日本もサハリン2から撤退せざるを得ない状況になるのではないか

ロシアによるウクライナ侵攻による経済制裁は日に日に増してきています。特に天然資源についての動きというのは重要であり、日本も他人事ではありません。日本とロシアの関係を述べるときにいつも出てくるものの一つがサハリン2と呼ばれるロシア極東での石油・天然ガスプロジェクトです。日本にとっても非常に重要なプロジェクトであり、今のところ日本政府は撤退する予定はないようですが、権益を持っている欧米企業はすでに撤退を決めているところも存在します。その中で英石油大手のシェルが権益を中国企業に売却するのではないかというニュースが出てきました。非常に重要なニュースであり、日本にとっても無視できるものではないでしょう。そういうわけで今日はサハリン2をめぐる動きについてみていきたいと思います。

日本も権益を持っているサハリン2

サハリン2はロシア極東にある石油・天然ガスのプロジェクトで、日本の三菱商事などが一部権益を持っていることもあり、エネルギー政策を考えるうえでも非常に重要なものです。しかし、ロシアに対する経済制裁の動きが出てきたために、サハリン2の扱いというものが非常に注目されるようになりました。日本をはじめ、欧米の自由主義勢力としてはロシアに対して厳しい制裁を科したいところなので、これらロシアの利益になるものについては極力制裁を加えたいところです。しかし、当然それらは自分たちのエネルギー事情にも跳ね返ってくることであり、なかなか難しい判断を迫られるところでもあります。

今のところ撤退の動きはない

しかし、キーウでの民間人虐殺のニュースが出てからはより厳しい制裁を科す動きが鮮明となり、より厳しい態度で臨まざるを得ない状況となりました。その結果欧米企業はサハリン2からの撤退を決定しています。日本は今のところ撤退という発表はしていません。サハリン2については日本は非常に有利な条件で契約していることもあり、撤退した方がロシアにとって有利になってしまうという判断もあるようです。そして日本にとってもサハリン2からの天然ガス等は無視できるものではなく、撤退するという判断はできていません。

シェルの権益が中国にわたる可能性

そんな中、英石油大手のシェルが持っているサハリン2の権益を中国に譲渡する可能性があるとのニュースが出てきました。これは日本にとっては懸念していたことが現実に起来してしまった形です。これがあるためにサハリン2の権益を手放せなかったといってもいいと思います。結局日本や欧米が撤退したところで中国がそれを根こそぎ持って行ってしまうだけなのです。中国にとっても天然資源の安定的な調達先を確保できるということは願ってもないことでしょう。特にこのような状況で交渉するのであればより自分たちにとって有利な条件で交渉できる可能性も十分に考えられます。ロシアにとっても日本に売ろうが中国に売ろうが買ってくれるのであればどちらでもいいでしょう。お金に色はついていませんから誰に売ったって同じです。しかも自分たちにとって不利な条件で契約させられている日本や欧米よりも有利な条件で契約できる可能性が大きいでしょうから、むしろそれを願っている可能性だってあるかもしれません。それくらい日本との契約は日本にとってかなり有利な契約なようです。そういう意味ではこの動きだけを見るとロシアと中国がとてもいい条件で契約を結びなおすことのできるものとなってしまう可能性があるのです。

このまま権益を保持するのは難しいのではないか

日本としては本当に難しい判断を迫られているのだろうと思います。確かに権益を確保しておいた方が日本にとってもメリットが大きいし、その方がロシアや中国にとってはメリットが少ないと思われます。しかし、ここまでロシアに対する制裁の動きが強くなってきたのであればいずれは日本も撤退の判断をせざるを得ないかもしれません。実際にはその方がロシアにとっては利益が出るのだとしても表面的には日本がロシアの制裁の抜け穴というように見られても困るでしょうし、そうなる可能性も十分あると思います。日本とロシアや中国のサハリン2をめぐる関係性を十分理解してもらえれば何とか維持できる方法もあるのかもしれませんが、それを言ったらドイツや欧州の国々だってロシアの天然資源を使いたいのにというかもしれませんし、それを理由に日本を批判してくることもあるでしょう。そういう意味ではサハリン2やそれ以外のロシア関連のプロジェクトというのは今後はかなり厳しい状況になると思われます。

まとめ

今日はサハリン2をめぐる動きについて考えてみました。今の状況を考えると日本も撤退をせざるを得ない可能性も十分に考えられます。少なくとも今の自由主義陣営の足並みを乱すような動きはなるべく避けたいと日本政府も思っているはずです。そういう意味では厳しい決断が近いうちになされるかもしれません。そういう意味では日本のエネルギー政策も早急に対応を考えていかないと大変なことになるでしょう。今でさえ停電が起こりそうだといって節電を要請しているような状態です。その上にロシアからの天然資源が入ってこないとなるとエネルギー需給のバランスが崩れることは確実で、国民生活や企業活動に大きな影響を与える可能性がかなり高くなると思います。もしそんなことになれば日本経済にとっては大打撃であり、株価にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。そういう意味でもサハリン2をはじめとするエネルギー政策については今後も要注目です。