日銀の審議委員人事はやはりリフレ派ではなかった

政府は一日、日本銀行の審議委員の候補として岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏と三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏を衆参両院に提示しました。日銀審議委員の人事は政府が今後どのような金融政策を日銀に求めているのかを判断するのに非常に役立つ指標であり、注目されていました。結果としてはやはりというか予想通りの結果となり、安倍政権から続く金融緩和の流れは修正されそうな見込みです。そういうわけで今日は先日発表された日銀審議委員候補についてみていきたいと思います。

日銀審議委員とは

日本銀行に置かれる最高意思決定機関である政策委員会のメンバー。日本銀行には役員として、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)、監事(3名以内)、理事(6名以内)、参与(若干名)が置かれ、そのうち、総裁、副総裁および審議委員が政策委員会を構成している。経済または金融に関して高い識見を有する者、その他の学識経験のある者のうちから、衆参両議院の同意を得て、内閣が任命する。任期は5年間。政策委員会は年8回、金融政策決定会合を開催し、政策委員9人の多数決で日本の金融政策に関する事項を決定する。

引用:野村証券ホームページより

日銀審議委員とは上記の通り、日銀の最高意思決定機関を構成するメンバーです。会社で言えば取締役のようなものでしょうか。日銀の政策は総裁、副総裁、そして審議委員の合計9名によって決定されるため、金融政策の方向性を決める重要な役割を日銀審議委員は担っています。

今年7月に2名の審議委員の交代

今回の人事は今年7月に退任する片岡剛士審議委員と鈴木人司審議委員の後任人事です。鈴木氏は金融機関枠の人事であり、後任も三井住友銀行から田村氏が選ばれた形です。本来であれば今回はみずほ銀行から選ばれる予定だったようですが、ご存じの通り最近のみずほ銀行は不祥事続きです。そのため今回派閥として審議委員の候補として外されたようです。この人事については基本的には想定内の人事であり特段の問題はありません。もう一人の候補についてはいろいろと議論を呼んでいます。

候補者は明らかにリフレ派ではない

もう一人の候補である高田創氏は片岡剛士審議委員の後任として選ばれました。片岡氏は強力なリフレ派として知られており、審議委員の間でも積極的な金融緩和を主張してきました。その主張は安倍・黒田路線になってからの政策を後押しする形となっており、これまでの金融緩和の流れを作ってきた一人でもあります。その片岡氏の後任として選ばれた高田氏ですが、その方向性としては明らかにリフレ派とは異なります。人によっては緊縮派と言ったりバランスの取れた人だという意見もあります。しかし、少なくともリフレ派だという話はまず聞かないので、片岡氏のような強力な金融緩和を推し進める人ではないことは確かでしょう。

日銀の政策が大きく変わる可能性が高い

そのため今後の日銀の金融政策はこれまでのような金融緩和路線から変更される可能性が高くなったと思われます。ただでさえ最近は以前のような金融緩和政策が若干緊縮路線へシフトしているといわれてきました。その中で片岡氏はもっと積極的に緩和するべきと主張してきた数少ない人です。そういう意味でも今後はさらに金融緩和路線は縮小されるのではないかと思われます。さらに来年には黒田総裁の任期満了を迎えることとなり、総裁人事も行われます。今回の人事を見る限り、政府は総裁人事に関してもリフレ派ではない人を持ってくる可能性は高くなったのではないかと思います。

来年の総裁人事に注目

今回の人事を受け、すぐに日銀の政策が変わるということはないでしょう。リフレ派が一人変わったというだけでいきなり大きな政策変更があるとは思えません。実際審議委員の中には片岡氏ほどではないけど、金融緩和に積極的な人もいます。それに高田氏もリフレ派ではないですが、自分の意見を強硬に主張するような人でもないようです。なので今年中に日銀の大きな政策変更の心配はないのであろうと思っています。しかし、先ほども言ったように来年には日銀総裁と副総裁の人事が行われます。もしここで金融緩和に対して消極的な人が当てられるようだと、今回の高田氏を含めてかなり日銀内での金融緩和反対派の力が強くなるでしょう。なので来年以降の金融政策についてどうなるのかというのは非常に不透明になったと思われます。

まとめ

今回は先日行われた日銀審議委員人事について考えてみました。予想通りではありますが、岸田首相は安倍・菅路線を引き継ぐということはないようです。特に来年以降は総裁人事を契機に日銀の政策は大きく変更される可能性が高くなったのではないかと思われます。もちろんまだ決定したわけではありません。日銀審議委員は国会同意人事なのでこれからこの人事について国会での追及が行われると思います。なので特に野党には積極的にこの人事について追及してもらいたいところです。しかし、圧倒的多数を与党が占めているという現状を考えると、まずこの人事が変更されるということはないでしょう。そういうわけで今後は経済に対して日銀の後押しがなくなる可能性が高くなります。そのことを頭に入れて日本に投資する必要がありそうです。