家計の海外流出によりさらに円安が進行する可能性がある

急激な円安が進んでいますが、その勢いは若干収まったように思います。1ドル130円目前まで行った為替相場ですが、その後はやや円高になり、小休止といった感じです。ただ、円安の流れが変わったということではなく、この傾向はこの後もしばらくは続いていくのだろうと思います。日米の金利差や金融政策などを考えると、とても止まるとは思えません。そうなると円だけで資産を運用するということがますます高リスクとなり、より資金が海外へ流出しやすくなるのであろうと思います。そのことを書いた記事が非常に面白かったので、今日はそれをもとに家計資金の海外流出について考えてみたいと思います。

Reuters Japan

円安の流れが止まらない。ドル/円相場は20年ぶりの円安水準だが、実質実効レートでみると1971年以来、50年ぶりの円安水…

円の購買力は極端に低下している

円相場は現在、約20年ぶりの円安水準だそうですが、実効レートでみると1971年以来の実に50年ぶりの円安水準なのだそうです。この20年間で日本の物価というのはほとんど上がっていません。対して米国では50%程度の上昇をしており、このような大きな差を生んでしまったのです。そのために日本は実質的な購買力は想像以上に低下しており、かなり貧しい国となってしまったのです。

円安=善という単純なものではない

以前であれば円安は日本の国益になると思われていたので、株式市場も上昇しました。しかし、最近では為替が円安になっても株価は上昇しなくなっています。昔は円安になれば輸出企業の利益が伸びるためにいいことだとなっていましたが、今はもうそうではないようです。企業も随分と海外進出が進んでおり、単純に国内で製造したものを海外に輸出するというビジネスモデルではないのです。日本国内を見てもこの30年は非常に需要が弱い状態が続いていたので、日本でビジネスを展開するよりも海外に出ていった方がいいと判断した企業も多いでしょう。これ以外にもいろいろ理由はあると思いますが、一つ言えることは以前のような円安で単純に利益が出るというような経済構造はもう存在しないということです。

円での運用のみではリスクが高いと気づき始めた?

日本は物価も上昇しないし通貨も安くなる。つまり何をやっても資産が目減りしていく国になってしまったのです。インフレの状態であれば実質的な購買力は低下するかもしれませんが、名目上ではプラスになることも多いです。実際インフレが進んでいる米国は今のところ株価の暴落のような現象は起きていません。さらに通貨も強くなっているというのであれば日本で運用するよりも米国で資産運用した方がはるかに利益が出るということは明白です。なので今後はいつまでも物価が上昇せずに、通貨も下がりだした日本から家計部門からも資金流出が始まるかもしれないというのです。

家計の流出によりさらに円安が進行する可能性

これまでは企業部門が海外へ進出するという形で資金流出が起こっていました。しかし、これからは家計からも海外への資金流出が起こる可能性が高いのかもしれません。実際、日本国内でも食品やエネルギーなどの価格が上昇し始めており、家計を苦しめています。そのため何とかやりくりをしようと考え始めている人も多いのではないでしょうか。その人たちが高い金利の外貨や資産上昇が見込める海外の投資商品に興味を持ち始めたらさらに円安が進むかもしれないのです。今は昔と違い、外国への投資のハードルは非常に低くなっています。コストも非常に低コストであり、一度火が付いたらその勢いを止めることはできないでしょう。そして現在も個人の資産では1000兆円もの資産が円で運用されているようで、その数%でも数十兆円という規模になります。それだけの資金が海外へ流れたとしたらますます円安になることは疑う余地がありません。昔だったらお金を持っている高齢者はインターネットも使えないし、投資のことなんてわかってないからそうはならないだろうという空気もありましたが、今はそんなことはないと思います。高齢者だってスマートフォンを使いこなす時代です。そういうことを考えれば家計の資金が流出することは十分に考えられますし、一度そうなったらその流れを止めることはかなり難しくなるでしょう。

まとめ

今日は個人資金の海外流出について考えてみました。ここ数年は個人の資産というのはどんどん伸びており、2000兆円に上っています。もちろんこれらの中には不動産など換金しづらいものもあり、簡単に動かせないものも多くあるとは思いますが、1%であっても20兆円です。これだけのお金が動けば簡単に為替など捜査できてしまうかもしれません。そういう意味では今後はさらに円安の流れが強くなるような気がします。というよりも円が強くなる可能性がなかなか見いだせないという感じです。なのでしばらくは円が安くなり、日本経済もどんどん弱体化していくのではないかと心配しています。ですが、自分の身を守るためにも資産運用をしていきたいと思いますが、そのために海外の株式を購入するために円をせっせと売っているというのもなんだか複雑な気持ちになります。何とか自信を持って円を変えるような世界になってほしいものです。