日本の消費者物価が2%を超えた伸び。しかし、コアコアの値はいまだ1%にすら届かず。

日本でもいよいよ本格的な物価上昇が起こってきたのでしょうか。先日発表された消費者物価の伸びはコアCPIがついに2%を超え、総合CPIも2.5%上昇と日銀の政策目標を超えてきました。そのため、日本も金融政策の変更が必要だとの声も聞こえてきます。本当のところはどうなんでしょうか。そういうわけで今日は先日発表された4月の消費者物価指数についてみていきたいと思います。

4月の消費者物価について

総務省は20日、4月の全国消費者物価指数を発表しました。

引用:総務省ホームページより

総務省が20日に発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は101.4と、前年同月比2.1%上昇した。携帯電話通信料の大幅値下げに伴う下押し圧力が剥落し伸び率は前月の0.8%から急拡大、2015年3月以来の大きさとなった。生鮮食品を除く食料も押し上げにつながった。日銀が政策目標とする総合指数も2.5%上昇と、目標の2%を超えた。

携帯電話の通信料は22.5%下落。大幅値下げの影響の大部分が剥落し、下げ幅は前月の52.7%の半分以下になった。携帯電話通信料が総合指数の上昇幅を1.04ポイント拡大させた。

生鮮食品を除く食料は2.6%上昇と、前月の2.0%上昇を上回り15年3月以来の伸びとなった。原料高や円安で外食のハンバーガーが6.7%上昇したほか、コーヒー飲料や中華麺も値上がりした。176品目中、127品目が上昇、上昇品目は3月の112品目を上回った。総務省の担当者は「幅広く値上がりが起きている」としている。

半面で、原油高騰で歴史的な伸び率を記録してきたエネルギー価格は伸びが一服した。エネルギー価格は19.1%上昇と前月の20.8%上昇から伸びが縮小。政府の補助金の効果で、ガソリンは15.7%上昇で前月の19.4%上昇から伸びが鈍化した。

電気代も21.0%上昇と、前月の21.6%上昇を下回った。総務省の担当者は、電力料金の上限に達した電力会社が10社中5社あるため「今までと同じように上がるかと言えば一概には言えない」と指摘した。

4月の総合指数は前年同月比2.5%上昇と、前月の1.2%上昇から伸び率が大幅に拡大して14年10月以来の伸びとなった。北海道の天候不順でたまねぎが98.2%上昇するなど生鮮食品が押し上げた。

引用:ロイターより

携帯電話の影響がなくなった

このように消費者物価の伸びは非常に大きくなりました。要因としては記事にもある通り、携帯電話の通信量の影響が大きく出ています。去年、菅政権時に行われた携帯電話料金の値下げにより消費者物価は大きく下げられてきました。そのため消費者物価の統計にも影響が出てきましたが、今月分からその影響もなくなることになり、物価が大きく上昇したようです。そして、消費者物価の上昇に大きく影響を与えているのはやはり食品とエネルギー価格です。先月よりは伸びは鈍化してはいますが、以前エネルギー価格は高止まりしている状況です。食品についても世界的な物価上昇の影響や天候不順の影響により大幅に価格は上昇しています。そのため総合やコアの数値は大きく上昇しているのです。

エネルギーや食品を除くといまだに物価上昇率は1%に満たない

反面、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアコアの数値を見てみると、物価上昇率はいまだに0.8%と1%にすら届かない状況です。そのため日本はいまだインフレであるとは言えない状態です。米国ではこのコアコアに当たる数値がすでに6%を超えており、異常に高いインフレに悩まされています。それは2%程度の通常の状態に戻そうとしているのです。それと比較すると日本はまだまだインフレ率が足りないという状況であり、大きな政策変更をするような場合ではないでしょう。

ポイントを絞った対策が必要

そうはいってもエネルギーと食品の価格上昇というのは家計にとっても企業にとっても非常に大きな問題です。全体としてまだインフレとは言えないといっても、日々の実感として大きな価格上昇を感じているはずです。要は日本は全体としてはまだインフレではないので経済全体を抑制するような政策は必要なく、エネルギーや食品など部分的な価格抑制政策をすればよいのです。むしろ、インフレではないのに金利を上げたり金融緩和をやめてしまえば余計経済は縮小してしまうでしょう。なので、エネルギーと食品に対してのみ価格上昇対策をすべきです。

食料自給率を上げるべき

食品に関しては食料自給率を上げるべく、農業などへの株式会社参入を認めるなどの改革を行うべきです。自分たちで食料を自給できるようになれば世界的な食糧価格の高騰が起きても大きな問題にはならないでしょう。それは世界から経済制裁を受けながらも生活が維持できているロシアを見ればよくわかることです。ロシアは食料とエネルギーを完全に自給できるために、どんなに制裁を受けようとも飢え死にすることはありません。このように食料自給率を上げるということはいろいろな意味で国益になるのです。

直ちに原発の再稼働を

そしてエネルギーに関してもそうです。やることはたくさんあるとは思いますが、すぐにできることといえば原発の再稼働でしょう。今は多くの原発が稼働を停止しています。そのためエネルギーの多くを化石燃料に頼らざるを得ず、価格高騰の影響をもろに受ける状況になっています。そのため停止している原発を可能な限り稼働することができれば、かなりのエネルギー価格の低下を期待できるのではないでしょうか。日本は原発をほとんど稼働していない状態で今の状態になっているのですから、少しでも稼働できるようにできればエネルギー価格の抑制には大きく貢献してくれるものと思われます。そういう意味でも原発の再稼働はすぐにでも検討すべきです。

まとめ

今日は先日発表された消費者物価についてみてきました。いよいよ物価上昇は2%を超え、日本もインフレの状況になろうとしているように見えます。しかし、エネルギーと食品を除けばいまだ1%にすら届かない状況であり、大きな政策変更をするような事態ではないと思います。やるべきは経済全体に対するものではなく、価格上昇の激しいエネルギーと食品に対する部分的な対策です。特に原発の再稼働についてはやろうと思えば今すぐにでもできますし、実行されればすぐにでもエネルギー価格は下落するでしょう。そうなれば国民にとっても企業にとっても経済的な苦境を緩和する効果があると思います。そういう意味でも個人的には大きな金融政策の変更は必要なく、エネルギーや食品などの部分的な対策を早急にするべきだと思います。