今話題の2023年には収入の半分を国に持っていかれるというのは本当なのか

最近ちょっと話題になった記事があります。「サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ」というもので、我々一般庶民が一生懸命稼いだお金が半分も国に持っていかれるというものです。とてもインパクトがあり多くの人の注目を集めました。インフレなどのコスト増が消費者に転嫁されるようになり、我々の生活は厳しさを増しています。その上さらに税や保険料の負担が増えるのかと皆さん怒り心頭です。しかし、この数字を見たときに流石に違和感を覚えました。負担率50%は流石にないだろうと。いくら日本が貧しくなり、政治家や官僚が国民のことを考えていないとしてもこれでは流石に暴動が起こってもおかしくありません。実際現在の負担率は上昇はしていますがそこまで高くはなかったと記憶していました。なのでいろいろ調べてみると、この記事のカラクリがわかり、これは問題があるなと感じました。なので今日はこの記事の問題点について見ていきたいと思います。

記事について

問題の記事は12月10日号の週刊ポストに掲載されたようでインターネットでもマネーポストwebというところに掲載されていました。記事によると健康保険料や雇用保険料などの社会保険料がこれから上昇し、2023年にはサラリーマンが負担する税と保険料が収入の50%を超えるというものです。毎年医療にかかるお金というのは増え続けています。高齢者がどんどん増えていますから当然といえば当然です。なので健康保険料が上昇するというのは間違いないでしょう。雇用保険についても新型コロナウィルスの影響によって雇用に関する助成金など様々な支出がありました。それによって雇用保険の財源が枯渇しそうとなっているとの報道もあります。たしかにコロナウイルスによって事業を継続できなくなってしまった人に対して多くの補助がされたのは周知の事実です。よって財源が足りなくなったというのも間違いではないでしょう。このように様々な理由によって社会保険料の値上げというのは避けられなくなっており、国民にとって厳しい時代が訪れると警告しています。

マネーポストWEB

 2018年に実施された税制改正で「給与所得900万円」を超えると配偶者控除(38万円)が縮小され、1000万円を超える…

記事の問題点

さて、この記事の内容についてですがこれは本当なのでしょうか。実はこの内容には非常に大きな問題があり、かなり事実を歪めている内容となっています。ネットを調べてみるとそのことを指摘する記事も多数あります。具体的に言うと以下の二点になります。

  • 社会保険料は労使で支払っているものなのに、会社負担分については全く無視している。
  • 収入と所得を混同している。

社会保険料は労使で支払っているものなのに、会社負担分については全く無視している。

社会保険料というものは労働者だけが払うものではありません。健康保険料や厚生年金などは労使折半であり、会社と労働者が半分ずつ負担しています。雇用保険についてはさらに労働者の負担が少なく、約3分の一程度です。このように支払っている保険料というのは労働者だけで負担しているわけではないので、その割合を考慮せずに計算しているこの記事は全く間違いであると言えます。しかも、記事内のグラフの隅っこに「会社負担を含めている」と小さく書いてあります。つまり作成者もこのことをわかって書いているのです。知識のない人が単純に数字だけを見て書いたと言うならわかりますが、知識のある人がそれをきちんと提示せずに読者を誘導しようとする意図が透けて見えます。そういう意味でもこれは非常に悪質な記事だと思います。

収入と所得を混同している。

税金というのは収入に対してかかるのではありません。所得税であれば収入から各種控除を差し引くなどして、課税所得が決定されます。その課税所得に税金はかかるのです。結婚して配偶者が専業主婦をしている人であれば配偶者控除、子供がいるのであれば扶養控除など皆さん様々な控除を受けていることでしょう。控除を全く受けていないという人はまずいないはずです。記事では額面30万円のサラリーマンの話をしているので、おそらくは月収が30万円の場合を想定しているものと思われます。つまり賞与を考慮しなければ年収360万円の人を想定しているのです。細かい計算は省きますが、この程度の収入の人であれば各種控除などを計算して、おそらくは税負担率は約15%程度でしょう。その負担率があと2年で50%になるとかまずありえない話です。非常な独裁国家でもやらないであろうというほどの変化を起こすと言っているのです。数%の違いであればまあいいかなとは思いますが、ここまでの大きな違いであれば流石に無視はできません。いくら読者の注目を集めたいからと言っても流石にこの記事はやりすぎだと思いました。

負担率が上がっている事自体は間違いない

しかし、記事の内容自体は非常に問題がありますが、年々国民の負担が増えている事は間違いありませんし、これからもおそらくはこの傾向は続くことでしょう。なのでそういう注意喚起をするということ自体はいいことだと思います。このように政治に我々が無関心でいると、どんどん搾取されていくのです。国家財政が厳しいということはわかりますが、目先のことだけを見ずにもっと大局的な視点で物事を見ていかなければいけないでしょう。そして投資家としても搾取される側になるのではなく、きちんと世の理を理解してうまく立ち回れるように勉強をしていくべきです。

まとめ

今日は非常にセンセーショナルな記事の問題点から個人としての心構えについて考えてみました。個人の税や保険料の負担というのは年々増えています。これからもこの傾向は続くでしょう。この状況を変えるためにはきちんと経済成長をして、個人も企業も国にも豊かになる必要があると思います。それ以外には方法はありません。そのための努力はみんなでやっていくべきでしょう。それと、マスコミのこの手の記事というのは本当になんとかしてほしいものです。昔なら良かったのかもしれませんが、今はすぐにネットで検証されてしまいます。なのでこのようなあからさまな扇動記事はもう通用しないのではないでしょうか。しかし、一部にはまだいわゆる金融リテラシーが低い人もいるのでそういう人たちには効果はあるのかもしれません。そのような人間にならないように日々精進していくつもりです。