バイデン政権の増税政策をチャーリー・マンガー氏が批判

自民党総裁選や衆議院選挙では金融所得課税についての取り扱いが話題になりました。非常にわかりやすく、叩きやすいところから税金を取ろうとする安易な考えだと思いますが、これは日本に限ったことではないようです。10月28日にアメリカではバイデン政権が、税制・支出計画について1兆7500億ドル(約200兆円)規模の新たな枠組みを発表しました。これはバイデン政権の看板政策の一つである気候変動・社会保障関連歳出法案についてです。この中には法人税の15%最低税率課税や自社株買いへの課税、1000万ドルを超える年間所得に対する新たな課税など新たな増税案があり、批判も多くあるようです。今回はこの件について少し見ていきたいと思います。

今回の法案について

バイデン米大統領は28日、税制・支出計画について1兆7500億ドル(約200兆円)規模の新たな枠組みを発表した。バイデン大統領は28日に連邦議会議事堂を訪れ、増税や気候変動対策、社会保障への支出を含むパッケージについて下院民主党議員らに説明。子育てと医療、気候変動対策における連邦支援を拡大する内容で、法人税の15%最低税率課税や自社株買いへの課税、1000万ドルを超える年間所得に対する新たな課税などで財源を確保する。ホワイトハウスの資料によれば、新たな歳入は10年間で総額2兆ドルと見込まれている。

引用:bloombergより 

今回の法案では今問題になっている気候変動や社会保障対策などのための計画を発表しているが、その財源の一部として自社株買いに対する課税など多くの増税策が提案されているようです。具体的には以下のようになっています。

  • 株主に報告した利益が10億ドルを超える企業を対象とする15%のミニマム税と、自社株買いに対する1%の付加税
  • 1000万ドルを超える所得に5%の税率上乗せ、2500万ドルを超える所得にはさらに3%の上乗せ

チャーリー・マンガー氏が批判し、中国政府を称賛

バークシャーハサウェイの副会長であるチャーリー・マンガー氏がこの政策について批判しています。

「正気の沙汰じゃない。文字通り、狂ってる。」

引用:The Financial Pointer® 【短信】中国は景気過熱への対処が上手い:チャーリー・マンガーより

確かに自社株買いに課税というのはすごいなとは思いました。本来は企業に投資を促進するのが政府の仕事だと思いますが、それを阻害するようなことをするのはおかしいというのです。財源が必要ということはわかりますが、ここまであからさまな政策というのはどうなんだろうとは思います。そして、マンガー氏は過熱する経済に対する政策について中国政府を称賛しています。

「私は確かに私たちの体制の方がいい。でも、中国が抱える問題を考えると、米国の体制より中国の体制の方がうまく機能するのだろう。」

引用:The Financial Pointer® 【短信】中国は景気過熱への対処が上手い:チャーリー・マンガーより

確かに今のアメリカのやり方を見れば中国がよく見える部分もあるのでしょう。しかし、マンガー氏自身も言っていますが、共産党体制自体を称賛しているのではありません。それ自体は批判しています。あくまで政策の中身についてのみの評価です。中国は一党独裁政権ですから、何かあれば強権的に人民に規制を強制することができます。ですからやりたいと思ったことを実行するのはたやすいのでしょう。対して民主主義国家では、何をやるにしても民意を常に意識しなければならないので、どうしても時間はかかるし、出てきたものは妥協の産物になりがちです。これは仕方のないことだとは思いますが、最近の新型コロナウィルスでも対策を見ても、中国のやり方を是とする動きが多いような気がします。確かに、いまはいいところばかりが目立つのでそう見えるのかもしれませんが、一度悪い方へ転がっていけば独裁政権というのはとてもいいとは言えなくなるでしょう。

うまく行くかは不透明

今回の法案については民主党内の反対派との妥協により、当初の規模から半減しています。バイデン大統領も妥協の産物と認めており、内容よりも実行性を重視したもとと思われます。しかし、このままうまく行くとは限りません。特に最近は政権の支持率低迷もあり、政権基盤は弱体化してきています。その上、最近行われた州知事選でも民主党の候補が敗れるなど、状況は不透明です。もう一つの目玉法案であるインフラ投資法案は5日の夜に何とか可決することができました。当初は同時に可決するつもりだったようですが、民主党内の反対派に配慮する形で見送っています。市場ではテーパリングが決定し、次はいつ利上げが実行されるのかということに関心が移っています。今後、金利が上昇すれば株価が下落することも予想されます。そうなれば景気は落ち込み、ますます増税はしづらくなるでしょう。

まとめ

今回は最近のアメリカでの増税の動きを中心に見ていきました。日本もそうですが、何かあるたびにすぐ増税という流れは本当にやめてほしいものです。今回の動きの中で一番面白いと思うのは、民主党が過半数を握り、法案を可決しようと思えばできるだけの勢力を持ちながらできなかったところです。要は民主党内が分裂してしまっているわけです。バイデン大統領などはいわゆる中道という勢力であり、バーニーサンダース議員をはじめとするいわゆる左派勢力と意見が分かれているのです。今までは民主党対共和党という図式でしたが、今は民主党内での意見の対立が問題となっています。そしてそれは民主党だけではなく、共和党でも起こっていて、トランプ前大統領に近いグループとそうでないグループに分かれています。そういう意味では今までのような民主党と共和党という二つの勢力だけを考えていてはいけないのかもしれません。日本人としては正直どうでもいいことですが、とりあえずはアメリカ経済を衰退させるようなことだけは避けてもらいたいです。アメリカは一応経済成長していますし、多少の増税は問題ないのかもしれませんが、このような成長を抑制するようなことはなるべく避けるべきです。特に今はインフレリスクや金利の動向など不透明な要素がたくさんあります。このような状況で増税というのは、いくら富裕層だけだからと言っても経済に与えるダメージは小さくはないでしょう。今後どうなるかわかりませんが、投資家としては経済を悪化させるようなことだけはしないでほしいと切に願うばかりです。