしょう。歴史的に見ればどんなに大きな景気後退局面が大きく、ひどいものだとしてもそれらはすべて乗り越えて今があるのです。そう考えれば今後も厳しい局面はあるとは思いますが、そのあとには明るい未来が待っているはずです。それを期待して投資するのみです。