サンタクロース黒田総裁による大きなクリスマスサプライズ。

日銀による政策変更のサプライズによりマーケットは大きく動きました。先日、日銀の黒田総裁は長期金利の変動幅の許容範囲を拡大する政策変更を行い、これが金融緩和政策の変更と受け止められ市場は大きく揺れました。為替は一時1ドル130円台まで急激に円高が進み、債券市場でも金利上昇、価格下落が起きました。株式市場でも大きく株価が下落し、とてもインパクトのあるものだったといっていいような気がします。そういうわけで今日は先日行われた金融政策決定会合についてみていきます。

日銀によるサプライズ

先日行われた日銀の金融政策決定会合ではこれまで行われてきた金融緩和政策の一部変更が決定されました。

日本銀行の黒田東彦総裁は、20日の金融政策決定会合で長期金利(10年国債金利)の許容変動幅の拡大を決めたことについて「利上げではない」との認識を示した。市場機能を改善することで金融緩和効果をより円滑に波及させる趣旨だと語った。会合後に記者会見した。

  黒田総裁は、変動幅拡大は「出口政策とか出口戦略の一歩とか、そういうものでは全くない」と説明。2023年度全体では消費者物価の上昇率が2%に達しない可能性が高いとし、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)や現在の量的質的金融緩和の見直しは「当面考えられない」と語った。「2%の達成は見通せないので、点検や検証の検討は時期尚早に尽きる」とも指摘した。

  日銀は今回会合で、YCCで0%程度に誘導している長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大した。長短金利の誘導水準や上場投資信託(ETF)など資産買い入れ方針は維持した。

  黒田総裁は変動幅拡大のタイミングに関しては、一時的に収まった金融資本市場でのボラティリティーが最近再び高まり、「イールドカーブの形状が歪んだ形となり、将来企業金融などにもマイナスの影響を与える恐れがあることが認識されてきた」ためと説明した。「さらなる拡大は必要ないし、今のところ考えていない」と述べた。

  予想外の決定を巡り市場との対話不足を問われたのに対し、市場関係者には「非常に裏切られたような気持ちがある」とした上で、「金融資本市場や経済・物価の動向が変われば、それに応じたことをやるのは当然」と説明した。「金利の引き上げでないということは十分市場関係者にもお伝えしたい」との考えを示した。

  2013年1月に政府・日銀が結んだデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた共同声明については、「現時点で見直す必要はない」と述べた。

  日銀は、2021年3月に行った金融政策の点検で、金利の変動が一定の範囲内であれば緩和効果を損なわないとして変動幅を上下0.25%程度に明確化した。黒田総裁は6月の金融政策決定会合後の記者会見で、許容変動幅の拡大は「考えていない」と否定していた。

  市場では来年4月の黒田東彦総裁の任期満了をにらみ、新たな正副総裁の下での金融政策運営に徐々に関心が移っている。特に政策修正の前段階で想定される政府との共同声明の取り扱いや点検・検証に対する関心が高く、黒田総裁の見解が注目されていた。

引用:Bloombergより

このように今回、日銀は長期金利の許容変動幅を0.5%まで引き上げ、これが事実上の金融緩和政策の変更と受け止められた形です。これまで日銀は何があっても緩和政策を変えなかったため、今回も大きな変更はないだろうとみられていました。その中で今回のような決定がされたということもあり、市場は大きく動揺しました。為替は大きく円高に振れ、債券価格は大きく下落しました。株価は金融関連株など一部を除いて大きく下げ、しばらく混乱が続くこととなりました。

サプライズだけどそこまでかなという印象もある

今回の決定は市場にとっては本当にサプライズだったと思います。ここまでの変更があるのは正直だれも予想していなかったことでしょう。しかし、実際には金融政策の変更というのはこれまでも行われてきており、全く微動だにしなかったというのは間違っていると思います。もちろん大幅な変更はありませんでしたが、それを言えば今回でもゼロ金利政策を修正したわけでもありませんし、状況に応じた小幅な修正ともいえるのかなと感じています。それに金利の上昇には幅を持たせましたが、国債の購入額を大幅に増やすなど緩和はこれからも継続するという意思は明確に示しています。そういう意味ではこれをもって緩和修正というのは行き過ぎのような気が私はしました。

やり方はもっとあったのだろうと感じる

それでも今回のやり方が正しかったのかというと、やはり問題はあったのだろうと思います。少なくとももう少しマイルドなやり方はいくらでもあったように思います。FRBのように事前に市場ににおわせておいてから行うようなことをもう少しやってもいいのかなと思います。どんな理由があろうともマーケットが急激に動くというのは誰も喜びません。そういう意味ではもう少しやり方を考える必要はあるように思います。

まとめ

今回は先日行われた金融政策決定会合についてみてきました。個人的には今回の決定で大幅な修正が行われたとは思っていません。しかし、変更があったとか、その可能性を感じ取ることができたという事実がマーケットを大きく動かしたのかなという印象です。実際、黒田総裁の任期はあと少しです。今回のことによって次期総裁がとる政策の柔軟性は増したのではないかと思います。全く微動だにしないと思われているものを変えるよりも多少なりとも変化のあったものを継続するという方がより簡単な仕事でしょう。そういう意味ではいろいろな思惑があったのかなとも思います。いずれにせよ、我々投資家は何があってもいいように準備しなければなりません。サプライズだなんだと言い訳をしている暇があったらあらゆる事態を想定してシミュレーションしておくべきです。