為替が円高になる可能性について

最近、為替は円安方向に動いていて、久しぶりに1ドル112円台に乗せました。米国株を取引している身としては、為替の動向というのは非常に気になります。動くたびに資産が増えたり減ったりと、あまり激しい動きをされると心配になる方も多いのではないでしょうか。私としては、すぐに必要な資金ではないので最近の動き程度ならどうでもいいんですが、長い目で見てどうなるかについては気になるところです。そんな中、以前も紹介した「The Financial Pointer」で佐々木融氏のコラムが掲載されていて、ちょっと気になったので紹介してみます。

佐々木融氏について

ささき・とおる/2015年6月より現職。03年JPモルガン・チェース銀行に入行しチーフFXストラテジスト。09年債券為替調査部長。10年よりマネジング・ディレクター。JPモルガン・チェース銀入行前は日本銀行に勤務。1992年入行、調査統計局および札幌支店を経て、94~97年国際局(当時)為替課に配属となり、市場調査・分析に加え為替市場介入を担当。2000年ニューヨーク事務所に配属、NY連邦準備銀行など米国当局と情報交換を行いながら米国金融市場全般の情報収集・調査・分析を担当。『日経ヴェリタス』為替アナリストランキング1位(16年、18~21年)、『インスティチューショナル・インベスター』日本為替アナリストランキング1位(18年、20年)

引用:ダイヤモンド・オンラインより

佐々木氏はメディアにもよく登場される方で、知っている人も多いでしょう。現在はJPモルガン・チェース銀行にて仕事をされているようです。経歴を見る限り、為替を担当する部署を多く経験されているようなので、その発言は十分聞く価値はあるのではないかと思います。

佐々木氏はどのようなことを言っているのか

2021年9月29日のコラム「大幅マイナスの日米実質金利差、縮小時が円高転換のサインか=佐々木融氏」にて佐々木氏は新型コロナウィルスパンデミックの影響により、世界的に実質金利のマイナス幅が拡大しているといっていて、将来的に円高になる可能性について述べています。

実質金利とは

  • 「実質金利=名目金利-期待インフレ率」

上記の式で実質金利はあらわされるようです。つまり簡単に言うと、金利よりもインフレ率が大きいと、実質金利はマイナス、金利の方が大きければプラスになるということですね。今、米国をはじめ世界は新型コロナウィルスパンデミックの影響により、政策金利を非常に低く抑えています。そして、米国ではテーパリングの議論が話題になってるようにインフレ率が上昇傾向です。つまり、実質金利はどんどんマイナスになっているというわけです。

実質金利の低下は何を意味するのか

では、そうなると何が起きるのでしょうか。コラムで佐々木氏は

世界的な実質金利のマイナス幅拡大は、本来、ドル/円相場に影響していても良いはずだ。なぜなら、米国の実質金利は世界のトレンドの先頭をいくように大幅にマイナスだが、日本の実質金利は逆にプラスだからだ。

引用:コラム「大幅マイナスの日米実質金利差、縮小時が円高転換のサインか=佐々木融氏」より

世界は実質金利がどんどんマイナスになっている中、日本だけが実質金利がプラスなので、為替相場に影響が出るはずだといっているんですね。日本は御存じの通り、現在デフレの真っただ中です。インフレ率はほぼ0%付近で行ったり来たりしています。金利もゼロ金利政策中ですから、ほぼゼロといっていいでしょう。よって0+0で実質金利はゼロということになり(おそらく実際は若干のプラスなんだと思います)、マイナスの米国や世界各国に比べて金利が高いということになります。つまり、金利が高い通貨の方が買われやすくなりますから、円高になるはずだということを言っているのです。しかし、実際は円高どころか少し円安方向に動いています。その理由について佐々木氏は

それは恐らく、株価などの米国の資産価格が上昇を続けているからだろう。米国の実質金利は長期金利でみても大幅にマイナスなので、単純に米国債を保有しているだけでは、実質的に資金が目減りしていく。しかし、米国株に投資していれば、株価が上昇しているうちは、マイナスの実質金利とは無関係に資金が増えていく。だからドルは、一定程度下支えされていると考えられる。

引用:コラム「大幅マイナスの日米実質金利差、縮小時が円高転換のサインか=佐々木融氏」より

実質金利はマイナスだが、株や不動産など資産価格が上昇しているので、マイナス分を帳消しにしているといっているんですね。つまり、株価や不動産が上昇しているうちは実質金利幅が広がっていっても為替相場には影響しないということを言っています。たしかに、金利がマイナスであればドルや債権を持っているだけだと損をしてしまいますが、資産価格が上昇してしまえば問題はなさそうです。ただ、当然このような状態がずっと続くということはないでしょう。インフレ率については米国でも問題になっていますし、いつかはこの状態が崩れると思います。その時期について佐々木氏は

どのようなタイミングで、米国株やエネルギー・コモディティ価格、暗号資産、ドル/円相場の上昇が止まり、投資家が米国の大幅なマイナスの実質金利を意識せざるを得ない時が来るだろうか。それは名目金利が明確な上昇トレンドを示し、実質金利のマイナス幅が明確に縮小を始める時かもしれない。

引用:コラム「大幅マイナスの日米実質金利差、縮小時が円高転換のサインか=佐々木融氏」より

名目金利が上昇するときが実質金利のマイナス幅縮小が意識され始め、円高になるといっているんですね。名目金利が上昇すれば実質金利のマイナス幅が縮小し、今まで開いていた金利差が少なくなるので円高ドル安になるとみているようです。しかし、金利が上昇しているのであれば通貨は買われると思うので、円安ドル高になりそうです。しかし、反対のことが起こるといっています。たしかに実質金利幅が広がっているのに円高にならない現在を考えれば、そういうものあるのかとなんだかよくわからない感じになります。

まとめ

今回は佐々木融氏のコラムを読んで、その内容を私なりにまとめてみました。為替がどのように動くかは誰にもわかりませんが、どのようになってもいいように準備しておく必要はあると思います。が、私自身はのんびりと長期的な視点で投資していますので、どのように動いても構わないと思っています。短期投資をしている人にとってはとても重要な問題で、胃が痛くなる思いをしている人もいるかもしれません。そういう心配をしなくていいところも、長期投資の利点ですし、個人投資家の特権だと思います。定期的に結果を出さなければならない機関投資家などの人たちは本当に大変でしょう。

今回このコラムを取り上げたのは、金利が上昇するのに通貨の価値が下がるというところが面白かったからです。今まで金利が上がれば通貨の価値は上昇するものと思っていたところに、全く逆の説を専門家が述べていたので驚きました。こういうところが投資の面白いところでもあり、難しいところなんだと思います。

最後に言っておきますが、私は専門家ではありませんのでここで述べた内容は間違っている可能性が十分にあります。そのことを頭に入れて読んでいただければと思います。もちろん、佐々木氏の発言自体がおかしいというつもりもありませし、それを批判するだけの知識もありません。為替の話についてはたくさんの専門家の方が、いろんな意見の述べています。そういう話を聞いているだけでも面白いですし、少しでも疑問に思い、考える癖がつけば自身の成長につながると思います。この記事が皆さんが考えるきっかけになれば幸いです。

Reuters Japan

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