株式市場にとってはロシア軍によるウクライナ侵攻はすでに過去のこと

ロシアのウクライナ侵攻は想像以上のスピードで進行しています。当初はウクライナ東部のみの制圧と思われていましたが、首都キエフにもロシア軍は進行しており、ロシアはウクライナを完全に掌握するつもりでの短期決戦を挑んできているものと思われます。チェルノブイリ原発を制圧するなど着々と侵攻を進めているロシア軍ですが、ウクライナも懸命な抵抗を続けており、予断を許さない状態です。しかし、株式市場を見てみると東証もニューヨーク市場も株価は急上昇しており、すでにウクライナ侵攻については過去のものとなりつつあります。非常に冷徹なように思われますがこれが現実というところです。そういうわけで今回はこの株価上昇について考えていきたいと思います。

ロシアによってウクライナが制圧されるのは時間の問題

昨日も述べたようにロシア軍によるウクライナ侵攻が開始されました。作戦開始前にはロシアはウクライナ東部の独立を宣言した地域のみを侵攻するという意見が多かったようですが、実際始まってみると首都キエフをはじめ、ウクライナ全土での作戦行動が開始されました。軍事力においてはウクライナ軍とロシア軍ではあまりにも戦力差が大きく、ウクライナがロシアによって制圧されるのは時間の問題と思われます。しかし、米国やNATOをはじめとした世界各国はウクライナを軍事支援する様子はありません。厳しい批判と経済制裁は行われそうですが、軍事的なアプローチを行うことは各国とも否定しています。なのでロシア軍の侵攻を止めるということはほぼ不可能でしょう。よってウクライナのゼレンスキー大統領はその地位を奪われることとなり、親ロシア派の暫定政権がロシアによって作られて終了するということになりそうです。

すでに株式市場にとっては過去の出来事

株式市場を見てみると、ロシアのウクライナ侵攻のニュースが発表された後は世界中で大暴落が起こりました。ロシアのウクライナ侵攻はおそらくないだろうという意見が大勢を占めていましたから、このニュースは大きなサプライズとなりました。しかも東部の親ロシア地域と呼ばれるところだけではなく、ウクライナ全土への侵攻という事実はマーケットに与えた影響というものは相当なものだったと思われます。しかし、株式市場の動揺はあっという間に解消することとなります。金曜日には東京市場は大幅上昇となり、同日のニューヨーク市場でもNYダウが大幅上昇で取引を終えています。これはすでに市場がロシアによるウクライナ侵攻を織り込んだという事実であり、もう懸念事項ではないと判断したということになります。

悪いことであっても確定すれば市場にとってはプラス

この株式市場の動きというのは非常に残酷ではありますが、株式市場ではよく見られる動きです。株式市場というのはとにかく不透明な要素というものを嫌います。あるニュースが将来存在するとして、それがプラスになるのかマイナスになるのかそれが分からないうちには株式市場は酷く荒れる展開となりやすいです。逆にどんな事実であってもその将来の出来事が確定してしまえば株式市場にとってプラスとなることが多いのです。プラスの材料というと、たとえばFRBが利上げを見送ったなどというのが今では起こりやすいかもしれません。そうなれば当然株式市場は上昇をするでしょうし、予想することもたやすいでしょう。しかし、マイナスの情報であってもそれが確定すれば株価は上昇することも十分あり得るのです。その一つの例が今回のロシア軍によるウクライナ侵攻です。このニュースが発表されたときに株価は大きく下落しましたが、それはまず侵攻自体が予想外だったことが考えられます。そして、その侵攻がどのような結末になるのかが全く分からなかったから株価は下落したのです。しかし、今はもうすでにある程度今後の予想はできるようになってきました。ロシア軍はウクライナ東部だけではなく、ウクライナ全土を掌握しようとしている。そして世界はそれに対して軍事侵攻はしない。よってこの侵攻は長期化せず、短期間で終わり、ウクライナに親ロシア政権が誕生して終わる。おそらくはこのような将来像がマーケットでは出来上がっており、その通りに侵攻しているのであればもうウクライナ侵攻は株式市場にとってマイナス要素ではないということなのです。したがって株価はそれを織り込んでしまえば元の状態に戻っていきます。つまり、行き過ぎた下落を修正するために株価は上昇するのです。

今後はFRBの政策が重要という以前の状態に戻っただけ

そういうわけで株式市場としては今後はウクライナ情勢というのはあまり重要なファクターとして認識されることはないでしょう。もちろん全く無関係ということはありませんし、今回のことは今後のFRBの政策には大きな影響を与えるかもしれません。そういう意味では直接的な影響はないけど間接的には影響が残るかもしれないというところではないかと思います。特に以前から株式市場の注目はFRBの金融政策に移っています。それに比べると今回のウクライナ侵攻の影響はそれほど大きくないだろうし、すでに過去のものとなってしまったということです。なので投資家として最も注目すべきはFRBの金融政策とインフレの動向という今まで通りの状況に戻ったということではないかともいます。

まとめ

今回はウクライナ情勢による株式市場の動きから今後の展開について考えてきました。非常に残酷なようですが、株式市場にとってはウクライナ情勢はもう過去のものになってしまったということは間違いないと思います。ただ、ロシアによる経済制裁がどの程度になるのか、それによるエネルギー問題が大きくなってきたり、インフレに影響を及ぼすようになるなど懸念事項はたくさんあります。そういう意味では全く無関係ではないですが、直接的にはそれらをFRBがどのように対処するのかということが重要なこととなるでしょう。個人的にはおそらくはロシアに対して厳しい措置は取れないのではないかと思います。特に欧州はエネルギー需要の多くをロシアに依存しているので、なかなか厳しいのではないでしょうか。そういう意味でもウクライナの人には大変つらい結果となりそうですが、ロシアに対する制裁もたいしたことはできず、なし崩し的に解除されていくのではないかと思います。そういう意味ではとんでもない世の中になったなと思うと同時に、日本も他人事ではないのだろうと思います。